長期収載品に導入される選定療養について
今回の選定療養の仕組みや導入される経緯の解説や、対象品目の説明をまとめております。
選定療養とは
平成18年10月1日より、従前の特定療養費制度が見直しされ、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて適正な医療の効率的な提供を図る観点から「評価療養」と「選定療養」に再編成された。
「評価療養」及び「選定療養」を受けたときには、療養全体にかかる費用のうち基礎的部分については保険給付をし、特別料金部分については全額自己負担とすることによって患者の選択の幅を広げようとするものである。
- 評価療養
- 評価を行うことが必要
- 選定療養
- 特別の病室の提供など被保険者の選定に係る

長期収載品に選定療養の仕組みが導入される経緯
創薬力強化に向けて、革新的な医薬品等の開発強化、研究開発型のビジネスモデルへの転換促進等を行うため、イノベーションの適切な評価などの更なる薬価上の措置等を推進することとしているところ、医療保険財政の中で、こうしたイノベーションを推進するため、後発医薬品の安定供給を図りつつ、長期収載品の保険給付の在り方の見直しを行うこととしている。
本制度は、こうした政策的な要素を考慮した上で、具体的には、医療上の必要性があると認められる場合等は、保険給付するという前提に立ちつつ、後発医薬品が存在する中においても、薬剤工夫による付加価値等への患者の選好により使用されることがある等の長期収載品の使用実態も踏まえ、長期収載品の処方等又は調剤について、患者の自己の選択に係るものとして、その費用を患者から徴収することとしたものである。
イノベーション推進と安定供給確保に向けたビジネスモデルの転換(全体像イメージ)
- 我が国の創薬力強化に向けて、イノベーションを推進するとともに、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロスの解消を実現していくために、薬価上の措置を講じつつ、革新的な医薬品等の開発強化、研究開発型ビジネスモデルヘの転換促進が必要。
- また、後発医薬品を中心とした安定供給の課題を解消するため、後発医薬品企業の産業構造の転換を促すとともに、医療上必要性の高い品目の安定供給の確保も不可欠。
- そのため、R6年度薬価制度改革においては、これらの対応を強力に進める薬価上の措置を講じるとともに、長期収載品等の在り方の見直しにより後発品の置換えを進め、長期収載品への依存から脱却を促していく。
主な検討課題
※は、薬価上の措置
イノベーションの評価、
ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス解消に向けた対応
- 新薬収載時における加算等の評価のあり方※
- 新薬創出等加算の要件のあり方※
- 市場拡大再算定のあり方(類似品の取扱いなど)※
- 医療系ベンチャ ーの成果創出支援
- イノベーションの基盤構築の推進
医薬品の安定供給の確保
- 薬価の下支え策のあり方
(基礎的医薬品、不採算品再算定など)※ - 安定供給が確保できる後発品の企業要件の導入と企業要件に応じた薬価上の措置のあり方※
- 安定供給強化に向けたサプライチェーンの強靱化
長期収載品等の保険給付の在り方の見直し
- 研究開発型のビジネスモデルヘの転換を促すとともに、長期収載品から後発品への更なる置換えを従来とは異なるアプローチで推進する観点から、長期収載品等の保険給付の在り方などを見直し
長期収載品の選定療養の施行時期
- 2024年10月1日
-
- 長期収載品に係る処方箋様式の改正等についても2024年10月1日から施行される
処方箋の新様式(2024年10月1日以降)

一般名処方の場合には、「変更不可(医療上必要)」欄及び「患者希望」欄のいずれにも、「✓」又は「×」を記載しないこと。
長期収載品の選定療養対象品目
次の①又は②の要件を満たす医薬品であって、当該長期収載品の薬価が、当該長期収載品の後発医薬品(組成、剤形及び規格が同一であるものに限る。以下同じ。)のうち最も薬価が高いものの薬価を超えているものであること。(2024年4月19日現在、445成分1,095品目が該当)
- ①当該長期収載品に係る後発医薬品が初めて薬価基準に収載された日の属する月の翌月の初日から起算して5年を経過した長期収載品(バイオ医薬品を除く。)
- ②当該長期収載品に係る後発医薬品が初めて薬価基準に収載された日の属する月の翌月の初日から起算して5年を経過しない長期収載品であって、当該長期収載品に係る後発医薬品の数量を、当該長期収載品に係る後発医薬品の数量に当該長期収載品の数量を加えて得た数で除して得た数(後発品置換え率)が50%以上であるもの(バイオ医薬品を除く。)


