酒さの疫学
酒さの疫学
- 酒さの正確な有病率と発生率は不明ですが、一般的な慢性炎症性皮膚疾患であり、主に30歳代以降の女性に影響を与えています1)。
- 酒さの病因の詳細は解明されていませんが、神経血管シグナル伝達の異常や自然免疫系の調節不全、ニキビダニやヘリコバクター・ピロリ等の微生物叢との関連が提唱されています1)。従来の環境要因としては、紫外線暴露、寒さ、熱、アルコール、身体活動などがあります1)。
- 酒さの国際的な有病率*は、一般成人で5.46%、皮膚科外来患者で2.39%と推計されています1)。有病率の性差は女性5.41%、男性3.90%で、患者の大半は45~60歳でした1)。
*32試験、41集団(ヨーロッパ22、アフリカ3、アジア4、北米9、南米3)の26,519,836例を対象としたメタ解析1)
- 中国や東南アジア諸国の有病率は0.97**〜10.6%と推計されています2)。酒さは、肌の色が薄い人に比べ濃い人で報告される頻度は低いですが、珍しい疾患ではありません。色の濃い皮膚では紅斑や毛細血管拡張を識別することが難しいため、酒さは過少診断されている可能性があります2)。
**対象年齢:12-20歳
- 日本における酒さ・酒さ様皮膚炎の有病率は、67,448人の皮膚科患者を対象とした縦断研究で0.22%と推計されています3)。好発年齢は30~50歳代で、女性に多い傾向があります4)。日本人酒さ患者130人を対象とした無作為化第Ⅲ相臨床試験のベースラインデータでは、多くの患者は40~50歳で(41.5%)、酒さの平均発症年齢は43.8歳、平均罹患期間は4.7年でした4)。
- Gether L, et al. Br J Dermatol. 179 (2):282-289, 2018
- Alexis AF, et al. J Am Acad Dermatol. 80 (6):1722-1729, 2019
- Furue M, et al. J Dermatol. 38:310–320, 2011
- Yamasaki K, Miyachi Y. J Dermatol.49:1221–1227, 2022