マーデュオックスの薬効薬理
作用機序
マーデュオックス軟膏は、マキサカルシトール(MCT)とベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(BBP)を配合した外用剤である。マーデュオックス軟膏は、活性型ビタミンD3誘導体であるマキサカルシトール(MCT)による細胞増殖抑制作用、分化誘導作用とステロイドであるベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(BBP)による抗炎症作用を有する。

マキサカルシトール(MCT)
マキサカルシトール(MCT)は活性型ビタミンDレセプター(誘導体)として、表皮内では、ビタミンD結合蛋白(DBP)に結合していない、遊離型が核内に取り込まれて作用する。ヒト表皮角化細胞のビタミンD受容体に対して親和性を示し1)、細胞核内に多く移行する2)ことが認められている。また、表皮角化細胞の増殖抑制作用3), 4)、分化誘導作用5)に加えIL-6産生抑制作用6)、リンパ球増殖抑制作用6)を有することが認められている。

DBPに対するビタミンD誘導体の結合能
1α,25(OH)2D3に対する相対値 | |
---|---|
MCT | 0.001 |
カルシポトリオール | 0.091 |
タカルシト—ル | 0.293 |
1α,25(OH)2D3(カルシトリオール) | 1 |
25(OH)D3(カルシフェジオール) | 129.785 |
試験方法
ヒト血清DBPに[26,27-3H]25(OH)D3を添加し、これにMCT、25(OH)D3、タカルシト—ル、カルシポトリオールおよび1α,25(OH)2D3を種々の濃度で加え競合的反応試験を行い、各薬物のDBPに対して50%結合する濃度から1α,25(OH)2D3を1とした場合の相対値を算出した。
社内資料:ヒト・ビタミンD結合蛋白に対する結合能(オキサロール軟膏承認時評価資料)
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(BBP)
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(BBP)は、標的細胞のグルココルチコイド受容体と結合し、炎症・免疫反応に関わる標的遺伝子の転写の活性化やNF-κB等の転写調節因子の活性化を直接阻害することで、炎症性サイトカインの産生抑制作用やT細胞等の増殖抑制作用を示す7)。
- 社内資料:ヒト・ケラチノサイトのビタミンD受容体に対する親和性
- 社内資料:乾癬患者皮膚でのケラチノサイトの核内への移行
- 社内資料:ヒト・ケラチノサイトへの増殖抑制効果
- Kondo, S., et al.: Arch. Dermatol. Res., 292(11), 550(2000)
- 社内資料:ヒト・ケラチノサイトへのインボルクリンmRNA誘導効果
- Komine, M., et al.: Arch. Dermatol. Res., 291(9), 500(1999)
- Adcock, IM.: Pulm. Pharmacol. Ther., 13(3), 115(2000)
非臨床試験
マキサカルシトール(MCT)の表皮角化細胞の増殖抑制作用
マキサカルシトール(MCT)は、濃度依存的に表皮角化細胞の増殖抑制作用を示した(in vitro)。

MCTの濃度依存性
p<0.001(Jonckheereの傾向性検定)
コントロール群 vs MCT群(濃度10-10〜10-6mol/L群)
p<0.001(Dunnett検定)
MCT群 VS 他3薬剤群(各濃度毎で比較、Dunnett検定)
vs 1α,25(OH)2D3群(濃度10-10〜10-8mol/L群)
p<0.001
vs 1α,25(OH)2D3群(濃度10-6mol/L群)
p<0.001 *
vs タカルシトール群(濃度10-11〜10-7mol/L群)
p<0.001
vs タカルシトール群(濃度10-6mol/L群)
p<0.01 *
vs カルシポトリオール群(濃度10-11〜10-7mol/L群)
p<0.001
vs カルシポトリオール群(濃度10-6mol/L群)
p<0.01 *
*:MCT高値
試験方法
培養ヒト表皮角化細胞に各被験薬(各10-11〜10-6mol/L)を添加し、4日間培養後に[3H]チミジンを添加した。さらに2日間培養後に細胞に取り込まれた[3H]チミジンを測定した。
社内資料:ヒト・ケラチノサイトへの増殖抑制効果(オキサロール軟膏承認時評価資料)
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(BBP)のクロトン油耳浮腫抑制作用
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(BBP)は、炎症局所において濃度依存的に抗炎症作用を示した(ラット)。

平均±標準誤差
n=20
*:p<0.05 t検定またはDuncanの多重比較検定法(vs コントロール群)
( )内の数値は、コントロール群と比較した抑制率
試験方法
2%クロトン油含有起炎剤及び種々の濃度の各被験薬を含んだ起炎剤25μLをラット右耳介内側に塗布した。塗布5時間後に無処置の左耳重量と比較し浮腫率を求め、さらにコントロール群の浮腫率と被験薬塗布群との浮腫率の比較から抑制率を求めた。
大森 健守ら:基礎と臨床, 24(11), 5847(1990)