実際に行われている装着手技のコツ、患者指導
このたび、マルホ(株)は巻き爪マイスターの使用実態を調査するためにアンケートを実施しましたので、その結果を報告します。
多数のご回答をいただき、誠にありがとうございました。
対象:巻き爪マイスターの装着経験がある医療担当者
期間:2022年2月3日~2月22日
方法:WEBアンケート
巻き爪マイスターの装着手技の実態
1. これまで巻き爪マイスターを何趾くらいに装着されましたか。
N=152

2. 巻き爪マイスターを装着いただいて、手技の難易度はどのようにお感じになられましたか。
N=127

使用経験者の約46%が、装着手技を比較的簡単と感じている一方で、重度の彎曲、肥厚爪など、巻き爪の形状によっては、Uフックを爪に引っかける手技の難易度が高いことがわかりました。
3. 巻き爪マイスターの使用方法の中で手技が難しいと感じた工程はどこですか。(複数選択可)
N=127

4. 前問で選択いただいた工程が難しいと感じた理由を教えてください。
( )は回答数
重度の彎曲、肥厚爪など、巻き爪の形状によっては装着が難しい(41)
- 爪の彎曲が強いと引っかけづらい。爪の曲がりが強すぎて、なかなか装着しにくい。彎曲が強い場合、力がいる。
- 爪甲肥厚の場合ぐらぐらすることがある。爪の厚みなどでうまくフックで固定できない。ある程度爪が伸びていないと装着できない。左右で遊離縁の長さが異なると巻き爪マイスターが斜めに装着されてしまう。
コイルばねを伸ばしすぎると破損しそうになる(14)
- 5で、引っ張りすぎてばねが壊れることがある。金属が変形しやすいため力加減が難しい。爪の彎曲と巻き爪マイスターの彎曲が合わず、フックをかけにくく、無理をするとフック部が曲がってしまう。
引っかけたUフックが見えにくかったり、痛みが生じたりするため、固定しづらい(13)
- 専用工具のはさむ部位の下側がやや厚く、爪の下に挿入すると痛みを訴える方がいる。爪が埋まっていてかけるのが難しい場合が多かった。どこを潰せば良いかわからない。はさみづらく手間取り患者様が嫌がったりする。
Uフックが爪に引っかかりにくい(12)
- 爪が皮膚に食い込んでいることが多いため金属を引っかけにくい。角度をうまくあわせるのに苦労をしている。
Uフックを固定する力加減が難しい(10)
- 固定がきちんとできているかわかりにくい。爪が柔らかく、フックを締めると爪が割れるケースあり。固定できているか不安。
伸ばしたとき反対側のUフックがずれる(9)
- Uフックが厚いので側溝から挿入は難しく、爪の先端から斜めに装着しようとすると、最初のフックが外れたりする。
コイルばねの弾力が強いため工具での把持が難しい(7)
- 反対側を引っかけようとするとばねが飛んで外れてしまい、つけ直そうとしたらフックがよじれてきて難儀した。
実際に行われている装着手技
5. 前問で記入いただいた問題を解決するため、工夫されていること、注意されていることを教えてください。
① 適応となる爪を見極める
- 爪をしっかり伸ばして、適応を見極める。無理に当日につけず、後日、爪が伸長してから再度取りつける。
- ややもろさを感じる爪甲の場合は装着を見合わせるか、Uフックを締めすぎないようにしている。
② 角質をしっかり除去する、爪の厚みを調節する
- 爪の汚れを事前にしっかり落として少しでもはさみやすくする。
- 爪が厚い場合には少し削って薄くしてから装着する。
角質や汚れを取り除いてから測定することで、より正確な爪幅が測定できます。
③ Uフックを引っかけるときは、コイルばねに指を軽く添える、Uフックを上部からつかむ
- 引く方向に注意して押さえながらばねを引っ張るようにしている。
- なるべく初めにコイルばねを伸ばしてから手で押さえて余裕をもって引っかけるようにしている。
- 看護師が最初に固定したUフックをさらに保持してばねが跳ね回らないようにしている。
本品の装着における最も難易度が高い部分ですが、下記のポイントにご留意いただくことで、格段に装着しやすくなります。
- 最初にコイルばねを軽く伸ばしてください。そうすることで、ばねにかかる負担を分散させ、破損を防ぐことができます。
- 爪の彎曲に合わせて、指を軽く添えてください。そうすることで、巻き爪マイスターが安定します。
- 専用工具でUフックをつかむときに、上部からつかんでください。彎曲の強い爪でも引っかけやすくなります。
- 爪側縁から引っかけにくい場合は、前縁から引っかけてください。コイルばねの伸ばしすぎによる破損を防ぐことができます。



