がん性皮膚潰瘍の出血に対するケアマネジメント
- 監修:
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- 昭和大学医学部乳腺外科教授 中村 清吾 先生
POINT
- がん性皮膚潰瘍の潰瘍部は出血しやすい状態であるため、ドレッシング材交換時や洗浄時に特に注意が必要
- 出血時はアルギン酸ドレッシング材やエピネフリンを浸透させたドレッシング材を用いる
がん性皮膚潰瘍の潰瘍部は、発育に伴う急速な血管新生により血管壁が薄くもろくなっていることや、腫瘍の血管への浸潤が生じることで、出血しやすい状態です。
また、がん性皮膚潰瘍を有する患者さんでは化学療法等の治療や全身状態の悪化に伴い血小板減少がみられるなど、出血傾向をきたしていることがあります。
創面から自然に出血する場合もありますが、ドレッシング材交換時の剥離刺激や創面の乾燥、壊死組織除去時の刺激、洗浄時の洗浄圧などが出血の誘因となることが多いです。出血は痛みを伴うことが多く、患者さんの不安や恐怖を増強させる原因となるため、できる限り創傷ケアによる出血を防ぐように心がけます。
1. ドレッシング材交換時
剥離時は必ずドレッシング材を湿らせ、浮き上がらせた状態で除去します。また、創面が乾燥せず、湿潤環境が保持できるように滲出液量に応じたドレッシング材を選択することも重要です。
2. 洗浄時
洗浄圧の強さに気をつけ、愛護的に洗浄します。壊死組織の除去は無理には行わず、洗浄時に自然に除去されたり、自己融解するのを待ちます。
3. 出血時
軽度の出血であれば、止血効果のあるアルギン酸ドレッシング材を出血点に貼付し、さらにその上から圧迫します。中等度以上の出血や止血に時間がかかる場合は、1,000倍希釈のエピネフリン(保険適応外)を浸透させたドレッシング材で創面を被覆したり、電気メスによる凝固止血が必要となる場合があります。出血が多い場合や繰り返す場合は、モーズペースト(保険適応外)を用いて出血する部位を硬化させることもあります。