褥瘡の予防(ケア)
栄養管理
栄養管理の方法
- 栄養アセスメント
栄養アセスメント(栄養状態の評価)とは、栄養状態を主観的あるいは客観的に把握し、その程度を判定することです。
評価方法には(1)主観的な評価法(主観的包括的栄養評価:subjective global assessment:SGAなど)と、(2)客観的な評価法があります。客観的な評価法には栄養指標(nutritional index)といわれる各種身体計測値や血液生化学的検査値などが用いられます。また人間に必要なエネルギーや各種栄養素が欠乏した状態を低栄養(protein energy malnutrition:PEM)といい、褥瘡発生のリスクが高まる傾向にあります。
低栄養には、エネルギーと蛋白質が欠乏したマラスムス(marasmus)型、エネルギーは十分だが蛋白質が欠乏したクワシオルコル(kwashiorkor)型、双方の中間型であるマラスムス・クワシオルコル型に大別されています。
- 褥瘡予防に必要な栄養素と必要量
褥瘡発生を予防するためには、低栄養状態を改善するだけの必要栄養量の投与を行います。必要栄養量の算出は、一般的にはハリス・ベネディクトの式を用いるか、体重1kgあたり25~30kcal/日で求められます。また、創傷予防・治療の視点で検討した栄養素のはたらきと必要量の目安をまとめました。必要エネルギー量の計算式
〔ハリス・ベネディクトの式〕
基礎代謝エネルギー消費量(BEE)をまず算出する。
男性 BEE=66.47+[13.75×体重(kg)]+[5.0×身長(cm)]-[6.75×年齢]
女性 BEE=655.1+[9.56×体重(kg)]+[1.85×身長(cm)]-[4.68×年齢]
⇒必要エネルギー量の算出式
必要エネルギー量=BEE×活動係数×ストレス係数- 活動係数
1.0~1.1 (寝たきり) 1.2 (ベッド上安静) 1.3 (ベッド以外での活動) 1.5 (やや低い) 1.7 (適度) 1.9 (高い)
- ストレス係数
手術:1.1(軽度)、1.2(中等度)、1.8(高度)
外傷:1.35(骨折)、1.6(頭部損傷でステロイド使用)
感染症:1.2(軽度)、1.5(中程度)
熱傷:1.5(体表面積の40%)、1.95(体表面積の100%)
がん:1.1~1.3
体温:36℃から1℃上昇ごとに0.2増加
〔簡易式〕
- 現体重×30kcal
- 標準体重(身長×身長<m>×22)に25~30kcalを乗じて求める。
褥瘡治療・予防に関わる栄養素と必要量
栄養素 1日の必要量 役割 多く含む食品 エネルギー 予防:25~30kcal/kg
治療:30~40kcal/kg体蛋白の異化(分解)を防止 砂糖、穀類、芋類など 蛋白質 1.5~2.0g/kg 細胞増殖・コラーゲンなどの生成 肉類、魚類、卵、乳製品など ビタミンA 2000IU コラーゲンの合成・上皮の形成 レバー、うなぎ、緑黄色野菜など ビタミンC 褥瘡治療時150~500mg コラーゲンの合成 柑橘類、苺、ブロッコリー、緑茶など カルシウム(Ca) 600mg 細胞の増殖・代謝機能の維持 乳製品、小魚、木綿豆腐など 鉄(Fe) 15mg コラーゲンやヘモグロビンの合成 レバー、小松菜、海苔など 亜鉛(Zn) 15mg 細胞機能の維持 牡蠣、レバー、うなぎ、そら豆など 銅(Cu) 1.3~2.5mg コラーゲンの合成 レバー、すじこ、ココアなど 水分 25mL/kg/日 *発熱、尿量により異なる。生理機能を支える *過剰摂取は皮膚の耐久性を低下させる。石川治:病棟・在宅での褥瘡対策ハンドブック:61, 2005より一部改変 - 活動係数