④ 爪を持ち上げる・皮膚を引っ張る
- 爪をペアンで軽く持ち上げてUフックにきちんとはまるように調整している。
- 皮膚をテープで引っ張り工夫している。

事前のテーピングを行ったり、マイスターエイドのアタッチ側を使って爪を持ち上げることで、Uフックを引っかけやすくなります。
また、爪アイロン法*を先に行うことで、装着しやすくなる場合もあります。
*モスキート鉗子などの片側をライターなどで熱し、彎曲部分をはさんで持ち上げる方法。
⑤ その他のコツ:無理せずつけ直す、装着箇所を視認する
- これまでは何度かやり直すことで装着できている。装着時に巻き爪マイスターをゆがませないように注意している。
- 左右の挿入順を事前に確認、シミュレーションする。拡大鏡で確認するようにしている。


専用工具によるUフックの把持が難しい場合は、固定機能付き鉗子(無鉤)を使用してUフックを把持すると、Uフックを深い角度に引っかけやすくなります(上図)。
*Uフックを潰して爪に固定する作業は、必ず専用工具を使用してください。
患者指導の実際
患者指導では、テープによる固定、正しい爪切りが最も重視されていました。
6. 装着後の患者指導はどのような内容を重点的に実施されていますか?(複数選択可)
N=127

- ばねが爪からよく外れるのでテープ固定をしっかりするように説明している。
- 不潔にならないよう、爪を毎日洗うように説明している。爪が伸びた時の対応や、外れることを患者さんが心配されるので固定や爪切りについて説明している。
- 軽めの保湿をすることで爪が割れにくくなる。
- 爪切りの仕方は今後の再発予防に非常に重要と考える。
- 乾燥した爪は割れやすく、保湿と清潔を保持すれば治療効果が出やすい。
7. 装着した巻き爪マイスターが外れてしまわないために、装着手技や患者指導において工夫されていることを教えてください。
テープで固定する、テープを剥がす際の注意を指導する
- 必ずテープを貼る。固定を確実に行う。
- 高齢者だったのでテープ固定は受診時にしており、患者さんは触らないように指導した。
- 固定テープを直接当てずガーゼを当てて貼るように指導している。
- テープ交換を乱暴にしないよう説明する。
診察頻度を増やす
- わからないことや不安なことがあれば必ず来院して相談していただくようにしている。
- 頻回に見せてもらう。2週間に一度再診にて再固定する。
- 交換が難しそうな患者は、定期的に来ていただき、こちらでテープ交換する。
激しい運動を控える、爪への負担を抑える
- テープの重要性と、激しい運動をしないように患者指導を行う。
- できるだけ安静。
- 正座しないで 先の細い靴をはかないで など
なるべく近位部に装着する
- 可能な限り近位側に装着する。
- 少し緩くなったと感じたときはできる範囲でフックを根元の方にずらしていただくように伝えている。
Uフックをしっかりと固定する
- 器具がしっかりついたら外れないか最終確認している。
- 接着剤で固定。
- アクリルで固定してしまう。
巻き爪マイスターが外れないために
〈マルホ開発担当より〉
*しっかりとUフックを固定いただくようお願いします。
〈Uフックを締める際のポイント〉
- ❶必ず爪がUフックの奥まで入っていることを確認してから締めてください。
- ❷コイルばねが潰れないよう、専用工具のくぼみに必ず合わせてUフックを潰してください。
- ❸目安として、爪が割れない程度に、専用工具の柄の部分がカチッとくっつくまで、ゆっくり締めてください。
- ❹専用工具を斜めに差し込むと痛みや破損の原因となるため、真正面から差し込んで締めてください。
- ❺固定の際、専用工具で確実にUフックをはさみ込むことをご確認ください。

