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疥癬Q&A


    ヒゼンダニの生態、病型分類、感染経路について

    1疥癬とはどんな疾患ですか?

    1ヒゼンダニというダニの一種が皮膚の角質層内に寄生し、人の肌から肌へと感染する皮膚疾患です。

    2どんな症状ですか?

    2通常疥癬では非常に強いかゆみを伴い、疥癬トンネルや丘疹、結節が頭部・顔面を除く全身にみられます。角化型疥癬では角質層の増殖が全身にみられますが(局所のみの場合もある)、かゆみを伴わない場合もあります。

    3ヒゼンダニは体のどこに寄生していることが多いのですか?

    3雌ヒゼンダニの寄生部位は手や手首が最も多く、次いで肘、足や足首などです。幼虫、雄成虫、若虫はどこにいるかわかりません。症状が出やすいのは腋の下や腹部、大腿の内側であり、寄生部位と発症部位は必ずしも一致しません。

    4なぜ角化型疥癬になるのですか?

    4患者さんの免疫力の低下が原因と考えられています。

    5通常疥癬と角化型疥癬では原因となる虫が違うのですか?

    5どちらの病型も同じヒゼンダニです。

    6通常疥癬から角化型疥癬に移行していくことはありますか?

    6通常疥癬に感染した患者さんの免疫力が低下した場合およびステロイド薬を内服もしくは外用した場合などに、角化型疥癬へ移行することがあります。

    7潜伏期間はどれくらいですか?

    7通常疥癬から感染した場合は1~2ヵ月といわれています。しかし、角化型疥癬から感染した場合は3~4日で疥癬の症状が出ることもあります。

    8どうしたら感染しますか?

    8通常疥癬の場合は、患者さんとの肌と肌の直接接触が原因となりますが、短時間の接触では感染しません。しかし、角化型疥癬の場合は、短時間の接触でも感染するため注意が必要です。

    9動物から感染しますか?

    9感染することもあります。しかし、人に寄生するヒゼンダニは人に特異的で、動物に寄生しているダニ(例えば、イヌヒゼンダニ)が人に寄生しても繁殖することはできないため、症状は一過性のものです。

    10集団感染とはどのような状況ですか?

    10疥癬診療ガイドラインでは「同一施設で2ヵ月以内に2人以上の疥癬患者が発生した場合」を集団感染としています。また、集団感染した場合には角化型疥癬が必ず存在すると考えたほうがよいでしょう。

    11不潔にしていると疥癬になりますか?

    11清潔にこしたことはありませんが、不潔だからといって疥癬になるわけではありません。

    12疥癬は簡単に感染しますか?

    12通常は長時間の接触がなければ感染しませんが、重症の場合(角化型疥癬)では短時間の接触でも感染します。

    13疥癬の患者さんの衣服をさわっただけで感染しますか?

    13通常疥癬では間接的に感染することはまれですが、角化型疥癬では間接的に感染することがあります。

    14ヒゼンダニは畳で増えますか?

    14ヒゼンダニは畳やじゅうたんで増えることはないので、部屋をきれいにしていても予防にはなりません。ただし、角化型疥癬の場合は剥げ落ちた角質から感染することもあるので部屋をきれいにしましょう。

    15かゆみの原因はヒゼンダニそのものですか?

    15かゆみの原因の多くはヒゼンダニが疥癬トンネル内に残していった糞や脱皮した抜け殻に対するアレルギー反応と考えられています。ヒゼンダニそのものではありません。

    16角化型疥癬の主症状はかゆみですか?

    16角化型疥癬では角質層増殖が主症状ですが、かゆみがないこともあります。

    17通常疥癬と角化型疥癬の中間の型があるのではないですか? (GL第3版追補より)※)

    17「中間型」というクラス分けはありませんが、その考えはあります1)。第3版の2040ページには「またステロイド剤や免疫抑制剤投与中の患者、悪性腫瘍や糖尿病、透析中の患者、高齢者などでは免疫が低下した状態のことがあり、治療期間が遷延することもあるので…」と記載があります。これは通常疥癬ではじまり、角化型疥癬に移行する状態を示しており、一朝一夕に通常型から角化型に移行するのではなく、中間の状態があることを示しています。臨床的には爪や手足、臀部などに局所的に角化がおこりやすいです。ただし、このように局所的に角化が認められる場合でも「角化型疥癬」とするのがよいでしょう。治療面からも薬剤抵抗性ヒゼンダニの出現をきたさず、早期に治癒に導くために、「中間型」の考えを導入せず、広く「角化型疥癬」とすべきです。 (GL第3版追補より)※)

    1. 石黒和守:臨皮,2018; 72(増): 162-164.

