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maruho square チーム医療と薬剤師:病院の薬局薬剤師研修制度を活用し、地域包括病棟にて薬薬連携・多職種連携を学ぶ


団塊の世代が全て75歳以上となる2025年をめどに、重度の要介護状態の人でも住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最期までおくれるよう、地域包括ケアシステムの構築が進められている。その中で、2015年10月、厚生労働省は、保険薬局・薬剤師に対して、かかりつけ薬局・薬剤師機能、健康サポート機能とともに、専門医療機関と連携して抗がん剤の副作用対策などを行う高度薬学管理機能を充実・強化すべきという方針を打ち出した。これを受け、「連携は互いを知ってこそ」との思いから、薬局薬剤師を対象とした長期間の病院実務研修を行う動きが出てきた。社会福祉法人恩賜財団済生会支部大阪府済生会中津病院(大阪市北区)もその1つだ。同院にて実務研修を受けた株式会社なの花西日本(本社:大阪府豊中市)・なの花薬局中津店薬局長の杉本先生から、病院での薬局薬剤師研修の実際とメリット、今後の展望をお話しいただいた。

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株式会社なの花西日本 なの花薬局中津店 薬局長 杉本 崇 先生
  • 株式会社なの花西日本 なの花薬局中津店 薬局長 杉本 崇 先生

薬薬/多職種連携の実践は互いを知ってこそ病院が薬局薬剤師対象の実務研修を行う

大阪府済生会中津病院では、薬局薬剤師を対象とした長期間の実務研修をされていますが、その背景や狙いについて教えてください。
【杉本】2025年までに地域包括ケアシステムを構築するにあたり大阪府済生会中津病院・薬剤部長の萱野勇一郎先生曰く、「相手の仕事ぶりを知らなければ連携などあり得ない」というわけです。そこで、同院では、薬局薬剤師が地域でチーム医療の一員として仕事をするにあたり、病院の医師、薬剤師、多職種と顔の見える関係を築くことで、スムーズな薬薬/多職種連携に繋げ、地域の患者さんにより良質な医療を提供できるメリットを病院・保険薬局双方で享受することを目的に、2016年11月から、薬局薬剤師を6ヶ月間、実務実習修練生(以下、修練生)として受け入れることにしたようです。今のところ、主に近隣の保険薬局から同時期に2名までとなっています。
修練生はどのような実務実習を受けられるのですか。
【杉本】修練生は毎日8時30分~17時15分まで薬剤部の一員として勤務しながら、OJTで病院薬剤師の業務を学びます。基本スケジュールは、2ヶ月間のスパンで①注射用抗がん剤の混合調整(ミキシング)や高カロリー輸液の手技、②一般病棟業務、③地域包括病棟業務を学ぶことと並行して抗菌薬適正使用支援チームや感染対策チームや認知症サポートチームなどのカンファレンスに参加するというものです。ただし、スケジュールや内容は、化学療法や病棟業務など担当領域ごとに決められたチューター(修練生の主任)と修練生の経験や希望に応じて調整する体制がとられています。私は2018年2月1日~7月31日のうち、ミキシングや一般病棟業務は各々2週間で終え、地域包括病棟業務を4ヶ月間学び、その他はデータ収集・分析やマニュアルづくりなどを行いました。私の後任の修練生は、外来がん治療認定薬剤師の資格取得を希望しているため、抗がん剤のミキシングや服薬指導を中心に研修を受けています。

なの花薬局(大阪市北区芝田2-9-12)

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なの花薬局(大阪市北区芝田2-9-12)
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なの花薬局(大阪市北区芝田2-9-12)

