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maruho square チーム医療と薬剤師:―新型コロナウイルス感染拡大防止対策― 電話診療による院外処方箋対応から始まる薬薬連携


新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の影響拡大が懸念される中、令和2年2月28日付けの「新型コロナウイルス感染症患者の増加に際しての電話や情報通信機器を用いた診療や処方箋の取扱いについて(以下、0228事務連絡)」により、COVID-19蔓延防止の観点から、慢性疾患などを有する定期受診患者さんに対し、電話や情報通信機器による診療および院外処方箋の発行の留意点がまとめられた。京都第二赤十字病院(京都市上京区)は、同年3月16日から電話による再診(以下、電話診療)の受け付けを開始。薬剤部では、医薬品情報管理室(以下、DI室)の薬剤師が中心となり電話診療による院外処方箋に対応している。今回は、その実際とメリット、今後の展望などについて、岡橋先生、堀内先生に伺った。

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日本赤十字社 京都第二赤十字病院 薬剤部 副部長 岡橋 孝侍 先生
岡橋 先生
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日本赤十字社 京都第二赤十字病院 医薬品情報管理課 課長 堀内 あす香 先生
堀内 先生
  • 日本赤十字社 京都第二赤十字病院 薬剤部 副部長 岡橋 孝侍 先生
  • 日本赤十字社 京都第二赤十字病院 医薬品情報管理課 課長 堀内 あす香 先生

電話診療による院外処方箋の発行を開始 DI室薬剤師がダブルチェック体制で対応

電話診療開始までの経緯を教えてください。
図. 電話診療 申込用紙
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図. 電話診療 申込用紙

【岡橋】厚生労働省から0228事務連絡が通達されて早々に、病院全体で定期受診患者さんに対する電話や情報通信機器を用いた診療や院外処方箋の取扱いについて検討を始めました。その中で、①当院は情報通信機器による診察を行うシステムが整備されていないため、電話を用いること、②高度急性期医療を担う医療機関として患者さんを直接診療することの重要性を鑑み、電話診療は積極的に推奨せず、患者さんの受診方法の選択肢を増やすスタンスで、患者さんの申し出(FAX)により対応すること、③電話診療の対象は「再診」かつ「症状が安定している」「電話診療により不利益を生じるおそれがあることを了承する」「受診予約日が決まっている」「予約当日に検査や処置の予定が無い」「処方箋を保険薬局に送信することに同意する」をすべて満たす患者さんとし、1つでもあてはまらない場合は原則来院いただくこと、④電話診療による院外処方箋発行までのフローチャート作成などを決めました。3月16日に、当院および京都府薬剤師会のホームページに電話診療の申込用紙()を公開しました。それに先立ち、近隣の保険薬局に対してメーリングリストで電話診療による院外処方箋発行の情報提供を行いました。

京都第二赤十字病院(京都市上京区釜座通丸太町上ル春帯町355番地の5)

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京都第二赤十字病院(京都市上京区釜座通丸太町上ル春帯町355番地の5)
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京都第二赤十字病院(京都市上京区釜座通丸太町上ル春帯町355番地の5)
電話診療による院外処方箋発行までの流れをご説明ください。
【岡橋】患者さんが当院あるいは京都府薬剤師会のホームページから申込用紙を印刷し、必要項目を記載して、2診察日前までに総務課宛にFAXします。総務課は申込用紙に記載不備がなく、電話診療可能であることを確認できれば、診察前日に医事課へ申込用紙を提出します。診察当日は、医事課が来院受付処理を行い、担当医師/看護師に申込用紙や対応手順などを入れたファイルを提出します。担当医師が診察予約時刻に電話診療を実施し、院外処方箋を発行、医事課が回収し会計処理後、薬剤部に提出します。薬剤部では、DI室の薬剤師が処方監査を行ったのち、電話診療による院外処方箋である旨記載した鏡文をつけて院外処方箋を患者さん指定の保険薬局にFAXします。院外処方箋に付けた鏡文は薬剤部が保管し、院外処方箋の原本は医事課から保険薬局に郵送する流れになっています。
薬剤部での対応を詳しくお話ください。
【堀内】DI室のすべての薬剤師が対応できるようにチェックリストを作成し、安全性を担保するためにダブルチェック体制をとっています。カルテ確認し、前回処方と異なる点、例えば処方薬の中止や種類の変更/追加などをチェックし、薬学的な観点から疑義照会が必要であれば、処方医に確認します。また、必要に応じてカルテから得られた情報などを院外処方箋に付けた鏡文に記載し、保険薬局に情報提供するようにしています。

