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乾癬Q&A

[監修] 東京医科大学 皮膚科学分野 教授 大久保 ゆかり 先生

乾癬とは

  • 乾癬を発症すると、一生治療が必要ですか?

    乾癬は糖尿病や高血圧のように治療しながら上手に付き合っていく病気です。乾癬そのものを完治させることは難しいのですが、最近はさまざまな治療方法が開発され、症状がほとんどない状態を長期間保つこともできるようになりました。また、治療だけでなく、食生活を見直す、体重を少し落としてみる、たばこをやめる、などの生活習慣の改善も、乾癬の症状を良くするためのポイントです。
    気になることは、どんどん主治医に相談しましょう。

  • 一度かかると、患部は広がり続けるのでしょうか?

    患部は広がり続けることはなく、治療を続けることで縮小させることができます。

  • 妊娠(パートナーとの子供)を希望しています。乾癬の治療を受けることはできますか?

    妊娠を希望する患者さんの症状と、治療による効果と副作用などのリスクを十分検討し、治療を進めていくことができます。しかし、乾癬の治療薬の中には妊娠や授乳に影響を与える可能性がある薬剤もあります。妊娠および子供を産む希望がある場合は、主治医に伝えておくことが大切です。

  • 乾癬はメタボと関係があると聞きましたが?

    メタボとはメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の略です。
    内臓に脂肪が蓄積した内臓型肥満に加えて、高血糖・高血圧・脂質異常のうち、2つ以上をあわせ持った状態をいいます。
    内臓の脂肪からは生理活性物質*が分泌されます。生理活性物質には悪玉と善玉があり、悪玉は皮膚に炎症を起こしたり角化を促進したりするように働くため、乾癬を悪化させます。一方、善玉は、炎症を抑制するように働いて症状を抑えます。
    メタボで内臓脂肪が増加すると悪玉が増加し、善玉が減少するので乾癬が悪化すると考えられています。
    したがって、患者さんの状態によりますが、乾癬の治療と同時に体重の管理を含めたメタボの治療を行うことがあります。

    ※内臓の脂肪から分泌される生理活性物質をアディポサイトカインといいます。善玉にはアディポネクチン、悪玉にはTNF-αなどがあります。

  • 体がかゆいのですが、乾癬と関係があるのでしょうか?

    かゆみは尋常性乾癬の患者さんの約50%にみられると報告されています。しかし、かゆみの症状は乾癬以外にもさまざまな原因が考えられますので、乾癬と関係があるのかは主治医に相談してみてください。相談する際は、どこが、いつ、どの程度かゆいのかを具体的に伝えることが大切です。

    古江 増隆:皮膚科臨床アセット ここまでわかった 乾癬の病態と治療, 88, 中山書店, 2012

  • 歯の治療をしたら症状が治まりました。乾癬と関係があるのでしょうか?

    掌蹠膿疱症や急性滴状乾癬では、扁桃炎やう歯(特に根尖病巣)と関係があると言われていますが、乾癬の全ての病型との関係は明らかではありません。

    (藤城 幹山:当科における過去3年間の掌蹠膿疱症111例の統計学的検討, 1781, 日皮会誌, 2015)
    (梅澤 慶紀:世界標準の治療指針 乾癬の治療, 1722, 日皮会誌, 2006)

  • 爪が正常とは違うように思うのですが、乾癬と関係がありますか?

    爪乾癬の可能性がありますので主治医に相談してみてください。爪乾癬では、爪の表面が白く濁る、爪が厚くなる、点状のくぼみがみられる、爪全体が変形するなどの症状を伴うのが特徴です。爪乾癬は治療により改善する可能性があります。
    また、爪乾癬がある患者さんは乾癬性関節炎を伴いやすいことが知られています。手や足の指が腫れたり、首から背骨、アキレス腱や足の裏などに痛みを感じたりすることがあれば、主治医に相談してください。

  • 乾癬の一病型から他病型になることはあるのでしょうか?

