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SDMを用いた乾癬診療


    SDM:Shared Decision Making

    SDMの概念について

    医療者が治療方針を決定する際に用いる代表的なアプローチは以下のように変遷してきました(図1)。すなわち、医師から患者さんへの一方通行ではなく、患者さんも診療に積極的に参加し、医師もそれを認めるというスタイルです。

    図1:医療方針決定法の変遷
    記事/インライン画像
    医療方針決定法の変遷

    その結果、SDM(共有意思決定、協働的意思決定などともいわれます)という、医療者と患者さんが情報や価値観を共有し、お互い納得の上で治療を選択していくプロセス、コミュニケーションが、治療上有用であることが分かってきました(図2)。

    図2:SDMのイメージ図
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    SDMのイメージ図

    乾癬でのSDMとは?

    乾癬治療全体の満足度を上げる要素

    乾癬でもSDMの実践により患者さんの治療満足度が向上していることが、以下の調査の結果で示されました(図3)。

    図3:乾癬治療全体の満足度を上げる要素
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    乾癬治療全体の満足度を上げる要素
    Q13
    現在の乾癬治療に関するどの要素が向上(改善)すれば、あなたの乾癬治療全般の満足度が上がると思いますか。
    下記の内容について影響度を教えてください。

    (回答)単一選択

    【方法】6か月以内に乾癬治療で医療機関に受診している患者さん503人を対象にWebアンケートを実施した。
    調査期間:2021年8月13日~8月16日、調査実施主体:マルホ株式会社(調査自体は株式会社マクロミルケアネットへ委託)、調査名:乾癬に関する調査、目的:SDMの重要性・必要性に関連する患者さんの乾癬診療における現状や希望の把握、項目:治療の意思決定の関与者、治療の満足度を上げる要素等、
    利益相反:あり(調査費の提供)

    すなわち、乾癬治療全体の満足度を上げる要素である「医師・医療スタッフとの診療コミュニケーションが充実する」と回答された患者さんの割合が78%と、「医療費が安くなる」と回答された84%に次いで多い結果となっていました。

    SDM実施の意義

    医療者と患者さんとの共有意思決定プロセスにより、
    ①患者さんの治療満足
    ②治療に対するモチベーション
    ③チーム診療体制の構築
    が期待できます(図4)。

    図4:SDM実施の意義
    ①患者さんの
    治療満足
    乾癬は現在さまざまな治療選択肢があり、症状がない状態を長期間保つこともできるようになってきました。一方で、通院や治療費の問題も存在しており、「皮疹=ゼロ」の患者さんが必ずしも治療に満足しているとは限りません。
    そこで重要なのが、患者さんとお互いの情報や価値観を共有した上で治療目標を決定し、治療を選択していくことです。
    ②治療に対する
    モチベーション
    長期にわたって治療が必要な疾患では、治療のモチベーションを維持することは容易ではありません。
    患者さんが治療に前向きに取り組むためには、納得して治療を開始することが何より大切です。
    ③チーム診療
    体制の構築
    SDMに決まったやり方はありません。医師のみならず、看護師や薬剤師、医療スタッフと協働し、チームとしてSDMを実施していくことも検討できます。
    そういった診療体制を構築することによって、より診察の負担軽減に繋がったり、患者さんとのコミュニケーションが充実する可能性があります。

    SDMの必須構成要素とThree-talkモデル

    ①少なくとも医療者と患者さんが関与すること
    ②両者が情報を共有すること
    ③両者が希望の治療について合意を形成する段階を踏むこと
    ④実施する治療についての合意に至ること
    の4点がSDMの必須構成要素として挙げられています1)
    SDMでは、これらに加えて意思決定のプロセスを重視します。
    下図
    1)チーム・トーク
    2)オプション・トーク
    3)ディシジョン・トーク
    という3つのステップで話し合いの内容を明確化したThree-talkモデルです(図52)
    医療者にはこのモデルに基づいて、患者さんの意思決定がより良いものになるように検討し続ける姿勢が望まれます。

    図5:Three-talkモデル
    記事/インライン画像
    Three-talkモデル
    中島 俊:週刊医学界新聞(通常号). 2021/5/24発行;第3421号, 医学書院.
    Elwyn G, et al.:BMJ. 2017;359:j4891.(PMID:29109079)を基に作成

    3つのトークは円状に循環しており、これは意思決定に関する3つのトークが単一的なものではなく、それぞれ影響を与え合っていることを表しています。

    1. Charles C, et al.:Soc Sci Med. 1999;49(5):651-61.
    2. Elwyn G, et al.:BMJ. 2017;359:j4891

    SDM実施のタイミング

    まず、SDM実施のタイミングを見極めるために、
    ①SDMが必要かどうか
    ②患者さんがSDMに向いているかどうか
    ③SDMを実施すべきタイミングがどうか
    を確認します。③については、医療者と患者さんそれぞれ複数の理由があります(図6)。

    図6:SDM実施のタイミング
    記事/インライン画像
    SDM実施のタイミング

    SDMチェックシート

    乾癬診療でご使用いただけるツールを2つご用意しております(図7)。下記のリンクより郵送も可能ですのでご活用ください。

    ①乾癬チェックシート(以下、チェックシート):すべての乾癬患者さんが使用する。

    ②あなたと一緒に考えたい 乾癬治療のNext stepと治療目標 最適な「My治療」を探すためのサポートツール(以下、小冊子):SDMを実施する患者さんが使用する。

    図7:実施の流れ
    記事/インライン画像
    乾癬チェックシート
    記事/インライン画像
    My治療

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