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米国のガイドラインにおけるヘマンジオルの位置づけ


米国小児科学会(American Academy of Pediatrics:AAP)が発表した「Clinical Practice Guideline for the Management of Infantile Hemangiomas」より、プロプラノロールの位置づけや使用方法に関する推奨文をご紹介します。

エビデンスの質は、グレードA~D、Xで分類し、推奨の強さは、強い推奨、中等度の推奨、弱い推奨(質の低いエビデンスに基づく)、弱い推奨(益と害を示すエビデンスがいずれも存在するため)の4段階で評価した。

[エビデンスの分類]

グレードA
治療介入:適切にデザインされ実施された試験、適切な集団を対象としたメタアナリシス
診断:適切な集団を対象としたゴールドスタンダードとなる独自の研究

グレードB
限界(Limitation)が些細なものにとどまる試験や研究。複数の観察研究で得られた一貫した結果

グレードC
1件~少数の観察研究、または結果が一貫しないか、重大な限界(Limitation)を有する複数の研究

グレードD
専門家の見解、症例報告、原則に基づく推論

グレードX
検証試験が実施できないが益または害のいずれかが明らかに勝っている例外的な状況

推奨文3A:
臨床医は、全身療法を要するIHには第一選択薬としてプロプラノロールを経口投与するべきである(エビデンスの質:グレードA、推奨の強さ:強い推奨)
総体的なエビデンスの質 グレードA
IH治療の改善。経口ステロイド療法による副作用を避けられる。
リスク、害、コスト プロプラノロールの使用に関連する副作用の発現(推奨文 3D参照)。薬剤コストのほか、乳児が入院中に投与を開始する場合は入院コスト
益と害の評価 益が害を上回る。
曖昧性を意図した記述 なし
患者の意向の関与 治療についての意思決定に保護者が参加すべきである。
除外対象 生後5週未満、受胎後齢48週未満の乳児では注意を要する(除外対象ではない)。
以下については、適切な専門性を有する医師の評価や処方の許可を要し、除外対象となる場合がある:心原性ショックまたは心不全の存在、洞性徐脈、第2度以上の房室ブロック、大動脈縮窄症および脳動脈の異常がある、またはそのリスクがあるなど、既知のPHACE症候群またはその疑い例、既知の喘息および/または反応性気道疾患、プロプラノロールに対する既知の過敏症
推奨の強さ 強い推奨
主要参考文献 3、46、59~61
主要参考文献:
  • 3) Darrow DH. et al.: Pediatrics. 2015 ; 136(4). Available at: www.pediatrics.org/cgi/content/full/136/4/e1060
  • 46) Chinnadurai S. et al.: Diagnosis and Management of Infantile Hemangioma. Rockville, MD: Agency for Healthcare Research and Quality; 2016
  • 59)Léauté-Labrèze C. et al.: N Engl J Med. 2008; 358(24): 2649–2651
  • 60)Léaute-Labrèze C. et al.: Pediatrics. 2016 ; 138(4): e20160353
  • 61)Drolet BA et al.: Pediatrics. 2013 ; 131(1): 128–140
推奨文3B:
臨床医は、併存疾患がある場合(PHACE症候群など)、または用量減量を要する副作用(睡眠障害など)がある場合を除き、プロプラノロールの用量は2~3mg/kg/日とすべきである(エビデンスの質:グレードA、推奨の強さ:中等度の推奨)。
総体的なエビデンスの質 グレードA
推奨用量はIH消失率との高い関連が示されている。
リスク、害、コスト 高用量および低用量での奏効率は十分研究されていない。
益と害の評価 益が害を上回る。
曖昧性を意図した記述 なし
患者の意向の関与 PHACE症候群を有する場合または副作用の発現が認められる場合は、投与量の決定に保護者が関与する。
除外対象 推奨文 3Aを参照。併存疾患がある場合は用量を調整してもよい。
推奨の強さ 中等度の推奨
主要参考文献 1、46、61、76
主要参考文献:
  • 1)Hoeger PH. et al.: Eur J Pediatr. 2015 ; 174(7): 855–865
  • 46)Chinnadurai S. et al.: Diagnosis and Management of Infantile Hemangioma. Rockville, MD: Agency for Healthcare Research and Quality; 2016
  • 61)Drolet BA. et al.: Pediatrics. 2013 ; 131(1): 128–140
  • 76)Léauté-Labrèze C. N Engl J Med. 2015 ; 372(8): 735–746

