褥瘡辞典 for MEDICAL PROFESSIONAL ~褥瘡(床ずれ)の正しいケアと治療のために~

褥瘡の予防(ケア)

リハビリテーション

関節拘縮の予防のための他動運動

他動運動は関節拘縮予防のほか、皮膚を伸張し、皮膚同士の密着を防いで皮膚の柔軟性を維持する目的もあります。実施する際は、患者の可動範囲を理解し、決して無理に動かさないようにします。

他動運動時の留意点
  • 関節拘縮の原因となっている組織を特定する。
  • 関節の各運動方向における可動範囲および皮膚・筋・腱の緊張状態を確認する。
  • 1回に何度も動かすより、1日に複数回動かす方が効果的である。
  • ゆっくりと動かす。痛みを感じるのは危険信号である。特に、肩関節は構造が複雑なため、乱暴に動かすと疼痛の発生や関節拘縮の悪化をまねく。
  1. 肩関節の屈曲・外転運動
    (1)
    上腕骨骨頭が肩甲骨関節窩に納まっていることを確認します。
    肩関節の屈曲・外転運動(1)
    (2)
    上腕骨骨頭部の動きを片方の手で確認しながら、反対の手で上腕を持ち、肘で軽く円弧を描くようにして屈曲・外転運動を行います。
    肩関節の屈曲・外転運動(2)

    (3)
    肘関節が肩関節のラインにくる程度までを目標とします。
    肩関節の屈曲・外転運動(3)
    (4)
    肩関節の外転時には、内旋位ではなく外旋位にします。
    肩関節の屈曲・外転運動(4)-1 肩関節の屈曲・外転運動(4)-2

    宮地良樹, 溝上祐子編集:褥瘡治療・ケアトータルガイド:103, 2009より一部改変

  2. 膝関節の伸展運動
    • 下腿をできるだけ膝関節の近くで持ち、下腿を前方に引き出すようなイメージで膝関節を伸展させます。
    • 膝窩部に当てている手で膝後面の腱の伸張具合を感じながら行います。
    • 腱がピンと張り、抵抗感を感じる程度で保持します。
    膝関節の伸展運動

    日本褥瘡学会編集:在宅褥瘡予防・治療ガイドブック:90, 2015

  3. 拘縮手指の伸ばし方
    (1)
    指を握りしめた状態から伸ばす場合、手関節が背屈位のままではなく、まず手関節を掌側に動かします。
    拘縮手指の伸ばし方(1)
    (2)
    小指側より手掌部をもみほぐすように、介助者の指を入れていきます。
    拘縮手指の伸ばし方(2)
    (3)
    他の指を伸張します。
    拘縮手指の伸ばし方(3)
    日本褥瘡学会編集:在宅褥瘡予防・治療ガイドブック:90, 2015
    *拘縮が強くなってくると手掌の溝が癒着してくるため、皮膚を引き裂かないように注意しましょう。小溝部分を拭くことも効果的です。
他動運動による褥瘡発生

皮膚が脆弱な患者に関節可動域に関するケアを行った場合、衣服やおむつが原因でずれ力が発生し、新たな褥瘡の発生が懸念されるため、他動運動後の皮膚観察は重要です。

他動運動後に皮膚観察を怠っていたと考えられる例

股関節の他動運動でも、動かし方によっては腰部の皮膚にまでずれが生じることがあるので要注意

股関節の他動運動でも、動かし方によっては腰部の皮膚にまでずれが生じることがあるので要注意。

日本褥瘡学会編集:在宅褥瘡予防・治療ガイドブック:92, 2015
関節拘縮の予防方法
関節拘縮の予防のためのポジショニング

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