ダラダラと流れる汗を前に、「この汗、完全に止めたい!」と思ったことはありませんか?
ですが、汗を完全に止めてしまうと、私たちの身体に
大きな影響が出てしまいます。
なぜなら、汗には3つの大切な役割があるからです。
暑かったり、運動をしたとき、汗をたくさんかきますよね。実はこの汗が蒸発するとき、その気化熱で肌の温度が下がり、体温が熱くなりすぎるのを防いでいます。汗の量が極端に少ないと、過剰に体温が上がるなどの悪影響があります。
汗はそれ自体が水分であることに加え、天然保湿因子である乳酸ナトリウムや尿素を豊富に含んでおり、汗が出ることにより肌のうるおいを保ってくれます。
肌には異物の侵入を防ぐバリア機能があること、ご存知ですか?この機能は、肌(特に角層)の湿度が適切に保たれていなければ発揮できません。汗は、肌のうるおいを適切に保つことにも一役買っているのです。
このように、適量の汗をかくことは、私たちの身体を健康に保つために必要なことです。とはいえ、必要以上に出てくるのは困りものです。汗と少しでもうまく付き合っていくための、「汗対策」を一緒に考えていきましょう。
実は汗は元々ほぼ無臭なのです。ところが、時間の経過とともに肌の表面で皮脂などと混ざって菌が繁殖しやすくなり、ニオイが発生します。大量に汗をかいた後など、ふと気づくと汗臭くなっているのは、こうしたことが原因です。
また、普段あまり汗をかかない人が急に運動をして汗をかくと、汗の中の不純物の割合が多くなり、ニオイが発生しやすくなります。
脇汗の量やニオイが気になって、「ワキガかもしれない」と思うことがあるかもしれませんが、ワキガの汗と脇汗は異なる種類の汗です。脇汗は、暑いときや、運動後などに全身から出る体温調節のための汗で、成分のほぼすべてが水分です。
ワキガの汗は、身体の限られた部位(脇や陰部など)にあるアポクリン腺というところから出る汗で、たんぱく質や脂質などを多く含み、独特なニオイが出ます。アポクリン腺の数は人によって異なり、多い人ではワキガとなります。
暑いときや運動後などに他の人よりもたくさん汗をかくのは「汗っかき」という状態ですが、暑くもなく、運動したわけでもないのに汗が出て、日常生活に支障が出るほどであれば、「多汗症」かもしれません。また、更年期の女性ではホルモンバランスの乱れにより、多汗の症状が現れることがあります。
「この汗、⽪膚科で相談するほどなのかな」と迷う場合は、まずは「カンタンチェック」でチェックしてみよう。
夏は汗ジミが目立たない色や、素材(ポリエステル、シアーなど)がおすすめです。汗がついた服は黄ばまないよう、早目に洗濯しましょう。
冬は保温性に優れたものをと思いがちですが、防寒の衣服の中に、汗が蒸発しやすい通気性の良い服で汗対策しましょう。
夏は汗ジミ対策として、また冬は服を頻繁に洗濯しづらいため、インナーを活用することが重要です。脇汗パッドつきで、汗をしっかり吸収しつつ速乾性にも優れた「吸水速乾」機能のあるインナーがおすすめです。
時間の経過とともに菌が繁殖しやすくなりニオイが発生しますので、こまめに汗を拭きとりましょう。汗の拭きとりは、乾いたハンカチやタオルでも良いですが、少し水で湿らせたタオルや汗拭きシートを用いるなど、肌に必要となる湿気は残しておくと良いでしょう。
制汗剤は出てくる汗の量を少なくし、デオドラント剤はニオイの原因となる菌の繁殖を防ぐとともに、発生した汗の特有のニオイを低減します。「汗の量を少なくしたい」ときは制汗剤、「ニオイが出ないようにしたい」ときはデオドラント剤など、目的に応じてうまく活用しましょう。
ニオイを発生させる原因となる菌が繁殖しないよう、身体を清潔にしておきましょう。石けんは、ホイップ状になるまでよく泡立ててやさしく洗い、石けんの成分が残らないようぬるめのお湯でよく洗い流してください。
肉類や乳製品といった動物性脂肪を含む食物を過剰に摂らず、バランスの良い食事を摂ること、喫煙・飲酒を控えることもニオイ対策となります。ニンニクやスパイスを摂取すると、成分が血液中に取り込まれた後、汗に出てニオイの原因となることも知られています。
ライフスタイルに合わせて無理なく試してみよう。
私たちの身体活動は、「交感神経」と「副交感神経」という2つの自律神経によってコントロールされています。緊張やストレスを感じると身体活動を活発にさせる交感神経の働きが高まり、汗の量が増えます。
汗の量が増えないよう、交感神経の働きを抑えるには、深呼吸などでリラックスしたり、普段から十分な睡眠や入浴でストレスをためないようにしましょう。
「皮膚科ではどんな治療を受けるの?」「脇汗といえば手術しかないのでは?」など、皮膚科での相談を不安に思われている方もいらっしゃるかもしれません。保険適用の塗り薬のように身体への負担の少ない治療もありますので、「主な治療薬・治療法」を参考にしてください。
身近な治療法、増えています!
脇汗対策をしても、「なぜ止まらないんだろう」「なぜこんなに嫌な思いをするのだろう」など、脇汗で困っているなら、一度皮膚科へご相談ください。