    疫学、診断について

    18疥癬の年間患者数(日本、世界)は? (GL第3版追補より)※)

    18日本の疥癬患者数についての報告はありません。神奈川県と東京都の皮膚科医に対するアンケート調査では、年間の患者数を8万~16万人と推計しています2)
    一方、2006年にイベルメクチン内服薬が疥癬の保険適用に、その後2014年にフェノトリンローションが保険適用になりました。両者の売上(非公表)から患者数を推計すると概ね秋に売上が上がる傾向があります。そして、疥癬患者1人に対しイベルメクチン内服薬は2回投与、フェノトリンローションは2回投与と仮定すると、年間の患者数は約10万人と推計されます。両者の最近数年の年間売上はほぼ横ばいの推移であることから、近年では患者数の大きな増減はないものと推測されます。また角化型疥癬患者数について言及したものはありません。
    世界的には疥癬患者数を約1~2億人としています3)4)。 (GL第3版追補より)※)

    1. 石井則久,向井秀樹,菅原 信ほか:日皮会誌,2003; 113: 281-288.
    2. Hay RJ, Johns NE, Williams HC, et al: J Invest Dermatol, 2014; 134: 1527-1534.
    3. GBD 2015 Disease and Injury Incidence and Prevalence Collaborators: Lancet, 2016; 388: 1545-1602.
    19臨床像から疥癬を疑うが、検査でヒゼンダニが検出できない場合(疥癬疑い?)の対応は? (GL第3版追補より)※)

    19検査陰性であっても臨床症状や疫学的流行状況から疥癬を否定できないときには、再度間隔をおいて検査を実施します。爪の白濁・肥厚や角化性病変(頭頸部や耳介の周辺部などにみられることもある)についても確認します。
    なお、①臨床症状、②ヒゼンダニ検出の検査、③疫学的流行状況の3点を勘案して診断するので、検査が陰性でも治療を開始することもあります。集団発生があり感染機会が濃厚で、臨床症状が典型の場合などです。 (GL第3版追補より)※)

    20高齢者へのイベルメクチン投与の注意点は? (GL第3版追補より)※)

    20イベルメクチン内服薬の高齢者に対する安全性は確立していません。一般に高齢者では、肝、腎、心機能が低下しており、また、合併症を有し、もしくは他の薬剤を併用している場合が多いので、注意して投与してください。また、疥癬に対する使用成績調査において主な副作用として肝機能異常が報告されていることから5)、初回投与後、2回目投与の際は肝機能異常の臨床的徴候(倦怠感、発熱等)がないか確認することが望ましいでしょう。日本人の疥癬患者において、イベルメクチンの食後投与により血中濃度が上昇した事例で軽度肝障害が発生した報告があります6)7)。イベルメクチンは空腹時に水のみで投与し、必要に応じて肝機能検査を行い、異常がみられた場合は、外用薬に変更してください。 (GL第3版追補より)※)

    1. 小泉一馬,大仲陽一,竹下由紀代ほか:新薬と臨牀,2010; 59: 924-938.
    2. Miyajima A, Hirota T, Sugioka A, et al: J Dermatol, 2016; 43: 1030-1036.
    3. 阿久津駿太,赤木圭太,山田瑞稀ほか:医薬品安全,2018; 4: 29-41.
    21高齢者ではイベルメクチンの臨床効果が低下しますか? (GL第3版追補より)※)

    21高齢者においても200μg/kg/回で有効性が報告されています8)。一方、高齢者でイベルメクチンの有効性が低下したとの報告はありません。また、イベルメクチン内服後の脂漏部位(前額部、耳介後部)と非脂漏部位(示指、手背部、腋窩、腹部)の鱗屑、皮脂、汗におけるイベルメクチン濃度は、脂漏部位で高値となります9)。そのため、皮脂量が低下している高齢者では、イベルメクチンの皮膚濃度が低下する可能性があります。
    また、高齢者では免疫能が低下するため治療期間が遷延することもあるので、外用と内服の併用治療も考慮してください10)。 (GL第3版追補より)※)

