リネイルゲル10%の国内第Ⅲ相試験(M121101-03):検証的試験
「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等はDIをご参照ください。
試験概要
目的
第1趾の巻き爪を対象に、本剤と爪矯正具(巻き爪マイスター)※1を併用した際の有効性の検証及び安全性の評価を行う。
対象
同意が得られた12歳以上で、評価対象である第1趾の巻き爪の遠位爪幅狭小化率(以下、狭小化率;下図参照)が20%以上、50%以下の患者79例(リネイル群40例、プラセボ群39例)
試験デザイン
ランダム化、プラセボ対照、評価者盲検、並行群間比較、多施設共同試験
方法
第1日に評価対象の第1趾の巻き爪に爪矯正具を装着後、巻き爪周囲の皮膚を指定のマスキング材で保護した。巻き爪の爪甲全体に割りつけられた治験薬約0.5gを塗布後、指定の被覆材の不織布部位を爪甲に合うようにのせて、爪甲を含む第1趾を覆うように被覆材を貼付した。治験薬は、24時間後に除去し、第8日に爪矯正具を取り外した※2。
評価項目
有効性
- 第2日、第8日又は中止来院日※4の狭小化率
 - 第2日、第8日又は中止来院日※4の狭小化率の変化量
 - 治療期間4において、狭小化率が、再度50%以下になるまでの日数※5
 - 治療期間4における狭小化率50%以下への到達率※5
 

安全性
有害事象(自覚症状及び他覚所見)解析計画
有効性
- 各来院日の狭小化率を応答変数とし、投与群と来院日の交互作用を固定効果、患者を繰り返し測定単位としたうえ、患者内分散共分散の構造にUnstructuredを仮定したMixed-effects models for repeated measures(MMRM)を用いて解析した。この際、投与前値を応答変数に含め、各投与群の投与前値は等しいという制約をおき、自由度はKenward-Rogerで調整した。投与群ごとの各来院日の最小二乗平均値、標準誤差及びCIを算出し、対比を用いて、各来院日における投与群間の差の最小二乗平均値、標準誤差及びCI、及びP値を算出した。
 - 1)で用いた解析結果より対比を用いて、投与群ごとの各来院日の最小二乗平均値、標準誤差及びCIを算出した。また、各来院日における投与群間の差の最小二乗平均値、標準誤差、CI及びP値を算出した。
 - 治療期間1から治療期間4へ移行した患者においては、狭小化率が50%以下への到達をイベントとしたKaplan-Meier曲線を投与群ごとに示した。
 - 治療期間1から治療期間4へ移行した患者を対象に、狭小化率50%以下へ到達した患者の割合を投与群ごとに算出した。
 
※1 本剤を巻き爪マイスター以外の爪矯正具と併用した臨床試験は実施していない。
※2 巻き爪マイスター装着期間の設定:非臨床試験では、本剤除去後96時間経過時の爪の硬度が製剤塗布前の70%程度であったことから、本剤除去後も爪軟化作用が残存している可能性があると考え、国内第Ⅰ/Ⅱ相試験(M121101-02試験)において、巻き爪マイスターの装着期間を7日間と設定した。M121101-02試験において、10%アセチルシステインゲル塗布後、巻き爪マイスターを7日間装着した際の有効性が確認できたことから、本試験においても装着期間を7日間と設定した。
※3 本試験において、狭小化率70%達成患者を治療不要とする基準として設定した。
※4 治療期間1の中止来院日
※5 治療期間1から治療期間4へ移行した患者のみ
患者背景(FAS)
| リネイル群(N=40) | プラセボ群(N=39) | ||
|---|---|---|---|
| 性別:例数(%) | 男 | 8(20.0) | 10(25.6) | 
| 女 | 32(80.0) | 29(74.4) | |
| 年齢(歳) | 平均値±SD | 50.8±12.3 | 53.0±11.7 | 
| 中央値[最小値, 最大値] | 51.5[24, 79] | 54.0[29, 76] | |
| 狭小化率(%) | 平均値±SD | 40.23±6.66 | 40.21±7.06 | 
| 中央値[最小値, 最大値] | 42.40[20.5, 49.0] | 40.60[21.0, 50.0] | |
| 爪甲の厚さ(mm) | 平均値±SD | 1.40±0.32 | 1.37±0.31 | 
| 中央値[最小値, 最大値] | 1.40[1.0, 2.4] | 1.30[1.0, 2.3] | |
SD:標準偏差
試験デザイン及び各治療期間へ移行した患者の内訳

