1.薬剤師が知っておくべき痔の診断と治療
痔の患者さんの治療薬として、強力ポステリザンが処方された場合、患者さんに適正使用を指導される際に役立つ痔の基本的な治療法と強力ポステリザンの基本特性をご紹介します。
痔の診断(関連情報)
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3大肛門疾患(痔核、裂肛、痔瘻)のうち、痔核、裂肛の2疾患は保存的治療の対象であり、薬剤師の先生方が最も多く遭遇する患者さんの病型といえます。
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辻 順行ほか:日本大腸肛門病会誌 66: 479-491、2013より作図
内外痔核および裂肛の患者さんはそれぞれ83.3%(2849例)、91.2%(1236例)が保存療法(手術をしない)を受けていました。
痔の基本的治療法
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基本的な治療方針として保存的治療は、内痔核の臨床病期分類に関わらず、共通な治療法となっています。
保存的治療は、
①生活指導(療法)
②薬物療法:外用薬(注入式軟膏、坐薬など)および内服薬
から構成されています。
生活指導
ここでは生活指導を排便指導、その他の2つに分けて紹介します。
<排便指導>
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排便のために腹圧をかけていきんでも恥骨直腸筋が全然動かない方、逆に筋肉が締まるため、いくら踏ん張っても便が出ない方は、前傾姿勢で排便が容易になるといわれています 。
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- 適切だと思われる前傾姿勢は「考える人」のポーズです。体をまっすぐにして座り、じわじわと前の方に倒します。
排便指導としてはその他に、- 長時間の排便を避け、過度に力まない
- 無理に出し切ろうとしないようにする
- 便意があったら我慢せずトイレに行く
- 排便時間は5分以内をめどにする
- 座浴、温水洗浄式便座(弱い水圧)でおしりを洗う
- 軽くおしりを拭く
- が挙げられます。
<その他の生活指導>
排便指導以外にも以下のように日常生活で留意することがあります。
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- 長時間の座位を避ける
- 寒冷下の作業を避ける
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- 十分な水分と食物繊維を摂取する
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- 入浴により、清潔を保つ
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- 飲酒を避ける
- 肉体的・精神的ストレスを避ける
薬物療法
痔核、裂肛の薬物療法は、疾患の特性上、局所塗布/注入が有効ですので、外用剤(注入式軟膏、坐薬など)の使用が中心となります。
(保存的治療では注射は除きます)
痔疾患で発現する主な症状に使用される薬剤は以下の通りです。
- 痛み
- :排便時の鋭い痛みやいてもたってもいられない痛みは局所麻酔薬、副腎皮質ステロイド薬を、慢性化して鈍い痛みには非ステロイド性抗炎症薬が使用されます。
- 出血
- :少量の場合は収斂薬、血管強化薬が、大量の場合は収斂薬、血管強化薬、血管収縮薬が使用されます。大量の出血により貧血状態になった場合は貧血治療薬が使用されます。
- 腫れ
- :肛門周辺の腫れに対しては抗炎症薬が使用されます。発熱している場合は、抗菌薬、殺菌薬が使用されます。
- かゆみ
- :抗ヒスタミン薬が使用されます。かゆみの原因となっている肛門周辺の皮膚炎や湿疹の治療には、副腎皮質ステロイド薬が使用されます(膿んでいる時は使用されません)。
- その他
- :便秘や下痢を避けるために整腸薬、下剤が使用されます。
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痔核・裂肛に対する処方の実例を紹介します。
情報提供:所沢肛門病院 栗原 浩幸 先生- 薬剤師の皆さまへ-再チェック!痔と強力ポステリザン
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- 1.薬剤師が知っておくべき痔の診断と治療
- 2.薬剤師が知っておくべき強力ポステリザンの特性