*超弾性合金ワイヤがコイルばね内部で引っかかったら、指で押して引っかかりをなくしてください。

*テープの固定について、必ず患者指導をお願いします。
〈テープ固定のポイント〉
- 交換時はできるだけつま先側から剥がすようにご指導ください。
- 患者さんの背景に応じて粘着性の高いテープを使うこともご検討ください。ただしその場合、交換の際に製品が外れてしまうことがありますので、テープを交換する頻度を調整いただきますようお願いいたします。
〈テープ交換の頻度〉
- 特に決められた頻度はありませんが、季節や患者さんの生活背景を考慮いただき、1日1回~週1回など、清潔の保たれる範囲でご指導ください。

*製品に同封されている指導せんを患者さんに必ずお渡しいただきますようお願いします。

使用経験者からの疑問点
8. 巻き爪マイスターの装着方法や患者指導について、不明点や疑問に思ったことがあれば、ご記入ください。
- いつまでやれば矯正が完了するのか。再発の可能性について。
-
マルホ回答:矯正治療は対症療法ですので、根本的な原因を取り除かない限り、再発することもございます。その点を患者さんにご説明いただき、彎曲や痛みといった症状が回復し効果に納得いただけた段階でいったん器具を外す、また爪が巻いてきたら矯正する、といったように、体のメンテナンスの一環として、矯正治療で巻き爪をコントロールいただければと存じます。
- 爪幅が19.5mmなど、サイズが境目の時の選び方は?
-
マルホ回答:小さいサイズを選択すると、装着時に製品を伸ばしすぎてしまうことがあり、破損につながりやすくなるため、本品の取り扱いに慣れていない場合や爪の彎曲の程度が強い場合はできるだけ大きいサイズをご選択ください。
*特に、SSサイズやSサイズは、構造上コイルばねの伸縮可能な範囲が狭いため、伸ばし過ぎると破損しやすくなります。ただし、大きいサイズは、装着することで製品が爪甲から浮いてしまい、装着後に外れやすくなることもあります。各サイズの推奨爪幅は目安ですので、正確に爪幅を測定いただいた上で、装着する爪の形状や状態により適切なサイズをご選択ください。また、「巻き爪マイスターが外れないために」を参考に外れ対策をご検討ください。
これから巻き爪マイスターを使い始める医師・看護師へのアドバイス~使用経験者より~
9. これから巻き爪マイスターを使い始める医師・看護師にアドバイスをお願いします。
回数をこなすこと
- 爪は十人十色でやっていくしかない。慣れるまではそれなりに時間がかかると思う。
- 実践あるのみ。いろんな爪を見てやったほうがいい。習うより、慣れろ。
- 装着に時間はかからないが、慣れるにはかなり数をこなす必要があるのではないかと思われる。
手技についてのアドバイス
- 固定をしっかりとすることが重要だと思う。
- 爪周囲の汚れ除去等の準備が重要。
- ベッドで高さを上げて装着しやすい状態で行う、角質除去を行う。
装着可能な爪の見極めが大事
- 爪の厚さ、もろさ、彎曲の程度など総合的に判断しないと、矯正が強すぎて反りすぎたり、爪が割れたりするので、巻き爪マイスターが適応かどうか毎回判断して決定している。
- 爪の形により、巻き爪マイスターに向いている場合と他の治療法を選択した方が良い場合があると思う。
- 深爪、肉芽形成、浸軟した爪には適応にはならない。
導入時の説明が重要
- 初診時に時間をかけてムンテラする。
- 正しい歩き方の指導。爪水虫があった場合にはあまり効果が出ないため、治療してから矯正を。ちゃんと装着すると痛みが取れて喜ばれることが多い。慣れると装着が簡単になるし、固定用テープで固定すると本当に取れないから後が楽に指導できる。もっと普及して良いと思う。
- 恐れず挑戦。院内の装着基準を設けておくこと。患者説明を十分に行い、同意を得て開始する。同意書を取っておくこと。