maruho square 皮膚科クリニックの在宅医療奮闘記:こんなときどうする!? 在宅で診る皮膚トラブル解決ブック
-
- 小川皮フ科医院 院長 小川 純己 先生
はじめに
2026年2月に、上記タイトルのペーパーバックを上梓しました。私は主に総論を担当し、各分野の実臨床で活躍されている先生方に専門項目をご執筆いただきました。皮膚科の在宅医療にまつわるエッセンスを詰め込んだ良書になったと自負しております。今回は、この本の特徴を説明するとともに、「非皮膚科医に捧ぐ!」と帯文字に入れてもらったように、皮膚科以外の医師、看護師、ケアマネジャー、ヘルパーなどを含めた医療従事者、さらには患者家族にもお薦めの内容になっていますので、対象読者ごとの読み方を解説します。
写真が大事
本のタイトルに「在宅で診る」と銘打っていますので写真を重視しました。写真を共通言語にしてアプローチしています。
まず、「第2章 部位別に診る在宅での皮膚疾患」では、顔面、頭部などの皮膚症状の写真をサムネイルで俯瞰できるようにしています。小さい写真では細かい所見をつかむことは難しいものの、その部位に何かあるという出発点になれば十分です。皮膚の異常に病名が付いていることが分かるだけでも、皮膚科医以外の方々の安心につながるのではないでしょうか。
続いて、「第3章 皮膚科医の思考パターン 2項 部位別・経過からの鑑別」では、皮膚科医の思考パターンに基づく鑑別のアルゴリズムとその臨床写真を対応させています。アルゴリズム通りに進めると誰でも診断が付くのが理想ですが、分岐点での判断が正しく行われないと迷子になる恐れがあります。やはり医学には経験が必要なゆえんです。
また、AIによる自動診断はブラックボックスであることが多く、結論だけが提示される恐れがあります。その根拠を確認するために、病名から後追いするような使い方も考えられます。
病名にたどり着いたら、「第5章 疾患別のアプローチ」で各論を参照してください。各方面で活躍中のエキスパートによる、在宅診療の実践的な解説となっています。
手技を解説
この本のもう1つの特徴として、皮膚科の在宅診療で実際に行っているスキルや利用しているツールを具体的に解説した点が挙げられます。実際にスキンケアを行っている看護師に細かく手順を示していただき、写真も掲載しました。軟膏の塗り方、テープの巻き方を皮膚科の成書で改めて解説することも重要と考えました。唯一の正解を押しつけるのではなく、スキルの1つとして個々人が咀嚼していただければ幸いです。
在宅診療未経験の医師向けには、「第1章 在宅で診る皮膚疾患をおさえよう!」にて心構えや準備事項を説明しました。とりあえず始めるための知識です。網羅するまでにはいきませんが、私が経験した失敗談を下地に細かい注意事項を挙げています。「第6章 他職種との連携」では、メール連絡やオンライン診療についても触れています。
在宅診療でここまでできる、という各論では、「第4章 在宅における診療に役立つスキルとツール 7項 在宅における外科的処置」の、爪・胼胝腫の項目が特に示唆に富んでいます。爪は在宅においても懸念事項の1つです。
伸びすぎた爪が布団にひっかかってぐらつく、隣の指に当たって出血するなどの問題が起こります。爪切りも切りにくくなるに従って、介護職員から看護師へ、さらに医師へと、次々バトンが渡されます。爪切り手技もしっかり身につけたいスキルです。診療所の通常外来でも十分役立つ内容で、アウェイである在宅診療で、どこまで攻められるかの試金石になったのではないでしょうか。
医行為ではない行為
処置には「医行為」と「医行為ではない行為」があります。医行為とは、医師・歯科医師が本来担うべき医学的判断や専門的技術を要する行為を指します。医事法制上、医行為を自身の判断により実施することができるのは医師、歯科医師に限定されています。
一方、看護職員(保健師、助産師、看護師、准看護師)は一定の医行為(診療の補助)について、医師の医学的判断を前提として実施できます。
これに対して、介護職員には、
- 原則可能な行為
- 条件付きで可能な行為
- できない行為
があります。医行為は、身体への侵襲や重大な健康被害につながる可能性があるため、介護職員が実施することは認められていません。
褥瘡の処置を除く皮膚への軟膏の塗布を介助することは、条件付きではありますが、「原則として医行為ではない行為」に含まれますので、一定の条件を満たす場合、介護職員でも実施可能です。皮膚科の処置では、通常の爪切り、軽微な傷の処置、皮膚への軟膏塗布、湿布貼付、爪白癬に対する爪外用液の塗布が条件付きで可能な行為に該当します。
医師からすると、家族ができる処置=介護職員ができる処置<看護師の処置という位置づけで、介護サービスや訪問看護の導入を検討します。背部の軟膏外用は患者本人では困難なことが多く、家族に協力を求めますが、難しい場合は介護サービスの手を借りたくなります。しかし、条件を満たさなければ依頼できないこともあります。厚生労働省の通知に示された条件を参照しましょう1)。
- 参考文献
-
- 厚生労働省 令和6年度老人保健健康増進等事業 原則として医行為ではない行為に関するガイドライン, 令和7(2025)年3月
(https://www.jeri.co.jp/wp-content/uploads/2025/05/elderlyhealth-r6_02.pdf)
- 厚生労働省 令和6年度老人保健健康増進等事業 原則として医行為ではない行為に関するガイドライン, 令和7(2025)年3月
診療報酬に関する小川皮フ科医院へのお問い合わせはご遠慮ください。



