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第1回:地域医療ニーズを意識し「在宅医療特化型」薬局を開設


    「あさりの会」を企画し在宅医療を担う多職種の地域連携を牽引(全3回)

    小林 篤史 氏
    株式会社佳林 カリン薬局(京都府京都市)/代表取締役

    第1回:地域医療ニーズを意識し「在宅医療特化型」薬局を開設

    小林篤史氏は新型コロナ禍の2022年4月に、京都市下京区に「在宅医療特化型 カリン薬局」を開設しました。周りには病院やクリニックなどはなく、「全ての人が安心して在宅医療を選択できる世の中に」をコンセプトに、この地域の在宅医療はきちんと担うとの思いで24時間365日の体制の下、医療的ケア児を含め、近隣地域の医療ニーズを意識した活動を続けています。第1回では、小林氏の略歴、在宅医療に関わるきっかけやカリン薬局の状況などについて伺います。

    「痛み」の勉強や病院勤務研修など介して“ゼロ”から在宅医療に取り組む

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    株式会社佳林 カリン薬局(京都府京都市) 代表取締役 小林 篤史(こばやし あつし)氏

    私は2001年に大学を卒業後、そのまま九州の戸畑共同病院(北九州市)に2年間務めました。同院は急性期を中心にしつつリハビリテーションにも取り組んでおり、私はどちらかといえばリハビリテーションに軸足を置いて、小倉方面の在宅患者訪問を行っていました。その時、学生時代から取り組んでいたバスケットボールを社会人でも楽しんでいたのですが、練習中にアキレス腱断裂を起こし、病院を退職し、地元の京都に戻り1年間、リハビリ生活を過ごしました。

    その後、2004年、縁あって地元の保険薬局グループに入社し、ゼロから外来調剤に関わりました。しかし、外来調剤では何か働いている充実感を得ることが難しく「自分は薬剤師に向いていない」と自覚する日々でした。一方、介護保険法施行は2000年ですが、当時は、全国的にも薬局薬剤師による在宅患者訪問は進んでいませんでした。

    その当時の勤務地である京都の北部地域で「何か薬剤師として誰にも負けない分野を持つことが必要だ」と考え、「痛み」について勉強したいと思いました。その時、PEACEの研修や医療用麻薬を知り、当時の会社に無理を言って病院実地研修を希望し、終末期医療に関わらせて頂きました。2年間の実地研修を経て「なぜ地域には終末期医療などに関わる機会が無いのか?」と思って考えていた時に“在宅医療”に出会い、その北部地域で在宅医療への取り組みを始められないかと考え、色々な医療機関に相談しました。それが32歳の頃です。

    新型コロナ禍では、守上佳樹先生(よしき往診クリニック)からのお声がけで、2021年2月、「京都府コロナ在宅フォローアップチーム」(後のKISA2隊)の第一陣に加わりました。あの時は誰もコロナに関わりたくなく、また、やりたくなかったと思いますが、それでも京都で搬送困難な新型コロナ患者の在宅死亡例が一例出て、「これ以上、死亡を増やしていけない」と思い、協力させて頂きました。PPE(個人用防護具)なども知らない状態で、行ったことがない家ばかり、また、一度、感染者の家に入ると社員に感染をさせてしまうわけにはいかないと考え薬局には戻らず、車の生活になりましたが、当時の会社の理解もあり「やるしかないんだ・・」という思いで取り組みました。

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    KISA2隊での活動の様子

    その後、会社を辞め、2022年4月にカリン薬局を立ち上げました。カリン薬局のコンセプトは「全ての人が安心して在宅医療を選択できる世の中に」というもので、医療用麻薬、無菌調製による点滴や注射薬に対応しているほか、医療材料や衛生材料の供給にも取り組んでいます。地域の子どもから高齢者まで幅広い医療を担うことができる薬局を目指して活動しています。カリン薬局の近隣には病院やクリニックは無く、外来患者さんは敢えてカリン薬局を選ばなければ対応させてはいただけないという状況です。

    薬剤師が思う理想ではなく、「主語は患者さんが、・・・」の発想が大事

    いまのカリン薬局は、個人在宅と施設在宅とがありますが、2024年10月時点のデータで見ると、担当している在宅患者200人のほとんどが個人宅です。そのほか80床の特別養護老人ホームを一カ所担当しています。外来は70人くらいですので、ほぼ在宅医療に特化しています。とはいえ、カリン薬局が在宅医療をしていることを知らない人は多く、在宅医療そのものを知らない人も大勢います。

    在宅医療の基本的な考え方は、計画的かつ持続的な健康管理を行うことだと考えますが、終末期医療と医療的ケア児の対応や、昨今の災害医療は少し別のように思います。特に災害医療に関しては、内容にもよりますが緊急度が異なります。これからの在宅医療では、このような緊急性の高い患者への対応も求められるようになるでしょう。

    新型コロナ禍を体験し、ロックダウンや医療崩壊することもあり得る世の中になってきています。私たちも常に何ができるか、医療の限界と方向性、ニーズの変化を確かめながら進んでいく必要があります。この地域では、在宅医療の担い手はまだ少なく、カリン薬局としては在宅医療にきちんと一つ一つ対応していくことが最も重要だと考えています。

    在宅をやりたいという多くの薬剤師がいて、「私は、○○をしたいのです」と言っているのを耳にすることがあります。それを否定することはしませんが、自分(薬剤師)がやりたい理想ではなく、患者さんが何を求めているかが大事なことで、それが考えられて、その行動に自らも喜びや感謝ができないと続きませんし、しんどい仕事だと思います。私自身は間違いも多くしますし、分からないことも沢山あります。またやれることも限られています。ただ、今は薬局のスタッフに助けてもらい、主語は「患者さん」になるよう皆で意識して取り組んでいます。

    多職種連携のキーパーソン~地域医療を支える薬剤師~ Vol.6
    1. 第1回:地域医療ニーズを意識し「在宅医療特化型」薬局を開設

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