アメナリーフ

講演1 新規帯状疱疹治療薬 アメナリーフ錠とは?


富山大学大学院医学薬学研究部 ウイルス学教授 白木 公康 先生

新規抗ヘルペスウイルス薬アメナリーフ錠

これまで、アシクロビル、ソリブジン、ファムシクロビル、ファビピラビル(抗インフルエンザ薬)等の抗ウイルス薬の開発に携わり、アメナメビルについても薬理試験等を実施した。今回、帯状疱疹の病態を踏まえた基礎的な観点から、アメナメビルの薬理作用を解説する。

帯状疱疹の病態-帯状疱疹の症状は免疫応答-

水痘・帯状疱疹ウイルス(以下、VZV)感染症の発症機序は、同じウイルス感染症でも、インフルエンザとは大きく異なる。インフルエンザウイルスが気道に感染すると、自然免疫を介してサイトカインが産生され、2~3日で発熱などの症状が出る。つまり、インフルエンザウイルス自体が症状を引き起こしていると言える。ところが、VZV感染症は宿主の免疫応答が症状を引き起こす。水痘を例にみると、健康小児では約14日の潜伏期の後に発症するが、白血病罹患児では、1ヵ月を過ぎてやっと水疱が発現することが多い。発症までの期間は免疫能の程度に左右され、ウイルス増殖に対する免疫応答能が低いと、皮膚病変が遅れて発現する。このように、水痘や帯状疱疹の症状の形成には宿主の免疫応答が深く関係している。

既存薬(核酸類似体)のDNA合成阻害機序

これまでに開発された抗ヘルペスウイルス薬は、いずれもDNA合成を阻害することで作用を発揮する。アシクロビルやペンシクロビルは核酸類似体であり、ウイルス由来のチミジンキナーゼなどの酵素によってリン酸化された後に、核酸のデオキシグアノシン3リン酸(dGTP)と競合拮抗してDNA鎖に取り込まれ、DNA合成を停止させる。

アメナメビルのDNA合成阻害機序と種特異性

アメナメビルは従来の核酸類似体の薬剤とは異なり、ウイルスのDNA合成に必須の酵素であるヘリカーゼ・プライマーゼ複合体に直接作用してウイルスのDNA合成を阻害する(図1)。

図1 抗ヘルペスウイルス薬の作用点

抗ヘルペスウイルス薬の作用点

ヘリカーゼは2本鎖DNAを1本鎖DNAにほぐす酵素であり、プライマーゼはDNA合成の起点となるRNAプライマーを合成する酵素である。

ヘリカーゼ及びプライマーゼは、ヒトを含めたDNA合成をする全ての生物に存在している酵素であるため、この働きを阻害すると正常細胞への影響が懸念される。しかし、ヘリカーゼ・プライマーゼ複合体は種特異性が高い酵素であることが分かっており、実際に、in vitroの試験でアメナメビルをヒト由来のウイルス非感染細胞に投与しても、毒性が低い1)。また、アメナメビルはVZV及び単純ヘルペスウイルス(以下、HSV)に抗ウイルス活性を示すが、RSウイルスやインフルエンザウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス1型などには活性を示さないことからも、特異的に作用することが分かる2)

ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬は性器ヘルペスの再発抑制という観点で世界的に注目されている薬剤である。海外では他に2剤、ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬が開発されているが、これらはHSVのみに活性を示し、VZVには活性を示さない(表1)3)

表1 各薬剤の抗ウイルス活性(in vitro3)

各薬剤の抗ウイルス活性(in vitro)3)

そのため、HSV感染症をターゲットとして開発が進められている。一方、アメナメビルは、HSVだけでなくVZVに対しても抗ウイルス活性を示すため、今回、帯状疱疹の適応症で、世界初のヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬として承認された。今後のHSV感染症への展開も期待される。

