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巻き爪・爪白癬診療から始めるフットケア戦略


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    巻き爪・爪白癬診療から始めるフットケア戦略

    監修医(池上 隆太先生)からのメッセージ

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    監修医(池上 隆太先生)
    監修
    医療法人 池上皮膚科 院長池上 隆太先生

    私は以前の勤務先にて、糖尿病性足病変による下肢切断リスクの高い患者さんに対し、重症化予防を目的とした専門的なフットケアに携わってまいりました。開業してからは、巻き爪や爪白癬、胼胝などの比較的軽症例の患者さんを診る機会が多くなりましたが、過去に重症化された患者さんの治療の苦痛を目の当たりにしてきた経験から、「重症化を未然に防ぐ」という理念に基づき、足のケアには特に力を入れ、日々の診療に取り組んでおります。
    本Webサイトでは、日常診療で特に多い巻き爪と爪白癬に焦点を絞り、当院が実践するフットケアへの具体的な取り組みについて解説いたします。

    小さな異変を見逃さない!全医療者に求められるフットケアの視点

    足や爪のトラブルが悪化して感染や潰瘍を生じると、治療期間が長期にわたり、最悪の場合下肢の切断に至るケースがあります。巻き爪や爪白癬をはじめ、陥入爪や一見軽症に見える胼胝や鶏眼がきっかけで重症化することもあるため、早期段階で積極的に治療に介入することが求められます。

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    巻き爪部に生じた糖尿病性足潰瘍の症例
    巻き爪部に生じた
    糖尿病性足潰瘍の症例
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    糖尿病の患者で、巻き爪部に骨に達するピンホール状の潰瘍を認めた症例
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    糖尿病の患者で、巻き爪部に骨に達するピンホール状の潰瘍を認めた症例
    糖尿病の患者で、巻き爪部に骨に達するピンホール状の潰瘍を認めた症例
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    鶏眼に生じた糖尿病性足潰瘍の症例
    鶏眼に生じた糖尿病性足潰瘍の症例
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    爪白癬から細菌感染を生じて骨髄炎に至っている症例
    爪白癬から細菌感染を生じて
    骨髄炎に至っている症例
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    胼胝に生じた糖尿病性足潰瘍の症例
    胼胝に生じた
    糖尿病性足潰瘍の症例
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    胼胝下に潰瘍を生じている症例
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    胼胝下に潰瘍を生じている症例
    胼胝下に潰瘍を生じている症例
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    足白癬から細菌感染を生じて壊疽に陥った症例
    足白癬から細菌感染を
    生じて壊疽に陥った症例
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    糖尿病性壊疽 血流障害を伴い足趾が壊死している症例
    糖尿病性壊疽
    血流障害を伴い足趾が壊死している症例

    写真提供:医療法人 池上皮膚科 院長 池上隆太 先生

    患者さんが軽症だと思っていても、実際は虚血が生じていたり、骨髄炎まで発症していたりすることもあります。また、重症の血流障害や感染があると、あっという間に症状が悪化するため、早い段階で専門機関に紹介しなければなりません。このように、私は日々の診察において、“ゲートキーパー”としての役割を意識し、小さな異常でも見逃すことが無いような診療を心がけています。

    • 池上皮膚科におけるフットケア
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    池上皮膚科におけるフットケア

    「たかが足の爪」ではない。足・爪の異常と転倒リスクの関連性とは

    • 足や爪に異常があると、下肢機能の低下1, 2)や転倒リスクを高める3, 4)ことが報告されています。
    • また、転倒は介護導入のリスク因子にもなります。2022年の国民生活基礎調査5)では、介護が必要になった主な原因に、第1位 認知症、第2位 脳卒中、第3位に骨折・転倒がランクインしており、要介護度別の全項目でも2位または3位と上位を占めています。
    • 性別にみた、足部の問題・ケアと転倒経験との関連(改変)3)
    男性 女性
    転倒経験者の
    割合(有効%)
    調整
    オッズ比 ※1
    95%
    信頼区間 ※1
    転倒経験者の
    割合(有効%)
    調整
    オッズ比 ※1
    95%
    信頼区間 ※1
    爪の肥厚・変形
    なし 15.9 1.00 1.45-2.05 20.5 1.00 1.26-1.74
    あり 26.8 1.72 31.7 1.48

    従属変数:過去1年間の転倒経験の有無
    ※1 年齢、老研式活動能力指標得点(実施状況)、疾病の状況、運動器の機能向上に関する基本チェックリスト3項目(階段、椅子立ち上がり、15分歩行)で調整
    【調査概要】2007年に合計3か所の自治体で実施された地域支援事業に関する調査に回答した高齢者10,581例(男性4,735例、女性5,846例、平均年齢75.2歳)の連結不可能匿名データを2次解析したもの。介護予防に関連した10分野の内容について、合計約130項目で評価する調査の一部。