    乾癬は尋常性乾癬や膿疱性乾癬に関節症性乾癬などさまざまな病型が存在し、病型で移行がみられることもあります。

    (古江 増隆:皮膚科臨床アセット ここまでわかった 乾癬の病態と治療, 86, 中山書店, 2012)

  • 乾癬が原因でがんになることはあるのでしょうか?

    乾癬とがんの関係性は明確ではありません。過度な日光浴は逆に乾癬を悪化させたり、皮膚がんの原因となったりするなど負の作用もありますので、日焼けのし過ぎは禁物です。また重症な乾癬患者に多いと言われる肥満や喫煙が発がんの危険因子でもあります。

    (古江 増隆:皮膚科臨床アセット ここまでわかった 乾癬の病態と治療, 187, 中山書店, 2012)

  • 他疾患(アトピー・類乾癬など)とどのように鑑別されるのでしょうか?

    乾癬の皮膚は特徴的な構造を持っているため、皮膚の組織を取って確認することで他の皮膚疾患と見分けることができます。

治療

  • 最新の治療法はどのようなものがありますか?

    外用薬や内服薬、生物学的製剤などの治療があります。膿疱性乾癬に対しては顆粒球吸着療法という治療方法もあります。乾癬には5つの種類があり、また、患者さんそれぞれで症状の出かたや重症度が異なりますので、各治療方法を単独もしくは組み合わせて行っていきます。治療の効果や副作用、患者さんのライフスタイルなどにより、治療方法が選ばれますので、主治医に症状をしっかりと伝え、治療目標や希望をよく話し合い、乾癬と上手に付き合っていくことが大切です。

  • 効果が高いといわれる治療方法は何でしょうか?

    患者さんの症状は一人ひとり異なるので、一概にどの治療方法の効果が高いとはいえません。乾癬の治療方法には、大きく分けて「外用療法」「内服療法」「光線療法」「生物学的製剤」の4つがあり、患者さんの症状やライフスタイルに合わせてこれらを単独もしくは組み合わせて使用します。治療の基本はビタミンD3外用薬やステロイド外用薬などが用いられる「外用療法」です。皮膚科医と治療方法について十分相談し、指示された用法・用量、薬剤の組み合わせなどをきちんと守って治療を継続することが大切です。

  • 症状を悪化させる原因があれば教えてください。

    皮疹をかきむしったり、かさぶたをはがしたり、入浴時にゴシゴシ洗い過ぎると悪化の原因になります。シャンプーや石鹸の刺激でも悪化することがありますので低刺激のものを選びましょう。また感染症や薬剤、精神的ストレスも悪化因子として知られています。

    (古江 増隆:皮膚科臨床アセット ここまでわかった 乾癬の病態と治療, 154, 中山書店, 2012)

  • 漢方薬や健康食品で乾癬に良いものはありますか?

    漢方薬は補助的な治療として用いられることがあります。「乾癬が治る」と謳(うた)っている健康食品や民間療法がありますが、かえって症状が悪化してしまうこともありますので、注意が必要です。漢方薬や健康食品を試してみたい場合は、必ず皮膚科医に相談しましょう。

  • 外用薬はいつまで塗ればいいですか?

    患者さんの症状に応じて外用薬の種類や使用量、使用期間が選択されていますので、一様に使用期間を示すことはできません。ご自身の判断で治療を中止したり、塗りすぎたりしないように医師の指示どおりに正しく使いましょう。

  • ビタミンD3外用薬は効果が弱い気がします。

    ビタミンD3外用薬の効果は、数日で現れる人が40%、数ヵ月かかる人が40%いるといわれています。効果発現がステロイド外用薬より遅いために効果が弱いと感じられるのかもしれません。しかし、使用を継続することで、個人差はあるにせよ効果が期待できる薬剤であり、その効果はステロイド外用薬のベリーストロングクラスと同程度といわれています。また、ビタミンD3外用薬は症状が治まった後も、塗り続けることでその状態を長期間保つことができます。少なくとも1ヵ月から2ヵ月はあきらめずに塗り続けましょう。
    とはいえ、毎日きちんと塗っているのに何ヵ月も効果が現れない場合や、悪化した場合は、皮膚科医に相談しましょう。効果が現れるまで、ステロイド外用薬の併用や内服薬への変更を行うことがあります。

    • (古江 増隆:皮膚科臨床アセット ここまでわかった 乾癬の病態と治療, 154, 中山書店, 2012)
    • (川原繁:薬局, 59(7), 2524-2529, 2008)
  • 治療薬(治療方法)が変わりました。ひどくなったのでしょうか?

