疥癬の病型分類
疥癬の病型分類
疥癬の病型は臨床症状から通常疥癬と角化型疥癬の二つに大別されます。寄生するダニの種類はどちらも同じヒゼンダニですが、寄生数に違いがあります。通常疥癬では重症の場合でも1人の患者さんに1000匹程度ですが、角化型疥癬では100万~200万匹、時に500万~1000万匹ともいわれる程の多数のヒゼンダニが寄生します。宿主が健康体であれば通常疥癬になりますが、免疫力が低下している場合には角化型疥癬になります。
また、通常疥癬では寄生数が少ないため感染力はそれほど強くないですが、角化型疥癬では寄生数が多く、きわめて強い感染力を有します。そのため、角化型疥癬では個室隔離などが必要になります。発症頻度は通常疥癬が大多数で、角化型疥癬はまれですが、高齢者などでは通常疥癬と角化型疥癬の中間状態のこともあります。
通常疥癬 | 角化型疥癬 | |
---|---|---|
寄生数 | 1000匹以下 | 100万~200万匹 |
宿主の免疫力 | 正常 | 低下 |
感染力 | 弱い | 強い |
主な症状 | 丘疹、結節 | 角質層増殖 |
かゆみ | 強い | 不定 |
発症部位 | 頭部以外の全身 | 全身 |
通常疥癬について
感染後、約1~2ヵ月の潜伏期間をおいて発症します。きわめて強いかゆみを伴い、皮膚症状は丘疹、結節、疥癬トンネルがあげられます。特に疥癬トンネルは疥癬だけに見られる特有なものです。


写真提供: 九段坂病院 皮膚科 大滝倫子先生
角化型疥癬について
高齢で体が弱っている、重症感染症や悪性腫瘍などの基礎疾患がある、ステロイド薬や免疫抑制薬を投与されているなどの理由で免疫能が低下している人にヒゼンダニが感染することで発症します。ステロイド外用薬の使用により、通常疥癬から角化型疥癬に移行することもあります。手や体の骨ばったところや摩擦を受けやすい部位の皮膚に厚く増殖して、灰色から黄白色の垢がつくのが特徴です。通常疥癬では頸部から上には寄生しませんが、角化型疥癬では頭部や頸部、耳介(耳たぶ)にも症状が出ます。激しいかゆみを感じる場合とまったくかゆみを感じない場合があります。
角化型疥癬の中には、症状が爪のみに限局された爪疥癬もあります。爪白癬と似た症状を呈し、診断が難しいため、治療が遅れることが多く、集団発生の原因となることがありますので注意が必要です。



写真提供: 九段坂病院 皮膚科 大滝倫子先生
角化型疥癬が疑われる症状
- 角質層増殖が特徴である
- 手や足に増殖した角質層からの落屑が著明
- 痒みはない場合もある
- 紅皮症、爪白癬に類似することもある
- ステロイド外用薬の使用により悪化が認められる
-
角化部位の拡大像 記事/インライン画像動画提供: 赤穂市民病院 皮膚科 和田康夫先生