    • 要介護度別にみた介護が必要となった主な原因(上位3位)
    (単位:%) 2022(令和4)年
    現在の要介護度 第1位 第2位 第3位
    総数 認知症 16.6 脳血管疾患(脳卒中) 16.1 骨折・転倒 13.9
    要支援者 関節疾患 19.3 高齢による衰弱 17.4 骨折・転倒 16.1
    要支援1 高齢による衰弱 19.5 関節疾患 18.7 骨折・転倒 12.2
    要支援2 関節疾患 19.8 骨折・転倒 19.6 高齢による衰弱 15.5
    要介護者 認知症 23.6 脳血管疾患(脳卒中) 19.0 骨折・転倒 13.0
    要介護1 認知症 26.4 脳血管疾患(脳卒中) 14.5 骨折・転倒 13.1
    要介護2 認知症 23.6 脳血管疾患(脳卒中) 17.5 骨折・転倒 11.0
    要介護3 認知症 25.3 脳血管疾患(脳卒中) 19.6 骨折・転倒 12.8
    要介護4 脳血管疾患(脳卒中) 28.0 骨折・転倒 18.7 認知症 14.4
    要介護5 脳血管疾患(脳卒中) 26.3 認知症 23.1 骨折・転倒 11.3

    1) Imai A, et al: Int J Dermatol, 2011; 50: 215-220. 
    2) 今井亜希子: MB Derma, 2016; 243: 40-46.
    3) 原田和弘, ほか:日本公衛誌, 2010; 57(8): 612-623.
    4) 加藤豊範, ほか:Prog Med, 2020; 40: 425-429.
    5) 厚生労働省:令和4年(2022) 「国民生活基礎調査の概況」

    日常診療でよく遭遇する巻き爪や爪白癬による爪の変形や肥厚は、転倒のリスク因子となり得ます。また、転倒がきっかけで介護が必要になるケースもあります。
    足や爪を健康に保ち、歩行機能を維持することが非常に重要です。
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    巻き爪と爪白癬、それぞれの治療戦略とは?

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    巻き爪は早期治療・早期改善で患者QOLの向上を目指す

    モデル症例A

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    モデル症例A

    巻きの程度はそこまで強くないものの、歩くときや靴を履いたときに痛みがあり受診。「はやく痛みをなくしてほしい。日常生活が不便である。」とのこと。

    治療例
    軽度な巻き爪でも、痛みによって日常生活に支障をきたしている状態です。
    リネイル®ゲルを併用した矯正治療で早期に巻き爪を改善させることを検討します。

    • 少しの痛みや違和感でも早期の治療介入を

    巻き爪の痛みを避けるため、無意識に患部に体重がかからない姿勢をとることで、身体の重心バランスが崩れ、歩行などの日常動作に支障が生じます。その結果、歩くのを控えるようになり、地面からの適度な圧力が失われることで、さらに巻き爪が進行するという悪循環に陥ります。このような事態を防ぐためにも、早期段階で矯正治療を開始することが推奨されます。また、巻き爪が重症化して陥入爪を併発すると、矯正器具の装着が難しくなるケースもあります。そのため一見軽症に見える場合でも、早期の治療介入が極めて有効です。

    • 軽度の巻き爪から使用しやすい 「巻き爪マイスター®

    巻き爪マイスター®は、上記症例などの軽度~中等度の彎曲具合であれば良い適応になると考えます。彎曲が強い場合は巻き爪マイスター®の装着が難しいケースもあるので、当院ではまず超弾性ワイヤから開始して、彎曲が改善されてきたら巻き爪マイスター®に切り替えることもあります。

    巻き爪マイスター®を装着した症例

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    巻き爪マイスター®を装着した症例

    写真提供:医療法人 池上皮膚科 院長 池上隆太 先生

    • リネイル®ゲルを併用して患者満足度を高める

    リネイル®ゲルを爪矯正具と併用することで、爪の彎曲が矯正具単独の治療と比べて早期に改善することが臨床データで報告されています6)。また、再発までの期間を延長することも期待できます6)。これらは患者さんのニーズと合致していますが自由診療となるため、費用対効果を説明して患者さんの納得感が得られるような提案を行っています。

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    リネイル®ゲルの併用によって巻き爪を早く治せることは、患者さんにとって大きなメリットになり得ると考えます。この治療によって、高齢の方で引きこもりがちだったのが外出するようになった、足が痛くてやめていたゴルフがまたできるようになったなどの嬉しいお声がありました。ADLとQOLの向上に貢献できることは、我々医療者にとって何よりのやりがいです。
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    6)社内資料:巻き爪患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(承認時評価資料)

    自信を持って治療を始めるために活用する爪白癬菌抗原キット

    モデル症例B

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    モデル症例B

    前医にて、臨床所見で爪白癬を疑いKOH直接鏡検法を実施したが陰性。
    経過観察しているが、症状は改善せず。

    治療例
    KOH直接鏡検法で白癬菌が見つからなくても、臨床所見で爪白癬が強く疑われる場合は、確実な診断のためにデルマクイック®爪白癬を用いた検査を追加で検討します。

