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がん性皮膚潰瘍の臭いに対するケアマネジメント


    監修:
    • 昭和大学医学部乳腺外科 教授 中村 清吾 先生

    POINT

    • 創部を清潔に保つために、洗浄を十分行うことが重要
    • ロゼックスゲルは、がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減に保険適応がある
    • モーズペーストが有効であるとの報告がある

    がん性皮膚潰瘍臭は患者の自尊心を低下させ、社会的孤立感を招き、QOLを著しく低下させる危険性があります。また、悪臭による悪心・嘔吐、食欲不振が起きることもあります。患者本人だけでなく、家族や医療関係者にとってもつらく、深刻な問題です。

    1. 洗浄

    壊死物質・細菌・付着した滲出液や血液などを取り除き、創部および潰瘍部位を清潔に保つために、洗浄を十分行うことが重要です。創周囲は弱酸性石鹸をよく泡立ててやさしく洗浄し、創部と創周囲皮膚をたっぷりの微温湯(可能であれば生理食塩水)で洗い流します。シャワー浴が可能な場合は、出来る限りシャワーで洗浄します。
    また、潰瘍部位の壊死組織は、細菌繁殖の温床となるため、可能であれば除去しますが、出血のリスクが高い場合は避けます。

    2. 外用薬

    細菌の増殖を抑える効果のあるクリンダマイシン外用薬(がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減には適応外)が有効であるとの報告があります1)。また、同様の効果のあるヨウ素含有外用薬(がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減には適応外)、スルファジアジン銀含有外用薬(がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減には適応外)、亜鉛華デンプン(酸化亜鉛)(保険適応外)なども有効であるとの報告があります1)~3)
    また、嫌気性菌のDNA合成を阻害することによって静菌/殺菌作用を示すロゼックスゲルは、がん性皮膚潰瘍部位の殺菌・臭気の軽減に保険適応があり、臨床試験で有効性・安全性が評価されています。

    3. その他

    院内製剤のモーズペースト(保険適応外)による化学外科療法は主成分の塩化亜鉛が潰瘍面の水分でイオン化することで、蛋白凝集作用を示し、腫瘍細胞や腫瘍血管および二次感染した細菌の細胞膜を硬化させ、がん性皮膚潰瘍臭の軽減および滲出液の減少・止血、腫瘍脱除に有効であるとの報告があります4),5)
    臭いを吸着する効果のある活性炭シートなどをドレッシング材の上に被せることや脱臭機を使用することもあります。また、ケア後の後始末をきちんとすることや、病室内の環境整備・こまめな換気なども効果的です。芳香剤はがん性皮膚潰瘍臭と混合するとかえって逆効果になる恐れもある事から注意が必要です。

    1. Symptom relief in terminal illness (WHO Library Cataloguing in Publication Data, 1998) p. 95-6
    2. 松原康美:がん患者へのシームレスな療養支援(渡邉眞里編, 日本がん看護学会監修). 医学書院, 東京, 2015, p. 134-143
    3. がん症状緩和の実際(ASCO 公式カリキュラム, 2003)p. 14-5
    4. 吉野公二:進行癌に対するモーズ軟膏療法. 臨床皮膚, 63(5):121-124, 2009
    5. 竹森康子, 安部美穂, 沖山良子ほか:低濃度モーズ軟膏を使用した原発性および転移性皮膚悪性腫瘍の3例. 日病薬誌, 46(6):783-786, 2010

    がん性皮膚潰瘍におけるロゼックスゲルの位置づけ

    がん性皮膚潰瘍に伴う臭いの治療意義とその治療

    がん性皮膚潰瘍に伴う臭いに対するケアの実際

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