保険給付と長期収載品の選定療養の適応場面
- ①患者に対して長期収載品の処方等又は調剤に関する十分な情報提供がなされ、医療機関又は薬局との関係において患者の自由な選択と同意があった場合に限られるものであること。なお、今般、本制度の導入にあたっては、院外処方や院内処方等及びそれを踏まえた調剤時における患者の希望による長期収載品の選択を対象とし、入院中の患者については対象外とする。
- ②長期収載品を処方等又は調剤することに医療上必要があると認められる場合に該当しないこと。具体的には、処方箋の「変更不可(医療上必要)」欄に「✓」又は「×」が記載された長期収載品は、医療上必要があると認められるため保険給付の対象となり、選定療養の対象にはならないこと。他方、患者の希望を踏まえ銘柄名処方され、「患者希望」欄に「✓」又は「×」を記載された長期収載品や、一般名処方され、患者が調剤を希望した長期収載品は、選定療養の対象となること。
- ③当該保険医療機関又は保険薬局において、後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、後発医薬品を提供することが困難な場合に該当しないこと。
長期収載品における保険給付と選定療養の適応場面(イメージ)

※入院患者に対する長期収載品の使用は選定療養の対象外となる。
- *:処方の段階では後発医薬品も使用可能としていたが、調剤時に患者が服用しにくい剤形である、長期収載品と後発医薬品で効能・効果等の差異がある等、後発医薬品では適切な服用等が困難であり、長期収載品を服用すべきと判断した場合には、医療上必要がある場合に該当し、保険給付とする。
- **:処方箋において「患者希望」欄に「✓」又は「×」の記載がされていたが、調剤時に選定療養について説明した結果、患者が後発医薬品を希望した場合に、後発医薬品を調剤した場合は、保険給付とする。
長期収載品の選定療養に係る負担
係る負担イメージ

当該長期収載品の薬価から、当該長期収載品の後発医薬品の薬価を控除して得た価格に4分の1を乗じて得た価格を用いて算定告示の例により算定した点数に10円を乗じて得た額とすること。ここでいう当該長期収載品の後発医薬品の薬価とは、該当する後発医薬品のうち最も薬価が高いものの薬価をいうこと。なお、「選定療養」に係る費用として徴収する特別の料金は消費税の課税対象であるところ、前述で算定方法を示している長期収載品の特別の料金の額に消費税分は含まれておらず、前述の額に消費税分を加えて徴収する必要がある。
係る負担イメージ

長期収載品薬価と後発品薬価の差額4分の1が選定療養費として徴収されます
長期収載品の選定療養に係る負担イメージ
(ヒルドイドクリーム・ソフト軟膏100g処方の場合)
薬価 (100g) |
自己負担 割合 |
選定療養適用外の 場合の患者自己負担額 〈実質自己負担率〉 |
選定療養適用の場合の患者自己負担額 〈実質自己負担率〉 |
|||
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選定療養に係わる 負担額(消費税込) |
選定療養適用の場合と 選定療養適用外の場合 での差額 |
|||||
ヒルドイド(クリーム/ソフト軟膏) | 1,850円 | 3割 | 555円〈30%〉 |
811円 〈44%〉 |
352円 | +256円 |
ヘパリン類似物質後発品 | 560円 | 168円 | ||||
ヒルドイド(クリーム/ソフト軟膏) | 1,850円 | 1割 | 185円〈10%〉 | 505円〈27%〉 | 352円 | +320円 |
ヘパリン類似物質後発品 | 560円 | 56円 |
【3割負担患者の選定療養適用の場合の患者自己負担額811円の計算】
- 【選定療養に係わる負担】
- 3.23円(長期収載品とGE価格差の1/4)×100g=323円▶32点
32点×10(円/点)×(1+0.10)=352円 - 【選定療養を除く保険給付の対象となる費用】
- 15.27円(保険外併用療養費の算出に用いる価格)×100g=1,527円▶153点
153点×10(円/点)=1,530円 - 【選定療養適用の場合の患者自己負担額】
- 352円+(1,530円×0.30)=811円
- :消費税
- :自己負担割合
※厚生労働省HPが公表している「厚労省マスタ」に基づき算出しております。
詳しい計算方法は厚生労働省HPをご参照ください。
本ページは以下の資料を元に編集し、掲載しています。
- 2006年10月1日 健康保険法改正
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/sensiniryo/index.html - 2023年12月15日 中医協 総-6 5.12.15より
- 2024年3月5日 厚生労働省令第35号より
- 2024年3月27日 厚生労働省保険局医薬課長通知 保医発0327第10号より
- 2024年3月27日 厚生労働省保険局医薬課長通知 保医発0327第11号より
- 令和6年4月19日 厚生労働省保険局医療課 事務連絡より
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- 2024年診療報酬改定内容について
- 長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈について