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maruho square 保険薬局マネジメント:保険薬局における小児アトピー性皮膚炎の疑われる患者の来局状況と取り組み~スキンケアトライアル手帳を活用して~


株式会社サノ・ファーマシー(本社:秋田県秋田市、秋田市を中心に東京都、神奈川県を含め39店舗運営)では、薬剤師個々が「地域のニーズをリサーチし、それに応えるために考えた方法論」を具現化できる職場環境の中で、やりがいを持ちながら地域に貢献できる薬局づくりを目指している。佐野薬局中通一丁目店は県外含め100以上の医療機関から処方箋を受け付ける面分業型薬局だが、その6割が皮膚科からの処方箋だという。今回は、同店が他店とともに取り組んだ、小児アトピー性皮膚炎の疑われる患者に関する調査と介入の経緯や成果、今後の展望などを伺った。

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株式会社サノ・ファーマシー 追分佐野薬局 薬局長 堀野 玄 先生
  • 株式会社サノ・ファーマシー 追分佐野薬局 薬局長 堀野 玄 先生

重症アトピー性皮膚炎を散見するにつれ、薬剤師による早期介入の必要性を痛感

佐野薬局中通一丁目店が応需する処方箋は月平均2,200枚程で、その6割が皮膚科から発行されており、薬剤師は皮膚科医師の診断・治療の下、アトピー性皮膚炎の疑われる患者およびその家族に対し服薬指導を行うことが少なからずある。その中で、幼少期にアトピー性皮膚炎を疑い小児科医に相談したものの、改善が乏しく、皮膚科へ紹介・転院されてきたケースなど、「もはや寛解は難しいのではないか」と思われるような重症のアトピー性皮膚炎の患者にしばしば遭遇し、ここからどのようにコントロールしていくかに重きをおく治療の服薬指導を行うことがあったそうだ。堀野先生は、「そのような患者さんは改善を諦めているようにも見受けられ、もう少し早い段階で薬剤師としてフォローしておくべきだったのではないかと思うことがあった」と話す。
実際、小児アトピー性皮膚炎の場合、小学校低学年(学童期前半)までには改善している印象を受けると堀野先生。「早期に正しい身体の洗い方を習慣づけ、治療初期に治療意義を理解していただくことができれば、小児アトピー性皮膚炎の重症化、成人期への持ち越しが防げるのではないか。その際、最初の窓口となる小児科と関わる薬局薬剤師の果たす役割は大きいはず」。―そう考えた堀野先生は、小児アトピー性皮膚炎の疑われる患者の来局状況を調査し、実態を把握するとともに、スキンケア指導介入によりどのような成果が得られるかの検証を社内委員会に提案し、処方箋主要応需元の皮膚科医とも連携を図り、実施に移した。

佐野薬局中通一丁目店(秋田市中通1-2-16)
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佐野薬局中通一丁目店(秋田市中通1-2-16)

皮膚科・小児科受診の小児アトピー性皮膚炎の実態とスキンケア指導による患者状態・行動変化を調査

実態調査に関しては、グループ薬局で応需処方箋の9割以上を小児科が占める保戸野千代田町店と協力して、2017年1~3月の期間中に来局した小児アトピー性皮膚炎の疑われる患者のうち、“早期介入”のターゲットとなる幼児と学童を男女別に抽出し、治療状況を解析した。
一方、薬剤師のスキンケア指導介入による検証は中通一丁目店のみで実施。通常、スキンケア指導は待ち時間を活用し、事前確認で患者がどのような状況にあるのかを本人や保護者から聞き取り、口頭説明と併せてタブレット型端末を使用して洗い方の動画を見てもらうなどした上で、投薬時の服薬指導でフォローする。今回は「スキンケアトライアル手帳」(写真)を紹介し、「スキンケアチェックシート」(図1)に記載してもらうなどの2週間のスキンケアトライアルへの参加を促した。

写真:スキンケアトライアル手帳
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スキントライアル手帳
図1:スキンケアチェックシート
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スキンケアチェックシート

「スキンケアトライアル手帳」は、①動画と連動した洗い方説明、②服薬指導のフォローにもなる保湿剤などの使い方、③スキンケアチェックシート、④読み物的な「アトピー性皮膚炎なんでもQ&A」、⑤アンケート用紙で構成されている。特筆すべき点は、スキンケアチェックシートが患児本人や保護者が症状の変化や取り組みの効果、達成感を実感するきっかけになるものとして位置づけられていることだ。「チェックを義務づけると、子どもは嫌がる。やりたい時だけで構わない。むしろ大切なのはスキンケアの実践」と堀野先生。
実態調査の結果、期間中の総患者数は皮膚科3,264名、小児科4,385名で、対象患者数は皮膚科が幼児期43名、学童期67名、小児科が幼児期139名、学童期28名であった。皮膚科では学童期の、小児科では幼児期の患者の割合がそれぞれ高かった(図2)。堀野先生は「スキンケア指導により、正しい洗い方や治療法を早めに理解し、早期改善とともにその後の経過も良好な症例を複数経験した」と話す。保護者からは「子どもが自分で洗うようになった」「お風呂を中心とした親とのスキンシップを楽しみ、洗いを含めたスキンケアや治療を能動的に行うようになった」などと喜ぶ声が寄せられた。悩んでいる保護者は潜在的に多く、薬剤師と信頼関係を構築するきっかけになったり、薬剤師の介入が患児や保護者、医師や看護師から喜ばれたりしたそうだ。

図2:小児アトピー性皮膚炎疑いの患者数(診療科別)
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症例検討

2017年1~3月(株)サノ・ファーマシー 中通一丁目店・保戸野千代田町店受付処方箋枚数より集計

地域ニーズを把握し、医師と連携しながら行動変容を促す患者教育の実践を目指す

堀野先生は「薬剤師の介入により重症化を避けられる症例もあり、そのためには、より早期の段階から、ガイドラインを中心とした薬物治療の把握と適切な指導とともに、スキンケアを含めて患者自身が変わるような動機づけをもった患者教育を行うことが大切だ」と述べる。そして、小児アトピー性皮膚炎のファーストコンタクトは小児科であることが今回の実態調査より判明したことから、小児科からの処方箋応需が多い薬局薬剤師が患児や保護者に介入していくことがより望ましいとした。
しかし、個々の患児・保護者に介入するのは難しい薬局もあるだろう。堀野先生は、「例えば閉局時間を利用して集団でスキンケア教室を開催したり、医師や看護師、アレルギーコーディネーターと連携したりすることなど、“寛解に至る患者さんを増やしたい”という思いがあれば、アプローチ方法は他にもある」と話す。
堀野先生は現在、追分佐野薬局の薬局長として、在宅患者や生活習慣病患者など、これまでとは異なる来局者に向き合っている。地域診療の要として訪問診療も手掛ける医師との連携を行っており、多職種からの相談や事例共有も多いという。行動変容を促す取り組みとしては、同薬局で実施できる検体測定を活用した治療前来局者の受診勧奨や、生活改善へつなげる患者教育を行っていきたいそうだ。「あくまでも、その地域で何が求められているか」―そこから取り組むことの大切さを堀野先生は強調した。

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