メインコンテンツに移動

第1回:在宅医療の薬学的課題解決で医師・看護師の信頼構築


    医療機関・多職種と他社薬局とも連携し地域在宅・看取りを支える(全3回)

    山下 貴弘 氏
    株式会社ファーマシィ/運営二部部長
    三上 頌太 氏
    ファーマシィ薬局すこやか/管理薬剤師

    第1回:在宅医療の薬学的課題解決で医師・看護師の信頼構築

    ファーマシィが出雲市内で在宅医療への対応に踏み出したのは2008年です。山下氏が中心となり、地域の医師や訪問看護師に対して、在宅医療における薬局機能への理解と在宅医療における薬剤師職能の必要性を根気強く伝えました。しかし、薬剤師が在宅医療に介入する価値はすぐには理解されず、連携体制の構築は容易ではありませんでした。状況を変えたきっかけの一つは、訪問看護師から依頼された便秘治療薬の粉砕でした。山下氏は依頼内容に違和感を覚え、実際に患者宅を訪ねました。胃婁の患者でありチューブに詰まらないよう投与することが目的であり、薬剤の剤形、特性を説明し医師への処方変更を提案しました。このような薬学的課題解決の事例を重ねて、医師や訪問看護師からの信頼関係を構築し、現在に至っています。第1回目は山下氏が在宅医療を推進し、後の「出雲モデル」へとつながる黎明期の取り組みについて伺いました。

    高齢化を見据え全薬剤師が担う覚悟で在宅業務に注力

    記事/インライン画像
    株式会社ファーマシィ(広島県福山市)運営二部部長 山下 貴弘(やました たかひろ)氏
    株式会社ファーマシィ 山下 貴弘 氏

    山下:私は、大学を卒業した2003年に直ぐ株式会社ファーマシィに入社し、広島県、岡山県の複数店舗を経験しましたのち、2006年に山陰地方第1号店を出雲市内に開局しました。その後は、毎年1、2店舗を開局していきました。当時も薬剤師不足でしたので、外来対応に追われ、在宅医療に取り組む薬局は皆無でした。一方で、高齢化が着実に進みつつあり、これからは薬局に通えなくなる人がより多く生じてくる、薬局が在宅業務に目を向ける必要があると思いました。そこで2008年に、「在宅は特別な業務ではなく、薬局に通えない患者を支える外来業務と同じ当たり前の薬局業務」と位置づけ、「市内の弊社全店舗・全薬剤師が在宅を担う」という覚悟を決めて、在宅業務に踏み出しました。現在、市内の18店舗全てが在宅業務に携わっています。

    在宅医療は多職種連携が大切ですので、初めに訪問看護ステーションに出向き薬局機能と薬剤師の役割を訴えたのですが、当時の一部負担金が約500円でしたので、何度も訪問看護師から「500円も出すくらいなら、私たちが持っていくわよ」と言われ、薬剤師の介入価値は理解されませんでした。それでも諦めずに医療機関や訪問看護師に資料を持って説明に行き、熱意も伝わったのか、数件担当させてもらえました。

    その頃のことで鮮明に覚えているのは、ある訪問看護師が便秘治療薬を持って来て、「溶けにくくて詰まるので、粉砕してほしい」と言うのです。その依頼に違和感をもち、直ぐに患者宅に行くと胃婁とチューブを用いて栄養と薬剤を投与している状態で、その意味は直ぐに理解できました。その薬剤は散剤も複数種あるのですがそのほとんどが溶け難い特徴がありチューブに詰まりやすい。その対応としてわざわざ錠剤を粉砕することを思ったようです。ただその複数種の中には解けやすいものも実は存在しました。同じ成分でもメーカーによって特徴が違ったので、その説明が必要だと判断し、医師に薬剤の特徴と処方変更の提案をおこないました。薬剤師は患者状態に合わせた最適な薬剤を検討でき、処方内容を医師に提案できることを説明すると、「じゃあ、関わってもらいたい」となりました。その他にも在宅現場には、さまざまな問題があり、医師と看護師の間に入って課題解決に取り組みました。最初の入口が、いわゆる薬の配達ではなく、薬剤の課題解決、医師との懸け橋という切り口で薬剤師の価値を示すことができたので、その後の多職種連携の構築に良い影響を与えたのだと思います。

