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第1回:病院薬剤師と連携し周術期の薬剤管理を地域とつなぐ


    行政イベントの企画・運営や薬薬連携など通じ地域包括ケア推進に寄与(全3回)

    安倉 央 氏
    株式会社マスカット薬局(岡山県岡山市)/取締役

    第1回:病院薬剤師と連携し周術期の薬剤管理を地域とつなぐ

    安倉央氏はマスカット薬局に入社後、長く倉敷店薬局長を務めていたこともあり、岡山県薬剤師会倉敷支部(倉敷薬剤師会)理事として、また一部現場に関わりながら同社取締役としても、市民・患者の健康・医療の質向上を念頭に、市行政を含めた多職種連携体制の充実に努めています。近年、地域包括ケアシステムの観点から、周術期医療の安全を確保する上で、術前休薬から術後の休止薬再開まで切れ目のない薬剤管理が求められています。そのためにも病院薬剤師と薬局薬剤師との情報共有、連携体制の重要性が改めて指摘されています。第1回は、周術期の薬剤管理をめぐる薬薬連携の取り組みについて伺います。

    術前休薬の達成と術後再開忘れの防止を目指して活動

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    株式会社マスカット薬局(岡山県岡山市) 取締役 安倉 央(あくら ひろし)氏

    私はマスカット薬局に入社してからは倉敷店の薬局長を長年務めていました。そのなかで倉敷薬剤師会理事としても、医療機関と薬局の薬剤師との薬薬連携活動を進めています。元々、倉敷地域では医療機関と薬局の薬剤師同士のつながりはあり、いわゆる有志の会のような形で病院薬剤師と薬局薬剤師とのネットワークがありました。そのネットワークのなかで今、特に注力している活動は周術期の連携です。倉敷市で約9割の手術を担っている倉敷中央病院、川崎医科大学病院、倉敷成人病センター、倉敷平成病院などの薬剤部長クラスや医療安全管理部の薬剤師、私たち薬局の薬剤師を合わせて15人くらいで毎月1回は会合を開いています。

    そのなかで、術前休薬が適切に行われず手術が延期になるという事例が少なくないこと。逆に、手術が終わって再開すべき薬が再開できずに、再入院になってしまったという事例もあることから、周術期の薬剤管理の在り方が問題視されるようになり、2020年から周術期の安全な薬剤管理を検討してきました。具体的には、まず術前の休薬を達成することと、術後再開忘れがないようにすることです。

    本来、薬剤管理は薬剤師が一番関わらなければいけません。しかし、現場では医師から術前休薬の指示が出されると、看護師が患者との間に入って伝えるという流れになり、病院の中でも薬剤師が絡まないことが少なくなかったのです。また、薬局側では、自分の患者が手術するという情報さえなく、患者自身も薬局では言わないケースもあるため周術期での介入が難しく、それでも薬局薬剤師が何らかの形で周術期医療に関われることは無いかと考えたとき、まずは日頃から患者や関係職種への啓発が重要だということで、そのためのツールをいくつか考案しました。

    周術期の患者・医薬品情報の共有・連携を機に相互理解も深化

    具体的には「周術期に休薬を考慮する薬剤一覧(通称;虎の巻)」の作成です。今の薬局薬剤師は抗血小板薬や抗凝固薬がハイリスク薬だという認識はありますが、ビグアナイド薬やSGLT2阻害薬などの糖尿病薬やエチニルエストラジオールを含む経口避妊薬、選択的エストロゲン受容体モジュレーターなどの骨粗鬆症治療薬なども手術前には休薬を要する薬剤なので、それを一覧表として網羅し、薬剤師の参考になるようにまとめました。

    また、術前を含め患者と一緒に確認できるように早見表も作りました。服薬指導の時に、「○○のお薬を飲んでいますが、この薬は術前に休薬する場合がありますよ」というように確認するための資料です。さらに、お薬手帳の中に入れ込める名刺サイズの「お薬お知らせカード」を作りました。薬剤師以外の関係職種が、そのカードを見たときに、「この患者さんには何か注意が必要だ」と認識できるように、カードには実際の薬剤名、薬局と薬剤師名を書き込める仕様で、これらを地域で広めていこうという活動をしています。そのほかにも薬剤師のレベルアップのための勉強会を定期的に開いています。

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    周術期の連携の流れ
    周術期の連携の流れ
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    お薬お知らせカード
    お薬お知らせカード

    その背景として、既に少し触れましたが、術前の休薬忘れなどで手術が延期あるいは中止になってしまうケースや、ちゃんと休薬はしたものの、全ての服薬を休止してしまい、元々の疾患の治療に支障が出てしまうというケースが見られます。今は、医療機関における手術スケジュールがとてもタイトになってきていますので、不適切な服薬管理が要因となり、手術が中止なることも多く、患者にとっても医療機関側にとっても不利益な状況があります。同じ薬剤師同士、その課題を改善するにはどうすべきかと考え始めたことが、このような周術期の服薬管理の適正化活動を始めた一番の切っ掛けでした。現在、倉敷と玉島、児島地域の3エリアを中心に、その普及に努めています。

    これは薬剤師だけでなく広く関係職種が関わる問題ですので、地域医師会や看護協会、歯科医師会の会合や研修会に私たちが出張して説明するなど、地域全体に根付かせるよう、計画的に活動を進めています。地域の開業医の先生方にとっては、術前休薬のことよりも、術後の投薬再開の方に、より関心が高いようです。最近は術後直ぐの退院というパターンも少なくなく、「まだ出血しているので一時期○○の投薬は止める」という情報を把握できてないことがあります。その際に、薬薬連携により、病院側から薬局側に届いている情報提供文書を見て、主治医の先生に「そろそろ再開の時期です」と情報提供すると、「非常に助かる」という意見が聞かれます。

    また、こういう活動を通じて、薬局から病院に問い合わせが来ることが当たり前になっています。薬局からは病院に入院前の服薬状況や併用薬情報を提供し、病院が術前の持参薬チェックなどに活用しています。手術後には入院中の治療経過・薬剤情報が薬局に送られ、「○○の再開はこの時期からしてください」「○○に処方が変わりました」というように情報共有・連携が活発になり出しました。また、手術に関するトレーシングレポート以外にも、報告できる風土になってきたと思います。以前に増して、病院薬剤師も薬局薬剤師も互いの活動に対する相互理解が深まっていると思います。

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