  • 本邦及び海外未承認

アメナメビル低感受性株の発現頻度

抗ヘルペスウイルス薬を低濃度でウイルスに曝露し続けると低感受性株が生じる。アシクロビル低感受性株は主にチミジンキナーゼの変異により生じ、アメナメビルの低感受性株はヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の変異により生じる。in vitroの試験でHSVの低感受性株はアシクロビルで1.65/1,000、アメナメビルで1.19/1,000,000の頻度で生じ4)、アメナメビルの低感受性株の発現頻度は低い。また、ヘリカーゼ・プライマーゼ複合体はDNA合成に必須の酵素であり、変異するとウイルスの増殖能が低下するため自然界では、低感受性株は生じにくく、アシクロビルと同様に臨床上問題となる可能性は低いと考えられる。

ウイルス感染後の時間経過と抗ウイルス活性の推移

アメナメビルは、アシクロビルなどの核酸類似体の薬剤と比べ、感染後のウイルス増殖の影響を受け難いという特徴を有している5)。DNAウイルスは宿主の核酸を利用して自身のDNAを複製するが、通常、宿主の細胞では細胞分裂が活発でなくDNA合成が必要ないのでRNA型の核酸しか合成されない。そのため、図2に示すようにウイルスはリボヌクレオチド還元酵素により、RNA型の核酸をDNA型に変換し、自身のDNA複製に利用する。

図2 核酸の代謝(ウイルスDNA合成)と薬剤の作用

核酸の代謝(ウイルスDNA合成)と薬剤の作用

ウイルス感染初期の細胞ではDNA型の核酸は非常に少ないが、ウイルスの増殖が盛んになるにつれ、その数は増えていく。アシクロビルは、DNA型の核酸のうち、dGTPと競合拮抗してDNA鎖に取り込まれる必要があり、ウイルス感染初期ではdGTPが少ないために効率よく取り込まれるが、ウイルスの増殖が盛んになると、競合するdGTPが増加して取り込まれ難くなると考えられる。しかし、アメナメビルは核酸と競合拮抗するのではなく、酵素を直接阻害するため、ウイルスの増殖の程度、つまり、感染からの時間経過によらず、効率よく作用することができると考えられる。実際に、マウスでHSV感染後の時間経過と抗ウイルス活性の推移をみた実験では、アシクロビルの抗ウイルス活性は時間の経過とともに低下するのに対し、アメナメビルの抗ウイルス活性には大きな変化は見られなかった5)

抗ウイルス活性から見えるアメナメビルの特徴と注意点

アメナメビルはVZVに対しアシクロビルよりも高い抗ウイルス活性を示す3)。また、細胞へのウイルス感染からの時間経過によらず、効率的に抗ウイルス活性を示すと考えられる。帯状疱疹患者を対象とした臨床試験では投与開始4日目までの新皮疹形成停止率(主要評価項目)に対して1日1回の投与でバラシクロビル塩酸塩に対する非劣性が検証されており6)、帯状疱疹治療での有用性が期待できる薬剤である(表2)。

表2 まとめ

まとめ

しかし、アメナメビルも従来の核酸類似体の薬剤と同様、ウイルスの増殖を抑制するため、増殖後のウイルスを排除することはできない。前述の通り、帯状疱疹の病変は免疫応答により形成されることから、服薬後数日は宿主の免疫応答により皮疹が悪化するなど、治療効果を実感できない場合があるため、初診時に患者に指導しておくなどの注意が必要である。

  • 社内資料:宿主細胞に対する作用

  • 社内資料:in vitro 抗ウイルス活性

  • Chono K, et al. : J Antimicrob Chemother. 65(8), 1733-1741(2010)

  • Chono K, et al. : Biochem Pharmacol. 84(4), 459-467(2012)

  • Yajima M, et al. : Antiviral Res. 139, 95-101(2017)

  • Kawashima M, et al. : J Dermatol. 44(11), 1219-1227(2017)


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