第1回:在宅業務が時間内に終わる業務体制を少しずつ構築
200を超す医療機関のほか他社薬局の要請も受け在宅医療を推進(全3回)
- 佐々木 剛 氏
- 株式会社ナカジマ薬局(北海道札幌市)/地域連携部課長
第1回:在宅業務が時間内に終わる業務体制を少しずつ構築
佐々木氏がナカジマ薬局に勤務した前年の2015年に、同社では在宅専門の薬局が開設されました。現在、同社では在宅専門4店舗、外来を対応しつつ在宅も専門的に扱う1店舗の合計5店舗を中心に施設在宅、個人宅を満遍なく対応しています。同社では依頼を受けたら断らず、「どうしたら対応できるか考える」をコンセプトにしています。近年は他の薬局から「対応が難しいのでお願いできないか」と相談を受けることが少なくないと言います。外来業務と異なり“終わりがない仕事”になりがちな在宅医療ですが、佐々木氏らは時間をかけ、時間内に終わるよう効率的な業務体制を少しずつ構築してきました。第1回は佐々木氏らの在宅業務、労働環境の改善への取り組みとポイントについて伺います。
一番のポイントは業務を分類し担当者を決めて分担したこと

弊社のコンセプトの一つは地域に根差した薬局づくり、つまり地域密着型となっておりますので、地域における在宅対応は将来的に絶対に必要になると考え、2015年に在宅専門の薬局を開設しました。私が勤め始めた2016年頃は、現在ほど在宅業務が浸透しておらず、多くのことが手探り状態だったと思います。当然、私が入社してからも手探り状態は変わらず、スタッフ一丸となって体制づくりを進めてきました。
当時、在宅業務には大変な時間を要していました。患者さん宅や施設を訪問した後、薬局に戻ってから当日の記録のとりまとめや次の訪問準備と、終わりがないほど仕事がある状況でした。それを今まで時間をかけて、少しずつ綺麗に時間内に終わらせるという目標に向かって整理してきました。
その一番のポイントは、業務の分類を行い、担当者ごとにきちんと分担することです。最初は、一つの業務を皆が一斉にするというイメージでしたが、例えば内勤のAさんは○○をする、外勤は各施設や個人在宅の担当を決め、それぞれ誰が何をするかという役割を明確化することで、それぞれの業務に終わりが見えるようになりました。それが一番大きな変革だったと思います。
施設担当と予定が組みづらい個人宅担当とを分けた体制を構築
在宅医療は大まかに施設在宅と個人宅とがありますが、特に個人宅の場合は訪問診療の日程がずれ込みやすく、予定が組み難い状況にあります。私たちの薬局では緩和医療の依頼割合が多いため、それがより顕著なのかもしれません。加えて、終末期の場合、急変時の緊急対応を多く求められます。
病院に入院している場合、多くの職種が患者さんの状態を随時確認しておりますが、在宅現場には医療従事者等がいつもいるわけではなく、訪問した人がしっかり患者さんの状態をチェックしなければいけません。特に緩和医療の患者さんでは痛みの状態や輸液に関わるトラブル等の確認など、相応の時間を要します。そのため、一日で訪問できる患者さんの人数も限られてきます。そこで、施設在宅担当と個人宅担当とを分けることとしました。
当初から施設在宅の担当者は決めていて、個人宅対応の要請が入った場合には、その業務の流れで対応する形をとっていました。それを原則として施設担当と個人宅担当とを分けました。施設担当者はある程度、同じ時間内に薬局に戻ってくることができます。一方、個人宅担当は通常フリー状態にし、空いている時間は内勤をしてもらうことで、臨機応変な対応が可能となり、業務の効率が向上したと考えております。
薬局・薬剤師が在宅医療で何ができるか知ってもらうことが大切
患者さんの紹介先や連携先は多様です。良く連携している病院からの依頼以外でも、病院のソーシャルワーカーや地域のケアマネージャー、同業他社などご依頼先はさまざまです。
他の薬局からのご依頼・ご相談の一つとしては、対応が難しい患者さんのケースがあります。緩和医療の場合、土日・祝日・夜間に臨時処方が出るケースも多く、その体制が取れないことがあります。また、受け入れキャパシティをオーバーしている場合もあります。いずれにしても、日頃から薬局間でコミュニケーションがとれる関係性があるから、ご相談いただけていると感じております。
現在、私自身は管理側の立場となっておりますので現場にて業務に従事することは少ないですが、「ナカジマ薬局の在宅は良いね」と言われることが喜びです。そのため、外部での情報発信や多職種交流に力を入れております。例えば、私自身は地域講演や学生向け講義などのご依頼を受けておりますが、これは地域医療における薬局の役割についてお話しする機会として大切にさせていただいております。そこでナカジマ薬局について知ってもらうことも大切なことではありますが、何よりも保険薬局薬剤師という存在が在宅医療で何ができるかを知ってもらうことが大切なことだと考えております。
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