褥瘡の概要
分類
深達度分類
褥瘡の深達度による分類は、1975年のShea分類に始まり、Campbell分類、IAET分類などさまざまな方法が発表されてきました。我が国では1998年の「褥瘡の予防・治療ガイドライン」において、深達度をI度からIV度の4段階に分類する方法が考案されました。その後、更に検討が進み、2008年の改訂以降DESIGN-Rでは7段階評価となっています。
国際的には現在、米国褥瘡諮問委員会(National Pressure Ulcer Advisory Panel: NPUAP)のステージ分類、ヨーロッパ褥瘡諮問委員会(European Pressure Ulcer Advisory Panel: EPUAP)のグレード分類が一般的に使用されています。そのうちNPUAPが他の分類と異なるのは、2007年の改訂時に追加された「DTI疑い」という概念です。
DTIとは、Deep Tissue Injuryの略であり初期の段階では皮表から判断すると一見軽症の褥瘡にみえるが、時間の経過とともに深い褥瘡へと変化するものを指します。そのためNPUAPは予防の観点でよく用いられています。
2020年改訂版のDESIGN-Rでも、新たにこのDTIが評価項目に加わりました。
褥瘡の深達度分類の比較
DESIGN-R深さ (2008) |
NPUAP分類 (2007改訂版) |
EPUAP分類 (1998) |
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d0 皮膚損傷・発赤なし |
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DTI疑い 圧力および/または剪(せん)断力によって生じる皮下軟部組織の損傷に起因する、限局性の紫または栗色の皮膚変色または血疱。 |
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d1 持続する発赤 |
ステージI 通常骨突出部位に限局する消褪しない発赤を伴う、損傷のない皮膚。暗色部位の明白な消褪は起こらず、その色は周囲の皮膚と異なることがある。 |
グレードI 損傷のない消褪しない皮膚の発赤。特に、より暗い皮膚を持つ人においては、皮膚の色の変化、暖かさ、浮腫、硬結あるいは硬さは指標として使えるかもしれない。 |
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d2 真皮までの損傷 |
ステージII スラフ(黄色、黄褐色、灰色または茶色)を伴わない、赤色または薄赤色の創底をもつ、浅い開放潰瘍として現れる真皮の部分欠損。破れていないまたは開放した/破裂した血清で満たされた水疱として現れることがある。 |
グレードII 表皮、真皮あるいはその両方を含む部分層皮膚欠損。潰瘍は表在的で、臨床的には表皮剥離や水疱として存在する。 |
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D3 皮下組織までの損傷 |
ステージIII 全層組織欠損。皮下脂肪は確認できるが、骨、腱、筋肉は露出していないことがある。スラフが存在することがあるが、組織欠損の深度が分からなくなるほどではない。ポケットや瘻孔が存在することがある。 |
グレードIII 筋膜下には達しないが、皮下組織の損傷あるいは壊死を含む全層皮膚欠損。 |
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D4 皮下組織を越える損傷 |
ステージIV 骨、腱、筋肉の露出を伴う全層組織欠損。黄色または黒色壊死が創底に存在することがある。ポケットや瘻孔を伴うことが多い。 |
グレードIV 全層皮膚欠損の有無にかかわらず、広範囲な破壊、組織の壊死、あるいは筋肉・骨あるいは支持組織に及ぶ損傷。 |
D5 関節腔・体腔に至る損傷 |
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U 深さ判定が不能な場合 |
判定不能 創底で、潰瘍の底面がスラフおよび/またはエスカー(黄褐色、茶色、または黒色)で覆われている全層組織欠損。 |
日本褥瘡学会編集:褥瘡予防・管理ガイドライン:21, 2009より改変