ざ瘡の疫学・病態
ざ瘡1, 2, 3, 4)
ざ瘡の疫学
ざ瘡はいわゆる「にきび」のことで、10~30歳代までの思春期~青年期の男女に多くみられ、90%以上の人が経験するとされる毛包脂腺系の慢性炎症性皮膚疾患の1つです。
ざ瘡の病態
顔面、背部、前胸部などの脂漏部位に好発します。
初発疹は面皰(めんぽう)とよばれ、毛包内に皮脂が貯留した状態を指します。炎症を欠き、自覚症状はありません。
面皰は、毛孔が開口して黒色を呈する開放面皰、皮膚内に黄白色の小結節がみられる閉鎖面皰の2つに分類されます。
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閉鎖面皰に炎症が加わると、紅色丘疹や膿疱などの炎症性皮疹に進展します。
さらに炎症が拡大すると、皮下に袋状に膿が貯留した嚢腫や、結節が生じます。
強い炎症を伴い、組織破壊が進んだ症例では、炎症が軽快した後も肥厚性瘢痕や陥凹性瘢痕が残ることがあります。
ざ瘡は、面皰、紅色丘疹、嚢腫、結節などの様々な病期の皮疹が混在して認められるのが特徴です。
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ざ瘡の病因
ざ瘡の病因として、ホルモンバランス、皮脂の過剰産生、角化異常、細菌感染の4つの因子が重要です(図)。
これに加え、遺伝性因子や年齢、食事、ストレス、化粧品などの外的因子が複雑に関わっています。
- ホルモンバランス:思春期の内分泌変動により血中のアンドロゲンが増加し、皮脂腺の機能が亢進することで皮脂の貯留、細菌増殖が起こりやすくなります。
- 皮脂の過剰産生:皮脂の過剰産生、組成やその分解産物によって角化異常や細菌感染が生じやすくなります。
- 角化異常:細菌が皮脂に含まれるトリグリセリドを分解すると遊離脂肪酸が生成され、遊離脂肪酸が毛漏斗部を刺激することで角化が引き起こされます。さらに体質や不潔が加わると、毛漏斗部が角質で塞がれるため皮脂が貯留し、面皰が形成されます。
- 細菌感染:毛漏斗部の常在菌であるCutibacterium acnes などが皮脂中のトリグリセリドを分解し、遊離脂肪酸が生成されます。遊離脂肪酸、毛漏斗部の常在菌が毛包を破壊することで炎症反応が誘発されます。
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- 清水宏:あたらしい皮膚科学 第3版. 中山書店, pp363-365, 2018
- 落合慈之 監修, 五十嵐敦之 編集:新版 皮膚科疾患ビジュアルブック. 学研メディカル秀潤社, pp299, 302, 2012
- 岩月啓氏 監修, 照井正, 石河晃 編集:標準皮膚科学. 医学書院, p49, 2000
- 天野宏敏ほか:医学検査. 68(2);339-346, 2019