退院前カンファレンスで何もできない状態から目標を立て、失敗を繰り返しながらマニュアルをつくる

実務実習を受けられてどのように感じられましたか。
【杉本】薬局薬剤師として16年間のキャリアのうち5年間は在宅業務も担っていたので、地域包括ケア病棟業務をこなせると考えていましたが、現実は大きく違っていました。例えば、退院時共同指導カンファレンス(退院前カンファレンス)は、「食事は?手すりは?リハは?」と衣食住の話が9割以上を占めており、最後の最後に薬剤師に意見を求められるというものでした。最初の1、2回は、「何もありません。このまま継続してお薬を飲んでください」としか言えず、他職種から「薬剤師は何をしにきたの?」という冷たい視線を向けられているような心理状態でしたが、チューターに相談し、「退院前カンファレンスでかかりつけ薬局を持っていただき、退院時薬剤情報提供書(サマリー)を提供する」「薬剤総合評価調整(減薬)加算を最低1件算定する」という2つの目標を立て、気持ちを新たにして再スタートを切りました。
再スタート後、状況が変わりましたか。
【杉本】再スタート後、「患者さんと信頼関係を築き、患者さんのニーズを知ることが大切だ」と気づき、患者さんにまず名前を覚えてもらうために、目立つ鞄やボールペンを持ち、「何か悩みはありませんか」「かかりつけ薬局は持たれていますか」「薬は一包化を希望されますか」など、じっくりお話をして患者さんのニーズを収集しました。それにより、退院前カンファレンスでは、「患者さんはこういうニーズがあります」と薬剤師の存在感を出せるようになりました。
退院前カンファレンス前に、患者さんと面談し、事前情報を得ることが大切ですね。
【杉本】かりつけ薬局を持たれていない患者さんには、自宅周辺の保険薬局の地図を作成し(図1)、かかりつけ薬局が持てるように話を進めていきました。ただ最初の頃はネット情報に頼っていたため、かかりつけ薬局と決めた保険薬局が潰れていたり、訪問可となっていても実質稼働していなかったりと問題がありました。そこで、患者さんが多く住まれている地域の地域包括支援センターを訪問し、足で情報を集めました。こうした努力が実り、かかりつけ薬局の提案・決定からサマリー提供までできました。
一方、減薬加算は1件も取れませんでしたが、同院の採用合剤の一覧表を作成し、退院前カンファレンスで、合剤変更を提案し、1日12錠から8錠に減らせた患者さんがおられます(図2)。そのほかに、毎週実施されている勉強会で病態などを学んだことにより、肝性脳症により認知機能が低下し服薬維持できない可能性の高い患者さんの退院支援ができたケースもあります。この患者さんは、病態からアンモニア発生リスクを減らすために服薬アドヒアランスが重要であり、訪問看護師が1日1回昼のみの訪問のため、服薬時の見直しを医師に提案し、1剤を除き、すべて昼食後に服用するようにしていただきました。
また、地域包括ケア病棟の退院前カンファレンスには、病院薬剤師はほとんど参加できていない状況でした。そこで、私の経験をもとに『地域包括ケア病棟薬剤師業務』のマニュアルを作成しました。現在、1ヶ月間一緒に実務実習を受けた他社からの修練生が同マニュアルのバージョンアップをはかるべく、退院支援に取り組んでいるようです。
図1:自宅近隣の調剤薬局情報(例)
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図1.自宅近隣の調剤薬局情報(例)
図2:減薬提案・サマリー提供事例
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図2.減薬提案・サマリー提供事例

薬局薬剤師が病院薬剤師を知る機会をつくり薬局薬剤師から薬薬連携を推進する動きを活性化

最後に今後の展望をお聞かせください。
【杉本】2025年の地域包括ケアシステムでは、薬局薬剤師に対して、病院薬剤師の専門性と同等のことが求められていると思っています。それまでに、薬局薬剤師は病院薬剤師や、他職種の仕事を自分の目で見て、何が必要かを知っておくことが大切だと考えています。
その方法として、病院が実施している薬局薬剤師を対象にした研修制度を活用することは良いと思いますが、職員を他施設に出すことは薬局経営に少なからず負担がかかります。そこで、薬局で受け入れた学生実習生が、病院実習に行く際に薬局薬剤師も同伴することにより、薬局薬剤師が病院薬剤師の仕事を知る機会をつくろうと動いているところです。また、大阪府済生会中津病院では以前より服薬情報提供書や吸入指導実施報告書を活用し、薬薬連携を推進されてきたので、弊社ではこれらをさらに活用するための研修会を開催し、薬局薬剤師からも薬薬連携を進めていく機運を高めようと考えています。

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