    1. 田村暢子,石井則久:日皮会誌,2005; 115: 2405-2407.
    2. Haas N, Lindemann U, Frank K, Sterry W, Lademann J, Katzung W: Arch Dermatol, 2002; 138: 1618-1619.
    3. Ichikawa M, Tanaka M, Naritomi Y, Furue M: J Dermatol, 2013; 40: 306-307.
    22通常疥癬においてイベルメクチン内服時に外用薬の併用は必要ですか? (GL第3版追補より)※)

    22通常疥癬ではイベルメクチン内服でヒゼンダニの殺虫効果は十分であり、外用は不要です11)。皮疹に外用を希望する場合は、ワセリン、保湿薬などを用いることで十分です。 (GL第3版追補より)※)

    1. 定平知江子,天谷雅行,石河 晃:日皮会誌,2009; 119: 1845-1850.
    23イベルメクチン内服後に瘙痒や皮疹が一時的に悪化する頻度とその程度、治療法は? (GL第3版追補より)※)

    23頻度と程度は不明です。病理組織では好酸球増多を示すことがあります12)。ヒゼンダニの死体がアレルギー反応増強に関与するとの意見があります。したがって、初回投与後の一時的な瘙痒や皮疹の増加は治療薬が奏効している証拠ともとらえられるため、瘙痒には抗ヒスタミン薬内服、皮疹にはワセリン、保湿薬などを用い、ステロイド外用は行わないでください。1週間後の2回目のイベルメクチン内服は行ってもよいでしょう。 (GL第3版追補より)※)

    1. Ito T: J Dermatol, 2013; 40: 776-777.
    24イベルメクチンを2回目に投与する場合はいつ行えばよいですか? (GL第3版追補より)※)

    24ヒゼンダニの卵は3~5日で孵化しますが、イベルメクチンは卵には無効と考えられています。そのため1週間隔でイベルメクチンを投与すれば、1回目の投与時に卵があったとしても、2回目の投与時には幼虫か若虫になっています。そのため疥癬の重症度に関わらず、2回目は1回目投与の1週間後に投与してください。通常疥癬においても卵の存在を念頭に置き、1週間隔で2回投与が必要です。2回目を2週間後に投与すると、産卵によって卵が存在する場合があり、ヒゼンダニが駆除できません。 (GL第3版追補より)※)

    25イベルメクチン内服後、いつ頃から入浴/シャワーを行ってよいですか? (GL第3版追補より)※)

    25不明です。イベルメクチン内服4~8時間後、角質層でのイベルメクチン濃度は最高になり、以降低下していきます13)14)。イベルメクチンのヒゼンダニへの作用経路が経口か経体表か、必要な殺ダニ濃度はどれくらいかが明らかになっていないため、8時間程度は入浴を控えることが望ましいでしょう。 (GL第3版追補より)※)

    1. Haas N, Lindemann U, Frank K, Sterry W, Lademann J, Katzung W: Arch Dermatol, 2002; 138: 1618-1619.
    2. Baraka OZ, Mahmoud BM, Marschke CK, Geary TG, Homeida MM, Williams JF: Eur J Clin Pharmacol, 1996; 50: 407-410.

    治療法、治癒判定について

    26疥癬治療外用薬は発疹のある部分にだけ塗るのでしょうか?

    26ヒゼンダニは皮疹のないところにもいるので、通常疥癬では首から下の全身に、角化型疥癬では顔や頭も含めて全身にくまなく塗る必要があります。

    27かゆみがある間は、疥癬治療薬での治療が必要ですか?

    27ヒゼンダニが検出される間は必要ですが、検出されなくなれば疥癬治療薬ではなくかゆみ止めを使います。

    28症状がひどければ、ステロイドを塗ったり内服させるのですか?

    28免疫力が低下し、症状が悪化する可能性があるため、ダニが生きている間はステロイド薬を使ってはいけません。

    29疥癬に使われる薬剤はどのようなものがありますか?

