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原発性腋窩多汗症に対するラピフォートワイプ2.5%の多角的な評価


原発性腋窩多汗症に対する
ラピフォートワイプ2.5%の多角的な評価

多汗症患者さんは汗の量に加え、日常生活で様々なことに困って受診されており、患者さんごとに重症度やお悩みは異なります。そこで、治療開始後の早期改善度を詳細に評価できる「Braking score」や個々のお悩みを確認できる「困りごとチェック項目」を用いて臨床的効果を多角的に評価することを検討しました。

監修
医療法人すばる会 理事長
菅井皮膚科パークサイドクリニック 院長菅井 順一先生

試験概要

目的
原発性腋窩多汗症患者におけるラピフォートワイプ2.5%の早期の効果をHDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale:多汗症重症度判定指標)を用いて評価する。また、Braking score、困りごとチェック項目を用いてラピフォートワイプ2.5%の臨床効果を評価するとともに、評価方法の有用性を検討する。
試験
デザイン
単施設、後ろ向き観察研究
対象
2022年5月1日から2023年1月31日に菅井皮膚科パークサイドクリニック(以下、当院)を受診した原発性腋窩多汗症患者のうち、ラピフォートワイプ2.5%による治療を行った13~69歳の患者19例(男性9例、女性10例)。
有効性評価項目:HDSS、Braking score:16例、困りごとチェック項目12例、その他の評価項目:19例 安全性評価項目:19例
有効性
評価項目
HDSS、Braking score、困りごとチェック項目
その他の
評価項目
治療継続率
安全性
評価項目
副作用
投与方法
ラピフォートワイプ2.5%を1日1回、1包に封入されている不織布1枚を用いて薬液を両腋窩に塗布した。
解析計画
HDSS、Braking scoreはWilcoxon符号付順位和検定後にBonferroni補正を行い投与前と比較した(有意水準:0.001)。
困りごとチェック項目はWilcoxon符号付順位和検定を用いて投与前と比較した(有意水準:0.01)。
治療継続率は、診療録をもとにラピフォートワイブ2.5%を処方された回数を確認し、処方された回数ごとの割合を算出した。
安全性はBraking scoreを用いて副作用の発現を確認した。

本試験におけるLimitation

Braking scoreおよび困りごとチェック項目は学会などで検討のうえ承認された指標ではなく、また、本研究は単施設・単群での研究であるため、データの正当性や他剤との比較および地域的な環境による影響を考察するには限界がある。

HDSSの変化

投与前、投与1週後および2週後のすべての評価時点でHDSSスコアを聴取できた16例のデータを集計した。HDSSスコアは投与1週後で1.4、2週後で1.3と、投与前の3.2と比べ有意に低下した[p<0.001、名目上のp値、Wilcoxon符号付順位和検定(Bonferroni補正)]。

HDSSとは

原発性局所多汗症の重症度を自覚症状により4段階で分類する指標で、患者さんが1〜4の状態のうち、もっとも当てはまるものを選択する。

HDSS1
汗:全く気づかない
日常生活:全く支障がない
HDSS2
汗:我慢できる
日常生活:たまに支障がある
HDSS3
汗:ほぼ我慢できない
日常生活:しばしば支障がある
HDSS4
汗:耐えがたい
日常生活:常に支障がある

Strutton DR. et al.:J Am Acad Dermatol. 51(2):241-248, 2004

n=16
平均値±標準偏差 *:p<0.001(vs.投与前)、名目上のp値
Wilcoxon符号付順位和検定(Bonferroni補正)

Braking score

Braking scoreとは

当院が作成したスケールで、投与後の早期改善度および副作用について、患者さん自身が毎日記録したデータをもとに評価する。改善度は投与前のスコアを10として、13日目まで毎日その日のスコアを1~10、10以上の11段階で評価する。

Braking scoreの推移

Braking scoreは投与前10.0と比較して投与1日後から5.9と有意に低下し、13日後まで有意な差が認められた[p<0.001、名目上のp値、 Wilcoxon符号付順位和検定(Bonferroni補正)]。

n=16
平均値±標準偏差
*:p<0.001(vs.投与前)、名目上のp値
Wilcoxon符号付順位和検定(Bonferroni補正)

投与前と比較して、HDSSは投与1週後、Braking scoreは投与1日後から有意差が認められました。早期からの効果に期待できると、患者さんは治療のモチベーションが上がりますね。

困りごとチェック項目

困りごとチェック項目とは

2017年のKamudoniの報告1)をもとに作成された、多汗症患者の悩みごとを集約した6つのチェック項目からなるスケールで、患者の治療満足度を確認することができる。「0:全く悩んでいない」〜「10:とても悩んでいる」の11段階で評価する。

本チェック項目は学会などで承認された指標ではないが、藤本智子先生(池袋西口ふくろう皮膚科クリニック)らを中心に、2022年4月10日にマルホ株式会社主催で開催された多汗症のエキスパート医師17名が集まったワークショップで、原発性腋窩多汗症の治療薬の改善度を把握する指標としてコンセンサスを得ている。

1)Kamudoni P. et al.:Health Qual Life Outcomes. 15(1):121, 2017
  1. 汗の量が気になる
  2. 汗が原因で恥ずかしい思いをする
  3. 脇汗の対処に時間・費用がかかる
  4. 汗が原因で服の色・素材・デザインなどを気にしなければならない
  5. 汗が原因で人前に出ることや、人との交流をためらう
  6. 汗が原因で仕事や勉強の効率が落ちる

●各項目について治療前後の状態を11段階で評価

困りごとチェック項目の変化

投与前の平均スコアは「汗の量が気になる」が8.2、「汗が原因で服の色・素材・デザインなどを気にしなければならない」が8.1と特に高い結果であった。投与約8週後ではすべての項目において、投与前と比較して有意な低下が認められた(p<0.01、名目上のp値、Wilcoxon符号付順位和検定)。

投与前約8週後
n=12 *:p<0.01(vs.投与前)、名目上のp値 Wilcoxon符号付順位和検定

患者さんごとに悩みは様々ですが、どれも有意に低下していますね。個々のお悩みを患者さんと話し合いながら診療を進めていきましょう。

ラピフォートワイプ2.5%の
処方回数による治療継続率

処方回数による治療継続率は、2回および3回が89.5%、5回以上では68.4%であった。

継続処
方回数
1回 2回 3回 4回 5回以上
継続率 100% 89.5% 89.5% 73.7% 68.4%

n=19

処方回数に基づく継続率には、有効性、1回使い切りの製剤の簡便性、シート剤という馴染みのある剤形が寄与している可能性があると考えています。一般に多汗症による日常生活への影響や悩みは、発汗量そのものに比べて改善に時間がかかる傾向にあるため、継続率は薬剤選択の指標のひとつになり得るのではないでしょうか。

副作用

副作用情報を収集した19例のうち、朝に塗布して羞明が発現した症例が1例(5.3%)に認められた。

患者さんに早期から効果を実感して個々の悩みを解消し、治療に満足いただくためには、投与後の詳細な経過を多角的に評価できるようになることが有用であると考えます。

菅井 順一ほか:新薬と臨牀. 73(7):655-665,2024より一部改編。
利益相反:著者はマルホ株式会社より講演料を受領している

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