2.薬剤師が知っておくべき強力ポステリザンの特性
強力ポステリザンは、販売されてから半世紀以上過ぎていますが、痔疾患治療剤の中で今なお使用されています。薬剤師の先生方も、強力ポステリザンの特徴を今一度整理してみませんか?
薬効薬理の全体像(イメージ図)
①大腸菌死菌浮遊液
大腸菌死菌浮遊液とは
1922年に大腸菌死菌浮遊液による生菌増殖抑制作用および溶菌(菌数減少)が確認され、大腸菌ワクチンの局所作用の考え方に基づき、痔疾患へ応用されました。
作用機序(イメージ図)

大腸菌死菌浮遊液は肉芽形成を促進させることにより創傷治癒促進作用を示します。

大腸菌死菌浮遊液は局所に白血球を遊走させることにより局所感染防御作用を示します。
創傷治癒促進作用(ラット)

【試験概要】ラット背部に皮膚切開を加え、中央部を1針縫合後、大腸菌死菌浮遊液を1日2回6日間滴下しました。6日目に皮膚切片を採取し、創の癒着力(張力)を測定しました。対照には生理食塩液を用いました。
- 大腸菌死菌浮遊液群は創の癒着力の増強を示し、創傷治癒促進作用を有することが認められました。
この創傷治癒は肉芽形成促進作用によるものであると考えられています。
肉芽形成促進作用(ラット)

【試験概要】ラット背部より皮下に、各検液0.1mLを浸漬させたCotton Pelletを左右各1個に埋没させました。埋没7日目にpellet周囲に新生した肉芽を乾燥重量として測定しました。対照には0.5%CMC生理食塩液を用いました。
- 大腸菌死菌浮遊液群各用量とも対照に比し有意な肉芽形成促進が認められました。
局所感染防御作用(マウス)

【試験概要】マウス背部に各検液を皮内投与し、3時間後生菌攻撃を行いました。その生菌攻撃後1、2、5日目に皮膚反応と皮膚炎症面積を測定しました。
- 大腸菌死菌浮遊液原液3濃度は、対照(生理食塩液)と比して生菌攻撃後1日目より有意な炎症面積の縮小がみられ、以後5日目まで持続しました。
白血球遊走能促進作用(in vitro )

【試験概要】青木らの考案した装置を用い、Boyden法に準じて大腸菌死菌浮遊液のin vitro における白血球の遊走能について検討しました。対照にはHanks液を用いました。
- 多核白血球の遊走活性を遊走細胞数を指標にして、大腸菌死菌浮遊液群2濃度の遊走能をHanks液を対照に検討した結果です。大腸菌死菌浮遊液群には明らかな白血球遊走活性が認められました。
その他の薬理作用(in vitro およびin vivo )
大腸菌死菌浮遊液群は、TNF-αやIL-12を誘導することで感染防御と創傷治癒を発現すると考えられました。
瀧口邦雄ほか:Biotherapy 15(3):375-377、May 、2001.② ヒドロコルチゾン
ヒドロコルチゾンとは
薬効 | 一般名 | 製品名 |
---|---|---|
ストロンゲスト (Ⅰ群) |
クロベタゾールプロピオン酸エステル | デルモベート軟膏0.05%、デルモベートクリーム0.05%、デルモベートスカルプローション0.05% |
ジフロラゾン酢酸エステル | ダイアコート軟膏0.05%、ダイアコートクリーム0.05% | |
ベリーストロング (Ⅱ群) |
モメタゾンフランカルボン酸エステル | フルメタ軟膏、フルメタクリーム、フルメタローション |
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル | アンテベート軟膏0.05%、アンテベートクリーム0.05%、アンテベートローション0.05% | |
フルオシノニド | トプシム軟膏0.05%、トプシムクリーム0.05%、トプシムEクリーム0.05%、トプシムローション0.05%、トプシムスプレー0.0143% | |
ベタメタゾンジプロピオン酸エステル | リンデロン-DP軟膏、リンデロン-DPクリーム、リンデロン-DPゾル | |
ジフルプレドナート | マイザー軟膏0.05%、マイザークリーム0.05% | |
アムシノニド | ビスダーム軟膏0.1%、ビスダームクリーム0.1% | |
ジフルコルトロン吉草酸エステル | テクスメテン軟膏0.1%、テクスメテンユニバーサルクリーム0.1%、ネリプロクト軟膏、ネリプロクト坐剤、ネリゾナ軟膏0.1%、ネリゾナユニバーサルクリーム0.1%、ネリゾナクリーム0.1%、ネリゾナソリューション0.1% | |
酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン | パンデル軟膏0.1%、パンデルクリーム0.1%、パンデルローション0.1% | |
ストロング (Ⅲ群) |
テプロドンプロピオン酸エステル | エクラー軟膏0.3%、エクラークリーム0.3%、エクラーローション0.3% |
デキサメタゾンプロピオン酸エステル | メサデルム軟膏0.1%、メサデルムクリーム0.1%、メサデルムローション0.1% | |
デキサメタゾン吉草酸エステル | ボアラ軟膏0.12%、ボアラクリーム0.12% | |
ベタメタゾン吉草酸エステル | ベトネベート軟膏0.12%、ベトネベートクリーム0.12%、リンデロン-V軟膏0.12%、リンデロン-Vクリーム0.12%、リンデロン-Vローション | |
フルオシノロンアセトニド | フルコート軟膏0.025%、フルコートクリーム0.025%、フルコート外用液0.01%、フルコートスプレー0.007% | |
ミディアム (Ⅳ群) |
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル | リドメックスコーワ軟膏0.3%、リドメックスコーワクリーム0.3%、リドメックスコーワローション0.3% |
トリアムシノロンアセトニド | レダコート軟膏0.1%、レダコートクリーム0.1% | |
アルクロメタゾンプロピオン酸エステル | アルメタ軟膏 | |
クロベタゾン酪酸エステル | キンダベート軟膏0.05% | |
ヒドロコルチゾン酪酸エステル | ロコイド軟膏0.1%、ロコイドクリーム0.1% | |
デキサメタゾン | グリメサゾン軟膏、オイラゾンクリーム0.05%、オイラゾンクリーム0.1% | |
ウィーク (Ⅴ群) |
プレドニゾロン | プレドニゾロン軟膏、プレドニゾロンクリーム |
ヒドロコルチゾン | オイラックスHクリーム、テラ・コートリル軟膏 |
強力ポステリザンに含有されているヒドロコルチゾンは「弱い(ウィーク;Ⅴ群)」部類のステロイドです。
上記のランク表を参考にして、個々の患者の炎症の重症度に見合ったランクの薬剤を適切に選択し、使用することが重要です。
作用機序(イメージ図)

