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乾癬の治療方法

今のあなたにとって最適な治療とは?~My治療を見つけよう~

[監修] 菅井皮膚科パークサイドクリニック 理事長・院長 菅井 順一 先生

最適な治療を決めるための「SDM(シェアード・
ディシジョン・メイキング)」とは?

これまで、患者さんが治療法を選択するとき、患者さんの意思を治療方針に反映させる方法として「インフォームド・コンセント(Informed Consent:IC)」が用いられてきました。ICとは、患者さんが治療を始めるにあたって、医療者からもっとも適していると思われる治療法についての説明を受け、患者さんが納得した上で、治療に同意することです1)

インフォームド・コンセント(Informed Consent:IC)

近年では、医療者と患者さんのコミュニケーションに基づいて、治療の目標やそこに到達するために治療法の情報を共有することが重要だと考えられるようになってきました。そこで、治療方針を決める新たな方法として、「シェアード・ディシジョン・メイキング(Shared decision making:SDM)」が注目されています。SDMとは、医療者と患者さんがお互いの価値観や情報に基づき、治療ゴールに向けて前向きに治療を進めるためのプロセスで2)、日本語では「共有意思決定」と呼ばれます。

シェアード・ディシジョン・メイキング(Shared decision making:SDM)

SDMでは医療者と患者さんが情報や目標を共有したうえで、それぞれの治療法のメリットやデメリットについて話し合い、お互いの意見を尊重しながら治療法を決定します。そのため、医療者がエビデンス(科学的な根拠)に基づく治療選択肢を提示することと同様に、病気や体調のことだけではなく、患者さんの価値観、希望、社会的な役割や背景、治療について知りたいことや不安、日々の楽しみ、どう過ごしていきたいのかなどを伝えることが大切です。

乾癬の治療でSDMをおこなう意味とは?

乾癬でどの治療を選ぶか検討 SDMは、治療効果が期待できる選択肢が2種類以上あって、どの治療を選ぶかの検討が必要な場合に適しています3)
乾癬の治療には、「外用薬(塗り薬)」、「光線療法(紫外線照射)」、「内服薬(飲み薬)」、「生物学的製剤(注射または点滴)」などさまざまな選択肢があり、最近は新たな治療薬も続々と登場しています。
また、乾癬は慢性的な疾患であるため、長期にわたるコントロールが必要です。さらに、皮膚だけでなく全身のさまざまな部位で炎症をきたす「全身性の炎症性疾患」であることもわかってきています4、5)
乾癬の症状は個人差が大きく、治療の目的や目標も異なります。多様な選択肢が存在する乾癬の治療では、医療者と患者さんのコミュニケーションを中心としたSDMが重要な役割を果たします。

あなたの価値観や目標に合った「My治療」を見つけるには?

乾癬は現段階では、多くの場合では長く付き合っていかなければならない疾患です。頑張って治療をしていても思ったように効果がでなかったり、よくなった症状がふとしたことで悪化したりと、常に高いモチベーションで治療を続けることは大変です。あなただけが知っているご自身の価値観や変化に適した「My治療」を見つけてみませんか?そのために、まず、あなたの現在の状況や治療について整理してSDMを実践してみましょう。

例えば、医療者に相談したいこと、治療に求めることや重視すること、今後の目標や希望などを考えて書き留めておくと良いでしょう。すぐに答えが出なくてもかまいませんし、考えが変わることもあると思います。自分のペースで考えて、いつでも医療者に相談してみてください。

今後の目標は「夏までに半袖を着られるようにする」や「1ヵ月毎日外用剤を塗ってみる」など具体的なものでも良いですし、「乾癬とうまく付き合う」や「ストレスを感じないように過ごす」といった漠然としたものでもかまいません。

乾癬を治して温泉を楽しみたい。半袖の洋服を着たい

  • 1)厚生労働科学研究費補助金 (がん対策推進総合研究事業). 患者・家族の意思決定能力に応じた適切な意思決定支援の実践に資する簡便で効果的な支援プログラムの開発に関する研究: 令和2年度 分担研究報告書. シェアード・ディシジョンメイキング(Shared Decision Making: SDM)の意義と可能性の検討
  • 2)Hoffmann TC et al.: JAMA 312(13); 1295-1296, 2014
  • 3)Whitney SN et al.: Ann Intern Med 140(1); 54-59, 2004
  • 4)渡部 龍ら: 内科 129(1) ; 5-7, 2022
  • 5)Custurone P et al.: Medicina 57(2); 161, 2021

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