    乾癬の治療方法は病気の状態に応じて変えることがあります。また、患者さんのライフスタイルの変化によっても変えることがあります。
    まずは医師に治療薬(治療方法)が変わった理由を尋ねてみてください。最近では生物学的製剤などの新しい治療薬も使えるようになってきたため、より効果が高い、もしくは患者さんのライフスタイルにあわせた治療方法に変更することもあります。

  • 指示どおりに薬を使っているのに、良くなっていない気がします。

    乾癬という病気は、良くなったり悪くなったりを繰り返す経過の長い病気です。また、ビタミンD3外用薬など効果が出るまでにある程度時間がかかる薬剤もありますので、根気よく治療を続けることが大切です。
    ご自身の判断で使用を中止したり使いすぎたりせず、皮膚科医とよく相談し、指示を守って正しく使いましょう。

  • 乾癬と診断され、ステロイド外用薬が処方されました。強いステロイド外用薬は効果が高いぶん、副作用が心配です。どれくらい塗り続けてよいのでしょうか?

    ステロイド外用薬の副作用には「皮膚が萎縮する」「皮膚がうすくなる」「多毛」などがありますが、数週間の使用でこのような副作用が出ることはまれです。副作用が出ないようにするためにも、ステロイド外用薬の専門家である皮膚科医の指示を守りましょう。
    ステロイド外用薬により症状が改善してきたら、使用間隔を延ばしたり、ビタミンD3外用薬に切り替えたりする方法もあります。ただし、ご自身で判断するのではなく、必ず皮膚科医に相談してください。
    また、長期間のステロイド外用薬の使用による副作用を防ぐために、症状が軽減した後もビタミンD3外用薬を続けることで、良い状態を維持する方法もあります。

  • 塗り薬はべたついて嫌なのですが、何か良い方法はありますか?

    べたつきが気になる患者さんは多いと思いますが、塗り薬は乾癬治療の基本となる薬剤ですので、根気よく使用を続けましょう。どうしても軟膏のべたつきが気になる場合は、薬剤によっては塗りやすいクリームやローション・ゲルがあります。頭部乾癬には洗い流せるシャンプー様外用液剤もあります。皮膚科医にご相談ください。

  • お医者さんや病院を選ぶときのポイントを教えてください。

    乾癬は皮膚の病気ですので、皮膚科医の診断・治療を受けてください。また乾癬の治療で最も重要なのは、積極的に、継続して治療に取り組むことです。ご自身が継続して通うことができる皮膚科医、病院を選びましょう。また、病気や治療について悩んだときは、必ず皮膚科医に相談しましょう。

  • 受診するときに、皮膚の状態以外で伝えるべきことはありますか?

    気になる症状があれば、皮膚とは関係ないと思わず主治医に伝えましょう。例えば、乾癬では関節に症状があらわれることもありますので関節が痛いときは伝えましょう。他には持病や過去にかかった病気についても伝えましょう。こういったことを伝えると、自分の症状や体に適した治療を選ぶことに繋がります。

  • 治療のステップアップ、ステップダウンの目安は?