有効性の評価結果
第8日における狭小化率70%の達成率[主要評価項目](検証的解析結果)
第8日における狭小化率70%の達成率は、リネイル群で47.5%(19/40例)、プラセボ群で25.6%(10/39例)であった。群間差(95%CI)は、21.9%(0.6%~43.1%)であり、プラセボ群と比較して、リネイル群で有意に高く(P=0.0439、ピアソンのカイ二乗検定)、リネイルの有効性が検証された。

第Ⅲ相試験の主要評価項目の結果(FAS)
| 狭小化率 | リネイル群(N=40) | プラセボ群(N=39) | 
|---|---|---|
| ベースライン(平均値±標準偏差) | 40.2±6.7 | 40.2±7.1 | 
| 第8日(平均値±標準偏差) | 70.0±12.0(38例) | 61.9±10.7(35例) | 
| 第8日の70%達成率※1(例数) 〔主要評価項目〕  | 
			47.5%(19例) | 25.6%(10例) | 
| 群間差[95%CI] | 21.9%[0.6%~43.1%] | |
| P値※2 | 0.0439 | |
※1 欠測はノンレスポンダーとして補完された。欠測は、リネイル群2/40例、プラセボ群4/39例であり、欠測の理由は全て爪矯正具外れによる中止であった。
※2 ピアソンのカイ二乗検定
第2日、第8日又は中止来院日の狭小化率[副次評価項目]
第2日、第8日又は中止来院日の狭小化率の最小二乗平均値は、第2日では、リネイル群が68.40%、プラセボ群が66.08%、第8日では、それぞれ69.26%、61.67%であった。群間差の最小二乗平均値[両側95%CI]は、第2日で2.32%[-2.58%~7.22%]、第8日で7.59%[3.09%~12.10%]であった。第2日ではリネイル群とプラセボ群との間に有意差はみられなかった(P=0.3478、MMRM※1)。第8日ではリネイル群で有意に高かった(P=0.0012、MMRM※1)。
第2日、第8日又は中止来院日の狭小化率の変化量[副次評価項目]
第2日、第8日又は中止来院日の狭小化率の変化量は、各投与群の投与前値は等しいという制約の下で推定しているため、各来院日での群間差の最小二乗平均値、標準誤差、両側95%CI及びP値は、狭小化率の結果に一致した。第2日、第8日又は中止来院日の狭小化率の変化量の最小二乗平均値は、第2日では、リネイル群が28.18%、プラセボ群が25.86%、第8日では、それぞれ29.04%、21.45%であった。群間差の最小二乗平均値[両側95%CI]は、第2日で2.32%[-2.58%~7.22%]、第8日で7.59%[3.09%~12.10%]であった。第2日ではリネイル群とプラセボ群との間に有意差はみられなかった(P=0.3478、MMRM※1)。第8日ではリネイル群で有意に高かった(P=0.0012、MMRM※1)。
※1 全ての患者背景因子に投与群間で大きな不均衡は認められなかったため、共変量による調整を実施しなかった。
第2日、第8日又は中止来院日の狭小化率及びその変化量(FAS)
| 有効性評価項目 | 評価時期 | 投与群 | 例数 | 最小二乗平均値 (標準誤差)%  | 
			プラセボ群との群間比較 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 群間差 [両側95%CI]  | 
			P値※2 | |||||
| 第2日、第8日又は中止来院日の狭小化率※3 | 第2日 | リネイル群 | 40 | 68.40(1.79) | 2.32% [-2.58%~7.22%]  | 
			0.3478 | 
| プラセボ群 | 39 | 66.08(1.82) | ||||
| 第8日 | リネイル群 | 40 | 69.26(1.70) | 7.59% [3.09%~12.10%]  | 
			0.0012 | |
| プラセボ群 | 39 | 61.67(1.73) | ||||
| 第2日、第8日又は中止来院日の狭小化率の変化量※3 | 第2日 | リネイル群 | 40 | 28.18(1.74) | 2.32% [-2.58%~7.22%]  | 
			0.3478 | 
| プラセボ群 | 39 | 25.86(1.76) | ||||
| 第8日 | リネイル群 | 40 | 29.04(1.58) | 7.59% [3.09%~12.10%]  | 
			0.0012 | |
| プラセボ群 | 39 | 21.45(1.61) | ||||
※2 MMRM(共変量による調整は実施していない)
※3 第2日、第8日又は中止来院日の狭小化率及び狭小化率の変化量が欠測の場合、補完しなかった。また、中止来院日が第2日の基準日に最も近い場合、第2日のデータとして取り扱った。
治療期間4における狭小化率が再度50%以下になるまでの日数及び50%以下への到達率[副次評価項目]
第8日に狭小化率が70%に到達し矯正具を外した患者(リネイル群:18例、プラセボ群:10例)を対象に、狭小化率が再度50%以下になるまでの日数を評価した結果、狭小化率50%以下への到達をイベントとしたKaplan-Meier曲線は下図のとおりであった。
また、治療期間4における狭小化率50%以下への到達率は、リネイル群で11.1%(2/18例)、プラセボ群で60.0%(6/10例)であった。