[用法・用量]

通常、プロプラノロールとして1日1mg/kg~3mg/kgを2回に分け、空腹時を避けて経口投与する。投与は1日1mg/kgから開始し、2日以上の間隔をあけて1mg/kgずつ増量し、1日3mg/kgで維持するが、患者の状態に応じて適宜減量する。

推奨文3C:
臨床医は、プロプラノロールの投与は授乳(食事)中または授乳(食事)後に行い、服用量が少なかった場合や嘔吐した場合でも、低血糖のリスクを抑えるために、追加の投与は行わないよう指示すべきである(エビデンスの質:グレードX、推奨の強さ:強い推奨)。
総体的なエビデンスの質 グレードX
有害反応が発現する可能性が低下する。
リスク、害、コスト 薬剤による副作用の可能性を懸念して保護者が治療を拒否するリスクがある。
益と害の評価 益が害を上回る。
曖昧性を意図した記述 なし
患者の意向の関与 なし
除外対象 なし
推奨の強さ 強い推奨
主要参考文献 46、60、61、76、78~80
主要参考文献:
  • 46)Chinnadurai S. et al.: Diagnosis and Management of Infantile Hemangioma. Rockville, MD: Agency for Healthcare Research and Quality; 2016
  • 60)Léaute-Labrèze C. et al.: Pediatrics. 2016 ; 138(4): e20160353
  • 61)Drolet BA. et al.: Pediatrics. 2013 ; 131(1): 128–140
  • 76)Léauté-Labrèze C. N Engl J Med. 2015 ; 372(8): 735–746
  • 78)Breur JM. Pediatr Dermatol. 2011 ; 28(2): 169–171
  • 79)Holland KE. Arch Dermatol. 2010 ; 146(7): 775–778
  • 80)Prey S. et al.: JAMA. 2016 ; 315(4): 413–415
推奨文3D:
臨床医は、睡眠障害、気管支刺激、臨床的に症候性の徐脈および低血圧など、プロプラノロールによって発現しうる副作用について、患児の評価と保護者の教育を行うべきである(エビデンスの質:グレードX、推奨の強さ:強い推奨)。
総体的なエビデンスの質 グレードX
プロプラノロールの投与による副作用を認識する。
リスク、害、コスト 薬剤による副作用の可能性を懸念して保護者が治療を拒否するリスクがある。
益と害の評価 益が害を上回る。
曖昧性を意図した記述 なし
患者の意向の関与 なし
除外対象 なし
推奨の強さ 強い推奨
主要参考文献 3、46、61、76、80、85~88
主要参考文献:
  • 3)Darrow DH. et al.: Pediatrics. 2015 ; 136(4). Available at: www.pediatrics.org/cgi/content/full/136/4/e1060
  • 46) Chinnadurai S. et al.: Diagnosis and Management of Infantile Hemangioma. Rockville, MD: Agency for Healthcare Research and Quality; 2016
  • 61)Drolet BA. et al.: Pediatrics. 2013 ; 131(1): 128–140
  • 76)Léauté-Labrèze C. N Engl J Med. 2015 ; 372(8): 735–746
  • 80)Prey S. et al.: JAMA. 2016 ; 315(4): 413–415
  • 85)Ng M. et al.: Ann Plast Surg. 2016 ; 76(3): 306–310
  • 86)Chang L. et al.: Ann Plast Surg. 2016 ; 76(5): 559–563
  • 87)Liu LS. et al.: Pediatr Dermatol. 2013 ; 30(5): 554–560
  • 88)El Ezzi O. et al.: Swiss Med Wkly. 2014 ; 144: w13943

出典:
Krowchuk DP. et al.: Pediatrics. 2019 ; 143: e20183475

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