    患者さんそれぞれで症状の出かたや重症度が異なります。そのため、各治療方法を単独もしくは組み合わせて行っていきます。治療の効果や副作用、患者さんのライフスタイルなどにより、治療方法が選ばれますので、主治医に症状をしっかりと伝え、治療目標や希望をよく話し合い、乾癬と上手に付き合っていくことが大切です。

  • 生物学的製剤による治療はいくらくらいかかるのでしょうか。どこに相談したら良いでしょうか。

    年間で何十万円かの費用がかかります。場合によっては高額療養費制度などを利用することで負担を抑えることができます。詳しくは病院のソーシャルワーカーや、加入されている医療保険の相談窓口※にご相談ください。

    ※ご加入の医療保険によって窓口が異なります。
    国民健康保険・後期高齢者医療制度は市区町村役所、健康保険・共済組合・船員保険は勤務先になります。

症状

  • かゆみを我慢できません。かゆみを抑える方法はありますか?

    タオルを巻いた保冷剤などで患部を冷やすことで、かゆみをある程度抑えることができます。なお、引っかくことによって症状が悪化したり、症状が出ていない部分にも新たな症状が出てきたりすることがあるので、かゆみが我慢できないときは皮膚科医に相談し、かゆみ止めの飲み薬などを処方してもらいましょう。また相談する際、どこが、いつ、どの程度かゆいのかを具体的に伝えることが大切です。

  • 爪が変形しています。どのような治療方法があるのでしょうか?

    いわゆる「爪乾癬」で、爪の表面が白く濁り、厚くなり、点々と凹みがみられ、時に変形を伴うのが特徴です。ビタミンD3外用薬をはじめ、ステロイド外用薬やステロイドとビタミンD3の配合外用薬、飲み薬、生物学的製剤などを用いて治療します。ただし、皮膚にできた乾癬に比べて良くなるまでに時間がかかりますので、途中であきらめずに根気よく治療を続けることが大切です。

  • 頭髪が抜け、薄毛につながったりするのでしょうか?

    頭皮は乾癬の症状が出やすい部位ですが、膿疱性乾癬の一部を除き、乾癬が直接の原因で頭髪が抜けるということはありません。ただし、かゆみがある場合に、頭皮を引っかくことが抜け毛につながる可能性がありますので、かゆみが我慢できない場合は皮膚科医に相談しましょう。

  • フケも乾癬と関係あるのか?

    乾癬の症状は頭部でもみられます。銀白色のフケのようなものがあれば乾癬の症状である可能性がありますので主治医にご相談ください。

日常生活

  • スポーツやレジャーなどは避けたほうが良いですか?

    スポーツやレジャーなどを避ける必要はありません。むしろ適度な運動は、糖尿病や肥満などの予防・改善やストレスの解消につながります。また、海水浴などで日光にあたることにより、乾癬の症状が良くなることもあります。ただし、急激な日焼けは皮膚を刺激し悪化の原因になりますので、注意が必要です。

  • ヘアカラー(髪染め)をしても大丈夫でしょうか?

    症状が出ていない皮膚に刺激を与えると、その刺激をきっかけに新たな発疹が現れることがあり、症状を悪化させてしまう恐れがあります。また頭皮に皮疹や炎症がある場合、刺激し悪化する恐れもあります。詳しくは皮膚科医にご相談ください。

  • 症状のある部位に化粧、日焼け止めをしても大丈夫でしょうか?

    日常生活での日焼け止めや化粧品の使用は問題ありませんが、低刺激のものを選びましょう。過度の日焼けは悪化因子となりますので、山や海などの強い紫外線を浴びる場所に行く場合は必ず低刺激の日焼け止めを使用しましょう。

  • 身近に患者がいるのですが、どのように支えていけば良いでしょうか?

    日本乾癬患者連合会という患者さんの集まりがあります。全国に患者会があり、同じ悩みを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
    患者会では乾癬専門の先生を呼んで勉強会も行われていますので、ご興味があればホームページをご覧になってはいかがでしょうか。

  • 周囲の人に相談できず辛いです。他の方はどうしているのでしょうか?

    日本乾癬患者連合会という患者さんの集まりがあります。全国に患者会があり、同じ悩みを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
    患者会では乾癬専門の先生を呼んで勉強会も行われていますので、ご興味があればホームページをご覧になってはいかがでしょうか。