maruho square 地域包括ケア時代の薬局経営:オンライン服薬指導と訪問調剤
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- HYUGA PRIMARY CARE株式会社(きらり薬局) 代表取締役社長 薬剤師 黒木 哲史 先生
はじめに
今回はオンライン服薬指導と訪問調剤についてお伝えします。きらり薬局では2018年に国家戦略特区にて、保険診療内では全国で初めてのオンライン服薬指導を実施しました。敢えて冒頭に少し申し上げておきたいのが、オンライン服薬指導は外来であろうが、在宅であろうが「手段」であり、オンライン服薬指導を実施すること自体が「目的」ではありません。きらり薬局ではオンライン服薬指導を行うことにより、訪問調剤に従事する薬剤師の労務負担軽減を図ることで訪問調剤が普及し、在宅患者に薬剤師の指導や相談が当たり前の世の中になることを望んでいます。その「手段」としてオンライン服薬指導は大きな武器となるのを私達なりにイメージして福岡市と協議を重ね国家戦略特区にて実施しました。オンライン服薬指導は「目的」ではなく「手段」というのがまず前提としてあると考えております。
国家戦略特区でのオンライン服薬指導(遠隔服薬指導)
国家戦略特別区域法の一部を改正する法律(2016年法律第55号)に基づき、薬剤師による対面での服薬指導義務の特例として
- 離島、僻地に居住する者に対し、
- 遠隔診療が行われ、
- 対面での服薬指導ができない場合に限り、
- テレビ電話による服薬指導(いわゆる遠隔服薬指導)が 可能となりました。
2018年6月14日の国家戦略特別区域諮問会議において、愛知県、兵庫県養父市及び福岡市における遠隔服薬指導の実施に関する計画が認定されました(図1)。

(2018年11月22日第9回 医薬品医療機器制度部会 資料2を元に図は作成)
[患者さんの背景]
きらり薬局名島店が1年以上前から在宅訪問にて薬剤管理している患者さん(ご夫婦)で、近くに娘さんが住んでおり、日中は支援を受けることができる方がいます。自宅は食堂を経営し、娘さんが切り盛りしていました。ご夫婦とも介護認定を受けており、特に家から出かける移動に関しては、娘さんの支援なしでは到底不可能で、住まいである志賀島地域には医療機関がなく、薬局からは車で片道40分ほどかかります(図2)。時間の拘束から考えると薬局に利益が見込めないことは承知していましたが、それでも強い要望があり訪問していたのが現状でした。実際に薬局現場は疲弊し、私自身、経営者として利益のでない「訪問調剤の課題」の現状がそこにはありました。

オンライン服薬指導のメリット、デメリット
実際に実施して見えてきた、メリットとデメリットを挙げてみます。
メリット
- 薬剤師の移動時間負担軽減
- あらかじめ決めた時間に服薬指導ができ、生活のリズムを崩しにくい
- テレビ電話の操作も簡単で、画質・音声も分かりやすい
- 相対的に患者さんの負担額が減った
デメリット(その当時の課題点など)
- デバイスの準備は誰がするのか、費用負担は?
- ユーザーのITリテラシー
ソフトやデバイスのアップデート「高齢者にはハードルが高い!」 - 薬の配送料の負担は誰がするのか?
- 薬の配送業者はどこに頼むのが適切なのか?
- 訪問診療との差
「多少の費用負担があっても訪問のほうが良い」 - 遠隔服薬指導、外来オンライン服薬指導はオンライン診療を受けた場合の処方に限定される
- オンライン診療 → オンライン服薬指導
この間にタイムラグが生じる
などが浮き彫りになりました。
ルールが決定していないものや、課題点においては厚生労働省の方も何度か薬局に視察に来られていましたので、その際に細かくお伝えし、ルール決定が実現したものもあります。
さらには、「在宅オンライン服薬指導」の点数が創設されたことは、我々の実証実験の結果が反映されたものとして、私自身とても嬉しく思っています。また、並行してオンライン服薬指導の実務手順も福岡市など行政と確認を行いながら決めていきました(図3)。

国家戦略特区以外で現実的に行われているオンライン服薬指導(表)
- ①0410対応(2020年4月10日事務連絡)
- コロナウイルス感染症拡大により時限的に開始された措置で、実際にコロナウイルス感染陽性者には処方箋に「CoV自宅」「CoV宿泊」の指示があり、対面診療、オンライン診療を問わず、オンライン服薬指導もしくは電話での対応を行うもの。
0410事務連絡に基づき規定するオンライン服薬指導を行った場合、要件を満たせば、「薬剤服用歴管理指導料」などを算定することができます。 - ②外来オンライン服薬指導
- 対面服薬指導を行ったことのある患者さんに、患者さんのオンライン服薬指導の希望を踏まえ、当該薬局において調剤したものと同一内容の薬剤について、オンライン診療による処方箋に基づき調剤を行うもの。
- ③在宅オンライン服薬指導で以下の場合の服薬指導をオンラインで実施するもの
- 患家で対面服薬指導を行ったことのある患者さんに、患者さんのオンライン服薬指導の希望を踏まえ、当該薬局において調剤したものと同一内容の薬剤について、訪問診療による処方箋に基づき調剤を行うもの。
次回、2022年4月診療報酬改定においてもオンライン診療、服薬指導について実施しやすいようにさまざまな要件が緩和される議論が内閣府などでなされています。きらり薬局ではそれら動向を注視しながら、少しずつオンライン服薬指導を進める準備をしています。冒頭にもお話ししましたが、特に「在宅医療」においては、薬剤師の移動がなくなるという大きなメリットを活かしながら「目的」ではなく「手段」としてオンライン服薬指導を活用すべきだと考えております。
きらり薬局では2か月1回定期的に調剤薬局の薬局経営について内容をもっと深掘りした無料参加も可能なWEBセミナーを開催しております。詳しくは「きらりプライム」ホームページの「セミナー/イベント」をご確認ください。