    29ヒゼンダニを殺す目的の殺ダニ薬やかゆみを抑える止痒薬が用いられます。殺ダニ薬には外用薬と内服薬があり、止痒薬は内服薬が使用されます。

    30フェノトリン外用薬とイベルメクチン内服薬の併用の是非と使用法は? (GL第3版追補より)※)

    302剤の併用事例の報告が少ないので不明です。少数の報告例によると併用による副作用は認められず、難治の疥癬症例では治療期間が短縮すると思われます15)
    薬理学的にはピレスロイド系薬剤はヒゼンダニの神経細胞Naチャネルを開口し、Clチャネルは遮断することで、一過性に興奮させ、ヒゼンダニを死に至らしめます16)。イベルメクチンはClチャネルを開口し、麻痺させて死に至らしめます。フェノトリンとイベルメクチンはヒゼンダニの神経細胞に対して逆の作用を示すため、同時使用による作用減弱の可能性は否定できません。半減期の短いフェノトリン外用薬をまず塗布し、12時間以上経過した後に入浴して空腹時にイベルメクチンを服用する方法が作用減弱を回避できる可能性があります。しかし、虫体内での薬物動態を解明しなければ2剤の適切な投与間隔は判断できません。 (GL第3版追補より)※)

    1. 谷口裕子,伊藤算昭,松尾典子,大滝倫子:日皮会誌,2017; 127: 2469-2476.
    2. Forshow PJ, Lister T, Ray DE: Toxicol Appl Pharmacol, 2000; 163: 1-8.
    31フェノトリン、イベルメクチンはヒゼンダニの卵に対して殺卵効果はありますか? (GL第3版追補より)※)

    31殺卵効果は確認できていません。したがって、殺卵効果はないという前提で治療計画を立てるべきです。
    ダニではないがシラミでのデータでは、フェノトリンシャンプーはコロモジラミに対して卵の孵卵率は約10%(対照は約70%)になり、孵化した幼虫はほとんど吸血できませんでした(吸血阻害効果)17)。また、イベルメクチン外用薬0.5%(FDAでアタマジラミ症に承認、本邦未承認)は塗布後にアタマジラミの孵化率は減少しませんでしたが、孵化したシラミは48時間以内に死滅したと報告されています18)。このような文献はあるものの、ヒゼンダニでのデータは無いため、殺卵効果はないと考えておくのが良いでしょう。 (GL第3版追補より)※)

    1. 木村正昭,青木保彦,庄野美徳:アレルギーの臨床,2002; 22: 48-53.
    2. Strycharz JP, Berge NM, Alves AM, Clark JM:J Med Entomol, 2011; 48: 1174-1182.
    32治療することでヒゼンダニは死に、角質層中には死んだヒゼンダニが存在しますか?ガイドラインでは「ヒゼンダニの検出」が再治療の目安になっています。ヒゼンダニの生死を判断する方法はありますか? (GL第3版追補より)※)

    32ヒゼンダニの生死を判断する方法はありません。角質層は約1ヵ月で剥がれていくので、死んだヒゼンダニは約4週間でいなくなります。この後での最終確認が有用です。 (GL第3版追補より)※)

    感染予防について

    33疥癬の患者さんはすべて隔離しなければならないのでしょうか?

    33通常疥癬では隔離の必要はありません。隔離が必要なのは角化型疥癬だけですが、それも治療開始後1~2週間で十分です。

    34疥癬の患者さんの部屋には毎日殺虫剤を散布しなければならないのでしょうか?

    34通常疥癬では殺虫剤の散布は必要ありません。角化型疥癬の場合も毎日の散布は必要ありません。

    35疥癬の患者さんを介護するときはマスクが必要ですか?

    35必要ありません。

    36海外では大規模予防投与、集団治療(予防的治療)を行っていますが、それに対する見解は? (GL第3版追補より)※)

    36海外、特に途上国ではフィラリア症、オンコセルカ症などでイベルメクチンの一斉集団投与(mass drug administration:MDA)を行って、疥癬患者数が減少したとの報告があり、疥癬対策にも有効であるとの考えがあります19)~25)。しかし日本では患者やその周辺の人々への皮膚科医の対応が可能なので、MDAの必要はありません。
    日本や欧米では高齢者施設、病院、施設での予防的治療について報告されています26)~28)。施設や病院でのアウトブレイクの際に予防的治療を行う際は保険診療の対象外であり、十分なインフォームドコンセントが必要です。予防的治療を行っても新規発症者がいなくなるとは限らないことに注意が必要です。 (GL第3版追補より)※)

