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原発性腋窩多汗症 診療のいろは その2


    監修:
    • 愛知医科大学 皮膚科学講座 特任教授 大嶋 雄一郎 先生

    原発性腋窩多汗症の治療を始めるに当たっては、
    治療ゴールを明確にして先生と患者さんとの間で共有しておくことや、
    処方する薬剤の安全性について適切に説明することが大切です。

    また、保険適用の外用薬を処方する場合は、保険上の注意点もあります。
    今回は以上の点について、分かりやすくポイントを紹介します。

    原発性腋窩多汗症は高額な治療・痛みを伴う治療をイメージする患者さんは少なくありません。

    インターネット調査の結果から、「脇汗治療は、お金がかかるので受診していない」と、考えている方は多いようです1)。また、原発性腋窩多汗症の患者さんを対象とした調査によると、病院・クリニックを受診した理由として「(市販薬などより)治療効果が高いと思った」方が80%以上でした。一方で、どのような治療が行われるかについては、全体の1/3の方が、手術や注射など痛みを伴う治療法をイメージしていました。
    外用薬が保険適用になったのは2020年以降ですから、「医療用の塗り薬で治療できる」ということをご存じない患者さんも少なくないようです。治療を始めるに当たっては、1日1回脇に塗るだけの治療法があることをお話しし、まずは、患者さんの不安を取り除いてあげるのはいかがでしょうか?

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    目の前の患者さんも、原発性腋窩多汗症に悩んでいらっしゃるかもしれません。

    悩みを心のうちに秘めている原発性腋窩多汗症患者さんに、多くの先生から、治療の手を差し伸べていただきたいと考えています。しかし、悩んでいてもどこで治療ができるか分からず言い出せない患者さんが全国には数多くいらっしゃいます。 ポスターや小冊子の掲示などによって、患者さんが原発性腋窩多汗症について、相談しやすい環境作りを行ってみるのはいかがでしょうか? 相談しやすい環境づくりをすることにより、「実は以前から悩んでいた脇汗の治療をしてみたいです。」とおっしゃる患者さんを救うことができるかもしれません。

    小冊子
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    ポスター
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    患者さんとの認識合わせ:治療ゴールの設定は重要です。

    原発性腋窩多汗症治療の相談を受けた患者さんと治療に取り組むにあたり、治療ゴールを設定することは重要です。原発性腋窩多汗症の治療ゴールは「日常生活で発汗が起こらないように、常にコントロールすること」ではありません。「多汗によって損なわれている日常生活の問題を減らし、QOLを改善すること」がゴールです。しかし、患者さんは「できるだけ汗をかきたくない」「完全に汗を止めたい」と希望することが多いようです。
    多汗に悩まれる患者さんがより早く、より効果の高い治療を期待するのは当然かもしれません。しかし、治療効果には限界があり、発汗自体は悪いことではありません。汗には体温調節以外に、保湿作用や皮膚保護作用がありますので、必要以上に発汗を抑制させることは、医学的には推奨されないと考えられます。
    まずは、患者さんの気持ちに共感しながら、汗は必要なものだけれど、気にならない程度に減らしていくことを最初のゴールとしてご提案いただけないでしょうか。その上で、治療選択肢や受診間隔を含む長期的な治療方針について、患者さんと話し合っていただければと考えております。

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    ラピフォート®ワイプを処方する際には、保険給付上の注意点があります。

    ラピフォート®ワイプを処方する際は、保険給付上、次の点に留意するようにしてください1)

    • ラピフォート®ワイプは、原発性腋窩多汗症と確定診断された患者さんにのみ投与することが可能です。原発性腋窩多汗症の確定診断については「原発性腋窩多汗症 診療のいろは その1」を参照ください。
    • 処方する際には、診療報酬明細書(レセプト)の摘要欄に、HDSSによる重症度判定2)を記載する必要があります。(例:HDSS3)
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    ラピフォート®ワイプによる治療を開始するときは、安全性について次の点をご説明ください。

    ラピフォート®ワイプによる治療を開始するに当たって、次のような副作用が生じる可能性があることを患者さんにご説明ください。

    • 主な副作用として、散瞳、羞明といった眼の調節障害が現れることがあります。ただし、国内臨床試験および市販直後調査を通じて、重篤例の報告はありません。眼の調節障害が生じる原因として最も考えられることは、ラピフォート®ワイプの塗布後に、手指を洗わないで眼の周囲を触ってしまうことです。
      こうしたリスクを避けるためにも、患者さん向けRMPに記載されていることですが、「お薬に触れた手で目を触らない」ことを直接お話しください。もし、手を洗わずに触ってしまった場合には、すぐに水でよく洗い流すことも併せて伝えてください。
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    • その他の副作用として「口渇」「接触皮膚炎」「排尿困難」「発汗減少」が現れることがあります。
    • 以上のような症状が現れたり、普段と体調が異なるように感じられたりしたときは、薬剤の使用を中止して、すぐに連絡いただくよう伝えてください。
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    本日から原発性腋窩多汗症の診療を行ってみませんか?

    最後までご覧いただきありがとうございました。原発性腋窩多汗症の治療開始時の注意点を中心にご紹介してきました。脇汗のことを誰に相談すればいいのか、どこで治療できるのかと、長い間悩み続けている患者さんは多数いらっしゃいます。一人でも多くの患者さんの悩みを解決するために、先生のご施設で、相談しやすい環境づくりを行ってみてはいかがでしょうか。弊社ではそうした環境づくりにお役立ていただける、小冊子・ポスターをご用意しております。以下のツールオーダーより注文もできますので、ぜひご活用ください。

    【ツールオーダー 発注画面】

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    ツールオーダーはこちら

    1. 藤本智子ら 日本臨床皮膚科医会雑誌 40 (2) 170-180(2023)
    2. ラピフォートワイプ2.5%電子化された添付文書(2023年5月改訂).
    3. Strutton DR. et al.: J Am Acad Dermatol. 51(2): 241-248, 2004.

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