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maruho square 保険薬局マネジメント:薬剤師と患者をつなぐために薬局事務スタッフの役割を模索


現在、保険薬局は薬中心の対物業務から患者中心の対人業務へと変化している。このような中、患者さんがより安心して薬を服用するために、2016年4月から、特定の薬剤師が患者さんとの信頼関係のもと、薬を一元的・継続的に把握、管理する「かかりつけ薬剤師」が制度化された。しかし、同制度に対する地域住民の認知度は高くない。株式会社育星会カイセイ薬局(本社:大阪府大阪市、大阪府を中心に近畿一円で35店舗を展開)では、薬局事務スタッフ(以下、事務スタッフ)が待ち時間を利用した「かかりつけ薬剤師制度」の周知活動に取り組んでいる。その実際と成果、今後の展望について、奈良カイセイ薬局事務スタッフ(現、カイセイ薬局グループ株式会社育星会店舗管理部店舗管理課主任)の米田美咲さんからお話を伺った。

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カイセイ薬局グループ 株式会社育星会店舗管理部 店舗管理課主任 米田 美咲 さん
  • カイセイ薬局グループ 株式会社育星会 店舗管理部 店舗管理課 主任 米田 美咲 さん

薬局事務スタッフによる待ち時間を利用したラウンド業務を実施

株式会社育星会カイセイ薬局は、『薬の専門家、責任者として常に自分を患者自身に置き換えて接するように心がけ、安心と希望をともに共有できるよう、様々なサービスの提供に全力を尽くす』を理念に掲げ、薬剤師や事務スタッフなど全ての職種が様々なサービスの提供に全力を尽くしている。その一環として、事務スタッフによる患者さんの待ち時間を利用したラウンド業務を実施している。
米田主任は「事務スタッフも、待ち時間などを利用して患者さんと継続して関わり、信頼関係を構築し、患者さんが求めていることを把握して、薬剤師や管理栄養士に伝えたり、正しい情報を提供することが大切だと考えています。そのため、待合スペースに常に待機し、患者さんに何か気になる点があれば、積極的に声をかけ(ラウンド業務)、待ち時間を快適、有意義に過ごしていただけるように心がけています。」と説明する。患者さんとの会話の中で「薬が余っている」「週末に旅行に行って、食べすぎた」などの情報が得られれば、薬剤師に伝え、調剤業務や服薬指導に役立ててもらっている。

奈良カイセイ薬局(奈良県奈良市三条本町1-2 JR奈良駅NKビル3F)
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奈良カイセイ薬局

かかりつけ薬剤師制度の認知度向上とともに薬剤師と患者の架け橋になり得ていることを実感

今回ラウンド業務を行う中で、『かかりつけ薬剤師制度』が地域住民の間では認知度が低いことに着目し、その周知活動を検証することにした。「弊社では入社2、3年目の事務社員が学会発表を行うことになっているため、発表メンバーが在職している9店舗で取り組むことにしました」と米田主任。
まず、かかりつけ薬剤師制度の患者説明用チラシ(説明用チラシ)と患者対応マニュアル(対応マニュアル)を作成し、説明用チラシには、かかりつけ薬剤師制度の概要と患者さんの負担割合の概算費用などを、対応マニュアルには、かかりつけ薬剤師制度を知っている場合と知らない場合に分け、それぞれの対応方法を記載した。これらの資材を使い、2018年8月から2019年3月まで、処方内容や年齢などから、あらかじめ選んだ患者さんのほか、通常のラウンド業務で、かかりつけ薬剤師制度の説明が必要と感じた患者さんに対し、待ち時間を利用し、説明用チラシを用いてかかりつけ薬剤師制度の説明を行った。また、その取り組み後、患者さんと薬剤師にアンケート調査を実施した。

周知活動を行った総患者数は9店舗で712名。うち、かかりつけ薬剤師指導料の同意を得られた患者さんは38名、算定要件に満たない薬剤師の担当制を希望した患者さんは25名だった。
アンケート調査は患者さん21名、薬剤師24名に実施し、患者さんの76%が「かかりつけ薬剤師制度を利用して良かった」(図1)、86%が「かかりつけ薬剤師制度を利用してから相談しやすくなった」(図1)と回答した。患者さんからは「処方箋なしでも薬局に来て不安なことを相談できた」「きめ細かくフォローしてくれる」などの声が多く寄せられた。薬剤師のアンケート調査では、全ての薬剤師が「周知活動は大変良い/良い」と回答し、92%が「周知活動がかかりつけ薬剤師の同意を得るきっかけになった」(図2)と答え、「薬剤師だけでは業務中に詳しく制度の説明を行うことが難しかったので助かった」「周知活動によりかかりつけ薬剤師制度の同意がスムーズに得られた」などの意見が出された。
周知活動前(2017年12月~2018年7月)では、同意を得られた患者さんは5名であったことから、「私たちが必要でないと考えていても、患者さんにとっては必要なこともあり、そのような患者さんに制度を知ってもらうことができ、かかりつけ薬剤師指導料の同意数の増加につながった可能性」を考察した。

図1:患者アンケート結果
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図1:患者アンケート結果
図2:薬剤師アンケート結果
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図2:薬剤師アンケート結果

チラシやマニュアルを改訂し、事務スタッフによる周知活動を全店舗で実施

事務スタッフによる待ち時間を利用した、かかりつけ薬剤師制度の周知活動は、同制度の認知度が向上したのみならず、患者さんが薬や健康について気軽に相談でき、安心して薬を服用できる環境を提供するきっかけを作ることが明らかになった。また、薬剤師からは「複数の医療機関を受診している患者さんや薬の管理が困難な患者さんなどに制度を説明して欲しい」、患者さんからは「同じ薬剤師から説明を受けたい」などの希望があり、事務スタッフも「患者さんが制度を正しく理解し、活用して欲しい」との思いもあり、周知活動を継続して全店舗で実施することにしたという。

全店舗で展開するにあたり、説明用チラシ(図3)や対応マニュアルを改訂された。説明用チラシには、以前の内容に加えて、患者さんがどのような場合にかかりつけ薬剤師制度を活用すればよいのかが分かるように、「薬や健康について不安・疑問がある」「たくさんの薬を飲んでいる」など患者さんが日頃、悩んでいる可能性が高いことを具体的に列挙し、かかりつけ薬剤師制度を利用することで解決できることを記載した。対応マニュアルには、事務スタッフが患者さんに実施する説明方法だけでなく、かかりつけ薬剤師推進の流れや薬剤師や事務スタッフそれぞれの役割・担当についても明記した。また、患者さんの悩み別の説明も補足し、例えば、2つ以上の医療機関を受診している患者さんには、かかりつけ薬剤師が全ての薬について飲み合わせを確認するので安心して服用できるなど補足説明を例示した。その他に、患者さん自身が薬剤師を選定しやすいように、薬剤師の似顔絵と一言コメントを掲載した『かかりつけ薬剤師選択チラシ』を新たに作成された。
最後に「待ち時間を利用して患者さんからお話を聞くことにより、患者さんと良好な関係を築くことができ、その中で得られた情報を薬剤師に伝え、患者さんが安心して薬を服用することの支援ができます。これからも、患者さんと薬剤師をつなぐための取り組みを模索し、実践していきます。」と結ばれた。

図3:かかりつけ薬剤師説明用チラシ
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図3:かかりつけ薬剤師説明用チラシ

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