*治療期間1から治療期間4に移行した患者
(参考)爪の厚さ別の治療期間1の狭小化率の経時推移[その他の解析:サブグループ解析]
治療開始日の巻き爪の厚さ別(1.4mm未満、1.4mm以上)の、治療期間1における狭小化率は下図のとおりであった。

安全性の評価結果
治験薬と関連あり
本試験において、リネイル群での治験薬に起因する副作用は報告されず、プラセボ群では15.4%(6/39例)であった。
爪矯正具と関連あり
本試験において、リネイル群で認められた爪矯正具と関連ありの副作用は15.0%(6/40例)であり、主な副作用は適用部位損傷及び適用部位疼痛でいずれも5.0%(2/40例)であった。プラセボ群で認められた爪矯正具と関連ありの副作用は38.5%(15/39例)であり、主な副作用は爪破損20.5%(8/39例)、疼痛7.7%(3/39例)、適用部位損傷5.1%(2/39例)であった。
| 治験薬と関連あり | 爪矯正具と関連あり | |||
|---|---|---|---|---|
| リネイル群 (N=40) n(%)  | 
			プラセボ群 (N=39) n(%)  | 
			リネイル群 (N=40) n(%)  | 
			プラセボ群 (N=39) n(%)  | 
		|
| 全体 | 0 | 6(15.4) | 6(15.0) | 15(38.5) | 
| 皮膚および皮下組織障害 | 0 | 1(2.6) | 0 | 8(20.5) | 
| 爪破損 | 0 | 1(2.6) | 0 | 8(20.5) | 
| 皮膚疼痛 | 0 | 1(2.6) | 0 | 1(2.6) | 
| 一般・全身障害および投与部位の状態 | 0 | 4(10.3) | 6(15.0) | 6(15.4) | 
| 適用部位損傷 | 0 | 1(2.6) | 2(5.0) | 2(5.1) | 
| 疼痛 | 0 | 3(7.7) | 0 | 3(7.7) | 
| 適用部位亀裂 | 0 | 0 | 1(2.5) | 0 | 
| 適用部位疼痛 | 0 | 0 | 2(5.0) | 0 | 
| 医療機器による疼痛 | 0 | 0 | 1(2.5) | 1(2.6) | 
| 感染症および寄生虫症 | 0 | 1(2.6) | 0 | 1(2.6) | 
| 爪囲炎 | 0 | 1(2.6) | 0 | 1(2.6) | 
副作用の種類はMedDRA/J version 23.0の器官別大分類、基本語を使用
- 7. 用法・用量に関連する注意
 - 本剤は皮膚刺激性を有するため、塗布部周囲の皮膚等に付着しないよう、テープ等を使用し皮膚を保護すること。
 - 14. 適用上の注意(抜粋)
 - 
	14.1薬剤使用時の注意14.1.3本剤を巻き爪マイスター以外の爪矯正具と併用した臨床試験は実施していないため、他の爪矯正具と併用する場合は、次の点に留意して用いること。
- 本剤は金属を腐食し、ニッケルを溶出させることがあるので、爪矯正具との適合性を考慮すること。
 - 爪矯正具を固定する素材(接着剤等)に対する本剤の影響の有無は確認していないため、爪矯正具の固定方法に注意すること。
 
14.1.4爪矯正具を装着後、テープ等で爪甲周辺の皮膚を保護してから本剤を塗布すること。その後、テープ等で爪甲を覆うこと。 
社内資料:巻き爪患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(承認時評価資料)