    • 確定診断の重要性

    視診のみで真菌症と判断し、抗真菌薬を処方する事例が一部見受けられますが、これは原則として不適正な診療行為であることを認識する必要があります。
    副作用のリスクや適正使用等の観点を鑑みると、まずはKOH直接鏡検法を行ってから治療に進むことが不可欠です。正確に診断されないと、不要な治療を行うことになり、また、医療経済的にもマイナスになる可能性があります。

    • KOH直接鏡検法のピットフォール

    KOH直接鏡検法のための検体採取は、白癬菌の存在箇所の見極めが重要です。爪甲下型の爪白癬では、菌が深部に及ぶことが多いため、できるだけ爪の基部に近い深部(爪床に近い部位)を検査材料とすることがポイントです。一方、表在性型の爪白癬では感染が表層に限局するため、爪の表面からの採取が適切です。これを怠ると鏡検像ではっきりとした菌要素を確認できず見落としに繋がります。PAS染色を用いた爪甲生検(Bx/PAS)と比較したKOH直接鏡検法の陰性的中率が55.9%、58%であったという報告もあります7, 8)

    • KOH直接鏡検法の診断補助として有用なデルマクイック®爪白癬

    KOH直接鏡検法でも判断に迷う場合、デルマクイック®爪白癬の使用を検討します。患者さんに、「2つの検査で、白癬菌は存在しませんでした」と伝えたり、判定結果を見せながら「白癬菌がいることが確認できました」と言えたりできるので、検査結果の信頼性も高まります。
    また、5分後から判定ができますので、外来の中で使用できるのもメリットのひとつです。

    <参考>
    爪白癬が疑われた症例にデルマクイック®爪白癬を使用した症例

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    デルマクイック®爪白癬の検査結果:陽性

    デルマクイック®爪白癬
    の検査結果:陽性

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    デルマクイック®爪白癬の検査結果:陰性

    デルマクイック®爪白癬
    の検査結果:陰性

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    2025年12月に公表された皮膚真菌症診療ガイドラインには、デルマクイック®爪白癬は「爪甲中の白癬菌抗原を検出するため、菌要素の形態によらず検出でき、直接鏡検における見落としを防ぐことができる」と掲載されています9)

    デルマクイック®爪白癬の使用により、正確かつ早期の診断と適切な治療に繋がることが期待できます。陰性であれば、爪白癬以外の疾患を疑って新たな治療戦略を練ることも可能です。
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    7) Velasquez-Agudelo V, et al: BMC Infect Dis, 2017; 17(1): 166-176.
    8) Weinberg JM, et al: J Am Acad Dermatol, 2003; 49(2): 193-197.
    9) 福田知雄, ほか:日皮会誌, 2025; 135(13): 2511-2566.

    患者指導のポイントと日常診療における効率化の工夫

    • 巻き爪について

    予防のためには、正しい歩き方を身に付けることや、靴の選び方が重要ですので、パンフレットと併せて説明しています。
    足の横アーチが低下している方にはサポーターを紹介したり、胼胝ができて痛がっている方には、100円ショップなどで簡単に入手できるパッドを紹介することもあります。
    足変形があり、靴から見直す必要のある患者さんには、義肢装具士さんを紹介して、インソールを作っていただいたり、専門医を紹介したりします。

    • 爪白癬について

    白癬への対応を含めてまとめられたパンフレットを患者さんにお渡しして、その内容をもとに指導をしています(例:靴をこまめに干す、スリッパやバスマットは共有しない、足を清潔に保つ など)。
    爪白癬の検査の際は、診療の効率化を目的に、あらかじめ爪検体を多めに採取しておき、KOH直接鏡検法とデルマクイック®爪白癬の検査に備えるようにしています。
    検査結果が出るまでの間は次の患者さんを診察し、検査が終わり次第、結果をお伝えします。

    マルホ株式会社作成
    巻き爪患者さん向け小冊子

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    マルホ株式会社作成 巻き爪患者さん向け小冊子
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    当院における爪白癬診断フロー

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    当院における爪白癬診断フロー
    • 最後に

     巻き爪や爪白癬のような爪病変1つだけを主訴に受診されたとしても、フットケアの観点からは爪以外にも病変がないかを意識することが重要だと考えます。
     例えば、「巻き爪が痛くて受診しました」と言われて足を診ると、実は外反母趾も患っていたというようなケースがあります。巻き爪には様々な要因が複雑に絡み合って発症しているため、矯正治療だけでは改善が乏しい場合は外反母趾に対する治療も必要になってきます。また、糖尿病の患者さんでは、巻き爪や爪白癬を契機として潰瘍、壊死へと進行するケースもあります。

     このように、爪のほかにも、足の甲や裏をしっかり目で見て異常がないかを確認し、実際に足を触って皮膚の温度などにも目を配り、重症化予防、早期発見に取り組むことが求められると思います。

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