方法論もルールも国から提示がなく正解もない中、即時性を重視し、手探りで前進し続ける

どのような患者さんが電話診療を受けられていますか。
【岡橋】主に脳神経内科や循環器内科、消化器内科など内科系の診療科に定期通院中で内服薬のみで治療を受けている慢性期疾患の患者さんです。開始当初は舞鶴市や福知山市などの京都府北部のほか大阪府や滋賀県、兵庫県など遠方に住まれている患者さんが多かったのですが、徐々に京都市内の患者さんも増えてきました。逆に、FAX送信先の保険薬局は当院近隣の保険薬局から、患者さんの居住地の保険薬局が増えてきました。
電話診療による院外処方箋発行数はどれぐらいですか。
【堀内】2020年4~5月のCOVID-19第1波の際は、感染者数の増加に伴って電話診療を希望する患者さんが増加し、1日70件を超えることがありました。しかし、感染者数が減り始めると電話診療を希望する患者さんは減り、その後は感染者数の波に伴う増減はなく、1日5件程度で推移しています。
電話診療に関して開始当初から変更・追加されたことはありますか。
【岡橋】厚生労働省は電話や情報通信機器を用いた診療や院外処方箋の取扱いについて方法論もルールも示していません。また、COVID-19の情報は日々更新されていくため、私たちも即時性を重視し、手探りでベストな方法を模索しながら柔軟に取り組んでいます。例えば、申込用紙は、医師から検査結果説明だけの場合は電話診療を行いたいとの要望を受けて内容を追加しました。また、令和2年4月10日の厚生労働省事務連絡に対応するために、申込用紙には、COVID-19による自宅/ホテル待機者か否かのチェック欄を、院外処方箋に付ける鏡文には「□COV自宅 □COV宿泊」の記載を追加しました。
【堀内】先にお話ししたように、電話診療による院外処方箋は薬剤部で処方監査や疑義照会を行うために、保険薬局にFAX送信するまでに時間を要します。ところが、電話診療が終わるとすぐに保険薬局に薬を取りに行く患者さんがおられ、保険薬局内での待機時間が長くなり、感染対策的に本末転倒になっていました。そこで、申込用紙に「薬の受取り方法は、あらかじめ保険薬局と相談して下さい」の記載を追加したり、その時々に出てきた問題や要望に応じて改訂を繰り返しています。このようなことから、申込用紙は短い有効期限を設定しています。

電話診療による院外処方箋発行の対応を介して病院薬剤部と保険薬局の距離を縮め、薬薬連携を促進

COVID-19蔓延防止の観点以外に電話診療のメリットはありますか。
【岡橋】電話診療の開始に伴い、私たちは院外処方箋に付けた鏡文にカルテから得られた情報などを記載することにより、保険薬局に対して情報を提供するようになりました。そのせいか、保険薬局からのトレーシングレポートが増えたような印象があります。
【堀内】FAX送信時間が保険薬局の終了時間ぎりぎりの場合は、私たちが保険薬局に電話連絡を入れ、柔軟に対応していただいています。これをきっかけに、注意点や相談事項などがある場合も鏡文に記載するだけでなく、保険薬局薬剤師に直接電話連絡をすることで、お互いの距離が縮まったように感じています。
電話診療は薬薬連携の促進に繋がることも分かりましたので、電話診療による院外処方箋発行のニーズがある施設があれば、始めることをお勧めします。
最後に今後の展望をお聞かせください。
【岡橋】電話診療による院外処方箋発行に対応することにより、当院には遠方から来院されている患者さんが少なくないことに気づきました。そのような患者さんの中には電話診療をきっかけに当院近隣から居住地の保険薬局に変更された方がおられます。今後は、近隣薬局だけでなく、当院の患者さんが利用されている遠方の保険薬局ともオンラインを活用してコミュニケーションを深めていきたいと考えています。
ありがとうございました。

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