    また、医師からも喜ばれました。看護師は患者・家族に寄り添う素晴らしい方が多くおられます。故に、時にご家族の思いを重視しすぎた意見が医師にとって課題と感じられることがありました。例えばちょっとした体調変化の度に薬剤の副作用ではないかと繰り返し医師に確認してくださるケースがあまりに高頻度で課題になることもありました。薬剤師が居宅療養管理指導を通じて在宅医療に介入し、患者・家族や訪問看護師の気持ちも汲み取りながら、薬学的視点を交えて医師に薬剤師としての交通整理した内容を伝え、処方の妥当性や剤形選択の改善に寄与することで、次第に薬剤師の価値が地域に認識されていったのだと思います。

    在宅看取りへの対応を念頭に「出雲モデル」を構築・普及

    山下:出雲市での初出店から10年が経ち8店舗まで増えた頃、10周年企画として地域への感謝を込めて恩返しがしたいと考え、高齢者への講話会など地域講座や健康測定会を開きました。1年間で3,000人を超える市民の方に参加いただくなど、地域活動に力を入れました。地域活動により一層力を入れる中で、在宅業務も広がってきたのですが、「いま行っている在宅業務の先に何があるか」を考えたときに、がん治療にかかわる看取りへの対応が課題として挙がりました。それまで緩和ケア病棟など病院で看取られるのが出雲市でも一般的でしたが、在宅での緩和ケア、看取りができる体制づくりが必要だと考えました。そこで無菌調剤室を設置し、在宅緩和ケアの受け皿の一端を担おうという流れになりました。

    しかし、地域のクリニックには緩和ケアのための麻薬注射剤、PCAポンプ機器の利活用にかかわる処方を出してくださる医師はおりませんでした。われわれも無菌調剤のノウハウがなかったので、島根大学病院に研修の受け入れをお願いしました。それが縁で、大学病院との連携は深まっていきました。また、在宅医療を担っている医師には、私たちが、緩和ケアに必要な処方箋の書き方やレセプト対応のポイントなどレクチャーしてまわりました。その活動から訪問診療を対応する医師との連携は深まったのだと思います。さらに、もう一つの地域基幹病院の島根県立中央病院とも連携を進めながら「出雲モデル」を構築していきました。

    記事/インライン画像
    出雲モデル

    出雲モデルの定義は、「医療用麻薬を含む薬物療法が病院から在宅にシームレスに移行できる運用モデル」です。要は病院の緩和ケア病棟と同じことが、在宅でもできるようにしようという取り組みで、地域の酸素業者の協力を得てPCAポンプを24時間レンタルできる仕組みを作ったのが大きな特徴です。また、弊社の無菌調剤設備を他社薬局でも共同利用できる体制も整えました。

    とはいえ訪問診療の医師も看護師もPCAポンプを扱ったことがなかったので、大学病院の先生、保健所や県行政の協力も得て、3年間の業務委託の形で県内ほぼすべての基幹病院及び、在宅の場で緩和ケアにかかわる訪問看護ステーションに私や社内の複数人が出向いて、PCAポンプの使い方などの研修会を開催し、出雲モデル普及に努めました。その頃には三上さんも加わり、ともに活動してくれていました。

    多職種連携のキーパーソン~地域医療を支える薬剤師~ Vol.9
    1. 第1回:在宅医療の薬学的課題解決で医師・看護師の信頼構築

    お問い合わせ

    お問い合わせの内容ごとに
    専用の窓口を設けております。

    各種お問い合わせ

    本サイト上の情報・文書・商標・サービスマーク・意匠・商号・映像や画像など全ての内容にかかる権利は、著作権法および商標法等により保護されています。
    それらの利用は非営利目的かつ個人的利用の場合に限り、複写、ダウンロードまたは印刷を行う範囲で認められます。それ以外の複製・頒布・改変・公衆送信(再利用および転送などを含む)等の目的での使用は認められません。詳細はウェブサイト利用規約│マルホ株式会社にてご確認ください。

    Dermado デルマド 皮膚科学領域のお役立ち会員サイト

    医学賞 マルホ研究賞 | Master of Dermatology(Maruho)

    マルホのサイトがもっと便利に!今すぐマイページをチェック!

    Web会員サービス

    ページトップへ