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保湿剤とは


    代表的な保湿剤の種類と特徴

    代表的な医療用医薬品の保湿剤には、ヘパリン類似物質含有製剤、尿素製剤、ワセリンがあります。
    ヘパリン類似物質含有製剤は吸湿して角層に水分を付与する作用があり、持続的な保湿効果があることが特徴です。尿素製剤は、ヘパリン類似物質と同様に、吸湿して角層に水分を付与します。また、角質融解作用があること、皮膚バリア機能が低下した皮膚では刺激を感じることがあります。
    ワセリンは、角層に水分を付与する作用はなく、油分が被膜となって皮膚を覆うことで、皮膚の水分蒸散を防ぎます。被覆性が高いことが特徴ですが、べたつくことがあります。

    種類 特徴
    ヘパリン類似物質含有製剤
    • 吸湿して角層に水分を付与する
    • 持続的な保湿効果がある
    尿素製剤
    • 吸湿して角層に水分を付与する
    • 角質融解作用がある
    • 皮膚バリア機能が低下した皮膚では刺激を感じることがある
    ワセリン
    • 油分が被膜となって皮膚を覆い、水分の蒸散を防ぐ
    • 被覆性は高いが、べたつくことがある

    保湿剤の剤形と特徴

    保湿剤の剤形には、主に軟膏、クリーム、ローション、フォーム、スプレーがあり、その組成の大部分を基剤成分が占めています。
    軟膏は皮膚保護作用、皮膚柔軟作用があり、皮膚刺激性が低いため、皮膚の状態を問わずに使用できます。ただし、べたつくため、洗い流しにくいことが難点です。
    クリームはべたつきが少ないこと、水で洗い流せることが特徴です。基剤には、油性成分を水性成分で取り囲む水中油型(O/W型)と、水性成分を油性成分で取り囲む油中水型(W/O型)があります()。
    ローションは使用感がよく、展延性に優れています。基剤には乳剤性と溶液性があります。
    フォームは噴出時に泡となり、高い展延性を有し広範な患部に素早く塗布することができます。
    スプレーは広範囲に使用しやすく、手が届かない場所にも使用できますが、使用量を正確に把握できないことがあります。
    このような各剤形の特徴を踏まえ、患者の皮膚の状態に合わせて使い分けることが大切です。

    ※ヒルドイドにはO/W型クリーム剤・W/O型クリーム剤・O/W型乳剤性ローション剤・フォーム剤があります

    ヒルドイドフォーム0.3%に関する情報はこちら

    表1:基剤による使い分け

    基剤の種類 組成 被覆性 べたつき
    油脂性基剤 ワセリンを主とする鉱物性基剤
    記事/インライン画像
    被覆性の高低
    記事/インライン画像
    べたつきの多少
    乳剤性基剤
    (クリーム)
    油中水型(W/O型)
    水中油型(O/W型)
    ローション基剤 乳剤性ローション
    溶液性ローション
    フォーム剤 液剤(原液)

    表2:保湿剤の剤形と特徴

    剤形 特徴
    軟膏
    • 皮膚保護作用、柔軟作用があり、皮膚刺激性が低い
    • べたつくため、洗い流しにくい
    クリーム
    • べたつきが少なく使用感がよく、水で洗い流せる
    • 基剤には水中油型(O/W型)と油中水型(W/O型)がある
    ローション
    • 使用感がよく、よくのびる
    • 基剤には乳剤性と溶液性がある
    フォーム
    • 展延性が高く、広範囲に塗り広げやすい
    • 使用感が良い
    スプレー
    • 広範囲に使用しやすく、手が届かない場所にも使用できる
    • 使用量を正確に把握できないことがある
    図:乳剤性基剤の分類(イメージ図)
    記事/インライン画像
    図:乳剤性基剤の分類_水中油(O/W)型

    水中油(O/W)型
    ヒルドイドクリーム0.3%
    ヒルドイドローション0.3%

    記事/インライン画像
    図:乳剤性基剤の分類_油中水(W/O)型

    油中水(W/O)型
    ヒルドイドソフト軟膏0.3%

    ワセリン、ヘパリン類似物質含有製剤、尿素製剤塗布時におけるTEWLと角層水分量の比較

    保湿剤塗布部位における角層水分量を、ヘパリン類似物質含有製剤であるヒルドイドソフト軟膏0.3%、ワセリン、尿素製剤などで比較した試験があります。その試験においてヒルドイドソフト軟膏0.3%では塗布後1日目から3日目まで角層水分量が上昇し、3日目以降もその効果が持続していることが示されました。

    試験概要

    目的
    保湿剤(ヒルドイドソフト軟膏0.3%、白色ワセリン、尿素製剤)の皮膚バリア機能に及ぼす影響を検討する。
    方法
    モルモット(雄性、3週齢)を用いて、アセトン・エーテル(1:1)混液および水処理(以下、A/E/W処置)を行いドライスキンモデルを作製した。その後、塗布部位を1匹あたり4ヵ所設定(1.5×1.5cm/site)し、1日1回、計5日間、各薬剤(10mg/cm2)を反復塗布し、経表皮水分蒸散量(TEWL)および角層水分量を観察した。なお、ドライスキンモデル作製後、無塗布部位をコントロールとして設定し、同様に評価した。モルモットは各薬剤塗布部位および無塗布部位がn=8になるように無作為に割り付けし、別に正常動物(正常皮膚)を8匹設けた。
    被験薬剤
    ヒルドイドソフト軟膏0.3%基剤、ヒルドイドソフト軟膏0.3%、尿素製剤10%、白色ワセリン
    評価項目
    TEWLの測定(Vapometer)、角層水分量の測定(Skicon-200)

    経表皮水分蒸散量(Transepidermal water loss:TEWL):
    皮膚から蒸散する水分量であり皮膚バリア機能の指標である。TEWLが高いほど、皮膚バリア機能が低下していると考えられる。

    結果

    結果①TEWLの変化

    ヒルドイドソフト軟膏0.3%塗布部位では塗布1日後から低下が認められ、塗布5日後まで基剤塗布部位と比較して有意に低下した(p<0.01, vsヒルドイドソフト軟膏0.3%基剤, t検定)。

    記事/インライン画像
    グラフ:TEWLの変化
    結果②角層水分量の変化

    ヒルドイドソフト軟膏0.3%塗布部位では塗布5日後まで基剤塗布部位と比較して有意な上昇が認められ、特に3日目以降は正常レベル(正常皮膚)を大きく上回る増加を示した(p<0.01, vsヒルドイドソフト軟膏0.3%基剤, t検定)。

    記事/インライン画像
    グラフ:角層水分量の変化

    まとめ

    実験的モルモットドライスキンモデルにおいて、ヒルドイドソフト軟膏0.3%は角層水分量を増加させ、上昇したTEWLを低下させることにより、皮膚バリア機能回復作用が認められました。

    土肥 孝彰 ら:西日皮膚, 74(1), 48-56, 2012 より一部改変

    保湿効果

    監修:
    • 東京女子医科大学 名誉教授 川島 眞 先生

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