ヒドロコルチゾンの有する抗炎症作用により、腫脹、そう痒、疼痛を改善することが期待できます。
抗炎症作用(ラット)
- 血管透過性に対する作用
- 熱炎症に対する作用
- 急性足蹠浮腫に対する作用
- 持続性足蹠浮腫に対する作用
- CMC嚢胞に及ぼす作用
ヒドロコルチゾンは、血管透過性亢進抑制、熱炎症抑制、浮腫抑制等の抗炎症作用を有しています。
①大腸菌死菌浮遊液 + ②ヒドロコルチゾン
肛門内圧低下作用(ラット)

【試験概要】プラセボおよび大腸菌死菌浮遊液+ヒドロコルチゾンをラットの肛門に塗布(160mg/kg)し、塗布4時間後に肛門内圧を測定しました。各ラットの塗布前(0時間)を100%として、ピーク数*を計測しました。
*ピーク数:ラットの肛門内にバルーンを挿入し、20mmH2O以上のピーク数を計測しました。
- 大腸菌死菌浮遊液+ヒドロコルチゾン群では、肛門内圧の低下作用が認められました。内因性の一酸化窒素産生により内肛門括約筋が弛緩した結果、肛門内圧が低下したと考えられます。裂肛では、通常肛門括約筋が緊張して肛門内圧が高くなっており、その内圧が高くなるほどますます切れやすくなります。本肛門内圧低下作用は裂肛にも本剤が有効であることを示唆しています。
このように、強力ポステリザンの局所感染防御作用、肉芽形成促進作用および抗炎症作用は、大腸菌死菌浮遊液およびヒドロコルチゾンの協力作用に基づくものと考えられています(ラット、マウス)。

③容器の特性
使用時の課題


痔の治療に軟膏を使用する際、患者さんや医療関係者から上記のような問題点が挙がっていました。
そこで強力ポステリザンは、次のような改善を行いました。
強力ポステリザンの容器の特性
主な特性は以下の通りです。

- 先端の丸み
挿入部の先端が丸いため、患部を傷めず、かつ患部への刺激を抑え、挿入しやすくしています。 - 適度な長さ(2.4cm)
長すぎると肛門の奥を傷つける恐れがあり、短すぎると薬剤が内痔核に届きません。そこで、有効成分の効果を最大化するために、薬剤が内痔核に届く長さ(歯状線付近)に設計されています。 - 挿入部の細さ
挿入部は坐薬より細く、患部への刺激や違和感を抑えるとともに挿入しやすくしています。 - その他
扁平な胴体部: 軟膏を押し出しやすくなっています。
フリーオープン式キャップ:左右どちらに回しても軽い力で簡単に穴が開きます。
坐薬よりも簡便に使用可能:挿入しやすくなっています。
容器に関する利便性は以下の通りです。

- 使い捨てのチューブタイプ
コンタミネーションのリスクを考慮した容器設計です。

- 室温保存が可能
薬剤の保管・管理に配慮した製剤設計です。

- 手が汚れにくい
衛生面にも配慮した容器設計です。

- 1回量が明確
毎回、適切な量の塗布が可能です。

- 持ち運び可能
自宅外でも使用できます。また、添加物のフェノールが持つ臭いができるだけ外に漏れないように、チューブが入っている外装のビニルは3層構造となっています。
- 薬剤師の皆さまへ-再チェック!痔と強力ポステリザン
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- 1.薬剤師が知っておくべき痔の診断と治療
- 2.薬剤師が知っておくべき強力ポステリザンの特性