乾癬の疫学・病態
乾癬の疫学1,2)
日本人における発症率は0.3%程度で、国内の乾癬患者は10万~30万人と推定されています。
男女比は2:1と男性に多い傾向があります。
男性では30~40代をピークとする一方、女性では10代と50代に二峰性のピークがあります。
乾癬の種類と病態1)
乾癬は症状ごとに、尋常性乾癬、滴状乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬、乾癬に伴って関節炎を合併した乾癬性関節炎(関節症性乾癬)の5病型に分けられます。
同じ病型のままで推移する症例もあれば、病型が移行もしくは合併する症例もあります。
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)(乾癬性関節炎は伴わない)
患者さんの約80~90%がこのタイプ。
皮膚が赤くなる、盛り上がる、フケのようなものが剥がれ落ちる、などの症状がみられます。
外からの刺激が加わりやすい部位に生じます。約60%の患者さんは爪にも症状がみられます。

乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)
炎症性の関節炎を伴う乾癬です。多くの場合、乾癬の皮膚症状がみられます。手足や指、腰のほか、アキレス腱付着部や足の裏(足底筋膜)などに腫れや痛みが出ます。治療しないと徐々に関節が変形してきます。リウマチ因子は通常陰性です。

滴状乾癬(てきじょうかんせん)
小さな水滴程度の大きさの皮疹が全身に出現します。鼻、のど、歯など、体のどこかに細菌の感染病巣が存在し、それが悪化する時に起こることがあります。とくに扁桃腺炎がきっかけとなることが多いと言われています。

乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)
尋常性乾癬がほぼ全身に広がり、潮紅状態(赤みを帯びること)になります。

膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)(汎発型)
発熱、倦怠感を伴い、急激に全身の皮膚が潮紅し、膿疱(膿を持った状態)が多発します。放置すると、全身衰弱などにより重篤な状態になることがあります。

乾癬の原因
乾癬は、遺伝的な要因を土台として、持病や生活習慣など内外からの影響を受けることで発症すると考えられています。


乾癬と併存疾患

乾癬の病態
乾癬は、表皮の角化異常と炎症細胞の集合・活性化を特徴とする炎症性角化症であり、通常の約10倍の速さで皮膚のターンオーバーが起こっています。

東京慈恵会医科大学 名誉教授 中川 秀己 先生 監修 患者指導用資材より
1)清水宏:あたらしい皮膚科学 第3版, 中山書店. p282, 2018
2)落合慈之 監修、五十嵐敦之 編集:新版 皮膚科疾患ビジュアルブック, 学研メディカル秀潤社. p170, 2012