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服薬指導に役立つ皮膚外用剤の基礎知識 No.1:剤形からみた基剤の分類と特徴


皮膚外用剤では、主薬は常に基剤から放出されることから、吸収は基剤の影響を大きく受けます。そのため、皮膚外用剤を理解するには基剤を理解することが不可欠です。また使用感も影響を受けるため、基剤を踏まえて患者さんやそのご家族に服薬指導を行うことも、服薬アドヒアランスの向上のために必要といえます。

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キャラクター1

皮膚外用剤は多種類の剤形や基剤があり、皮膚の状態や部位に応じて選択されます。一般的な基剤の分類は表1に示す通りですが、臨床現場では表2に示すように水と油に分類すると理解しやすいです。

表1:皮膚外用剤の基剤
分類 基剤
軟膏 水溶性基剤
油脂性基剤
乳剤性基剤
(クリーム剤)
水中油型
油中水型
ゲル 水性ゲル
油性ゲル
表2:水と油による分類 水と油は混ざらないので、混合時には確認
基剤
  • 水溶性基剤軟膏
  • 水中油型クリーム
  • 水性ゲル基剤
  • 油脂性基剤軟膏
  • 油中水型クリーム
  • 油性ゲル基剤
特性
  • 水で流れる
  • 水を吸う
  • 使用感がいい
  • 酸化されない
  • 水で流れない
  • 水を吸わない
  • べたつく
  • 酸化される

軟膏

軟膏基剤は水溶性基剤と油脂性基剤の2つに分類されます。

主な水溶性基剤とその特徴

マクロゴール軟膏

ポリエチレングリコール400と4000を等量混合した軟膏です。滲出液を吸収すると基剤が溶けて流れるので、ガーゼと併用します。乾燥や刺激などの副作用に注意が必要です。

主な油脂性基剤とその特徴

(1)白色ワセリン

多種類の白色ワセリンがありますが、ワセリンをより精製し不純物を除いたプロペトは、眼軟膏用の基剤として販売されました。
プロペトは精製過程で抗酸化物質も除去されているため、ワセリンと比べ日光の影響を受けやすいので保存には遮光が必須です。
パッチテストで用いられるサンホワイトもワセリンを精製していますが、抗酸化剤のトコフェロールを加えています。

(2)ゲル化炭化水素(プラスチベース)

ゲル化炭化水素は、外観も透明感がありゲルと間違うことがありますが、油脂性基剤の代表です。
温度による粘稠度の変化が少なく、のびがよいために眼軟膏の基剤として使用されています。

(3)白色軟膏、単軟膏

亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏の適応は同じですが、それぞれの基剤は白色軟膏と単軟膏であり、特性が異なります。いずれも油脂性基剤ですが、白色軟膏は白色ワセリンに界面活性剤であるソルビタンセスキオレイン酸エステルが添加されたことにより、水分を吸収することが可能です。
滲出液が多い場合は亜鉛華軟膏、少ない場合は亜鉛華単軟膏を選択します(写真1)。

写真1:亜鉛華単軟膏と亜鉛華軟膏の吸水性
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亜鉛華単軟膏と亜鉛華軟膏の吸水性

(4)精製ラノリン

ラノリンは羊の毛に付着する脂肪様分泌物から得られるもので、水分を吸収しやすく、2~3倍の水を吸収しても軟膏の状態を保つことができます。
しかし、副作用としてアレルギー反応の報告があり、精製ラノリンを基剤とする外用剤には注意が必要です。アレルギー反応はラノリンに含まれるラノリンアルコールが原因物質と考えられており、添加剤としてラノリンアルコールが含まれている場合にも注意が必要です。

クリーム剤

クリーム剤は、軟膏剤と同様に汎用されている剤形です。クリーム剤は「乳化」している点が軟膏剤と異なります。
クリーム剤は乳剤性基剤であり、外相が水で中に油を含む水中油型(O/W型)とその逆の油中水型(W/O型)の2つに分類されます。
薬価収載されている皮膚外用剤は大部分がO/W型です。そのため、W/O型を覚え、それ以外はO/W型と判断すると簡単です(表3)。

表3:主な医療用医薬品のW/O型
一般名 製品名
ジフルコルトロン吉草酸エステル ネリゾナユニバーサルクリーム 0.1%
デキサメタゾンプロピオン酸エステル メサデルムクリーム 0.1%
メトキサレン オクソラレン軟膏 0.3%
ナジフロキサシン アクアチム軟膏 1%
尿素 パスタロンソフト軟膏 10%/20%
ヘパリン類似物質 ヒルドイドソフト軟膏 0.3%
幼牛血液抽出物 ソルコセリル軟膏 5%

医療用医薬品添付文書(添付文書)には乳化の型はほとんど記載されていないため、界面活性剤からの判断や製薬会社への問い合わせが必要となります。
油中水型のヒルドイドソフト軟膏は水により流れ落ちませんが、水中油型のヒルドイドクリームは水により簡単に流れ落ちます(写真2)。ただし、塗布後しばらくするといずれも水分が蒸発して油分のみが残ります。

写真2:油中水型(W/O型)と水中油型(O/W型)の水による流れ方の違い
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油中水型(W/O型)と水中油型(O/W型)の水による流れ方の違い

油中水型(W/O型)は水により流れないが、水中油型(O/W型)は水により簡単に流れ落ちる

ゲル

ゲルは本質的には分散質同士の強い相互作用のために、系全体が網状構造を作っており、弾性をもっています。医薬品に用いられているゲル基剤の大部分は、ヒドロゲル(水性ゲル)です。FAPGゲルのリオゲル基剤は水を含まないゲルですが、水性ゲルに分類されます。医療用医薬品では、乾癬治療薬に油性ゲルがあります。
ゲルは温度、溶媒、pH、イオン組成などが変化すると相転移が起こり、粘稠度が変化します。そのため、ゲル同士でも混合は避けるべきです。
水性ゲル基剤は、水溶性基剤と同様に皮膚を乾燥させるので連用にも注意が必要です。

FAPG:fatty alcoholpropylene glycol

参考:
大谷道輝:スキルアップのための皮膚外用剤Q&A改訂2版,南山堂,東京,2011

添付文書で基剤の確認を

皮膚外用剤の選び方では基剤や剤形の理解が重要ですが、現在の医療用医薬品は、下表に示すように、製品名から基剤や剤形が判別できない製品が数多くあるので注意してください。例えばクリーム剤には乳剤性基剤などが用いられていますが、製品名が「○○軟膏」でもクリーム剤の場合や、「△△クリーム」でもゲル基剤が使用されていることがあります。
製品名で判断せずに、添付文書や製薬会社への問い合わせなどで基剤を確認しましょう。

製品名から基剤の判別が困難な外用剤
製品名 基剤
インテバン軟膏 1% 水性ゲル
フェルデン軟膏 0.5% 水性ゲル
トプシムクリーム 0.05% FAPGゲル
イソジンゲル 10% 水溶性基剤
ネオヨジンゲル 10% 水溶性基剤
5-FU軟膏 5% 協和 水中油型クリーム
ザーネ軟膏 0.5% 水中油型クリーム
ユベラ軟膏 水中油型クリーム
アクアチム軟膏 1% 油中水型クリーム
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