    1. Ottesen EA, Hooper PJ, Bradley M, Biswas G: PLoS Negl Trop Dis, 2008; 2: e317.
    2. Mohammed KA, Deb RM, Stanton MC, Molyneux DH: Parasit Vectors, 2012; 5: 299.
    3. Romani L, Whitfeld MJ, Koroivueta J, et al: N Engl J Med, 2015; 373: 2305-2313.
    4. Currie BJ: N Engl J Med, 2015; 373: 2371-2372.
    5. Krotneva SP, Coffeng LE, Noma M, et al:PLoS Negl Trop Dis, 2015; 9: e0004051.
    6. Mounsey KE, Bernigaud C, Chosidow O, McCarthy JS: PLoS Negl Trop Dis, 2016; 10: e0004389.
    7. Mitjà O, Marks M, Bertran L, et al: PLoS Negl Trop Dis, 2017; 11: e0005136.
    8. 大滝倫子,谷口裕子,牧上久仁子:臨皮,2005; 59: 692-698.
    9. 牧上久仁子,大滝倫子,佐藤康仁,山口直人:日衛誌,2005; 60: 450-460.
    10. Buehlmann M, Beltraminelli H, Strub C, et al:Infect Control Hosp Epidemiol, 2009; 30: 354-360.
    37疥癬の治療を開始した時点で他の人への感染は防げますか? (GL第3版追補より)※)

    37治療により生きたヒゼンダニは激減し、感染リスクは低下しますが、不完全な治療や、濃厚な接触による感染の可能性に配慮が必要です。
    ここでは推奨度Aのフェノトリン外用、イベルメクチン内服を用いた治療について記載します。
    フェノトリン外用、イベルメクチン内服ともに皮膚の角層中の濃度が約24時間後までにピークとなり、治療開始2日あればヒゼンダニはほとんど死んでいると考えられます。すなわち、外用ないし内服を行うと、翌日には疥癬トンネルの新たな伸長が止まり、トンネルの先端部にいるヒゼンダニは死んでいます(未発表データ)。なお、両薬剤とも殺卵効果は無いと考えられるため、生き残った卵が孵化した1週間後に再投与が必要です。また、フェノトリン外用薬は塗り残しのないように皮疹の無い部位も含めて全身に外用すること、イベルメクチン内服薬は空腹時に200μg/kg(体重)を1回で内服することを遵守させてください。また、患者家族に未治療の疥癬患者がいる場合など、再感染リスクも評価すべきです。
    ステロイド薬や免疫抑制薬投与中の患者、悪性腫瘍や糖尿病、透析中の患者、高齢者などでは免疫が低下した状態のことがあり、1回の薬剤投与では他の人への感染を防ぐことに不十分な場合があります。1週間隔で2回連続してヒゼンダニを検出できず、疥癬トンネルなど疥癬に特徴的な皮疹の新生が無いことを確認するまでは患者に他の人との濃厚接触は避けるよう指導すべきです。
    角化型疥癬では、厚い角質層が無くなり、1週間隔で2回連続してヒゼンダニを検出できず、疥癬トンネルなど疥癬に特徴的な皮疹の新生が無いことを確認すれば、他の人への感染は防げると考えます。なお、爪疥癬の治療が不十分のことがあるので、爪の検査を忘れずに行います。
    以上は、疥癬を発症した個人について基本的な考え方を述べたものです。集団発生において感染リスクを考える場合には潜伏期に入っている感染者が存在しうるため、集団発症の規模や集団内の個人のリスク因子、個人間の接触の程度などによりリスクは変化します。たとえ発症者全員が治療を開始したとしても新規患者が発生する可能性は存在することに留意してください。 (GL第3版追補より)※)

    38角化型疥癬患者の死亡時の対応は? (GL第3版追補より)※)

    38死亡してもヒゼンダニが多数いるので、死後の処置も角化型疥癬として対応します。葬儀社職員もゴム手袋と使い捨て白衣など着用してください。遺族感情に考慮して感染予防措置を行ってください。冷蔵することで卵まで死ぬかは不明です。ピレスロイド系殺虫剤散布をこまめに行ってください。遺体に殺虫剤を散布することで生きたヒゼンダニが激減し、感染予防効果が期待できると考えられますが、現在のところ科学的な根拠は得られていません。 (GL第3版追補より)※)

    ※:日本皮膚科学会疥癬診療ガイドライン策定委員会:疥癬診療ガイドライン(第3版追補). 日皮会誌, 2018; 128:2791-2801.

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