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帯状疱疹の疫学


宮崎スタディ:宮崎県における大規模疫学研究

【監修】医療法人外山皮膚科 院長 外山 望 先生

帯状疱疹の疫学調査については、国内外でいくつか報告されており、高齢者で発症率が高いこと、帯状疱疹発症と水痘流行には関連があることなどが指摘されています1、2)。しかし、本邦でこれまでに行われた疫学調査の多くは小規模調査であり、帯状疱疹患者の実態を明らかにするには十分ではありませんでした。

そこで、宮崎県において、国内初の帯状疱疹患者に関する大規模疫学調査、「宮崎スタディ」が実施されました。宮崎スタディは1997年に開始され、宮崎県皮膚科医会が中心となって帯状疱疹を発症した患者の年齢や性別を調査し、発症率、季節性、水痘との関連性、及び再発率について検討しました。ここでは、宮崎スタディの調査概要と、この大規模疫学調査から得られた解析結果をいくつかご紹介します。

長期間(18年間)にわたる疫学調査3)

1997年から2014年に宮崎県内の42施設を受診した帯状疱疹患者の性別・年齢を記入した調査表を、毎月回収・集計しました。経過が長い帯状疱疹後神経痛(PHN)患者と他の皮膚科医療機関(宮崎県皮膚科医会所属)を受診した同一患者は除外しました。宮崎県内の水痘に関する疫学調査データは、宮崎環境衛生研究所から提供されました。

※宮崎県皮膚科医会に属する皮膚科診療所32施設及び総合病院の皮膚科10施設

地図

帯状疱疹患者は年々増加傾向にある3)

1997年から2014年に帯状疱疹を発症した患者総数は93,088人であり、18年間の平均年間発症率は4.50人/千人/年でした。最年少は3ヵ月の女児、最高齢は103歳の女性でした。
帯状疱疹の発症数及び発症率の年次推移をみると、調査期間中に宮崎県の人口が減少しているのに対して、発症数は36.2%、発症率は43.5%増加しました()。

図 帯状疱疹の発症数及び発症率の推移(1997~2014年)

帯状疱疹の発症数及び発症率の推移(1997~2014年)

帯状疱疹発症数は60代、発症率は70代がピーク3)

年齢別の帯状疱疹発症数及び発症率をみると、10代に小さなピークがあり、その後は減少して50歳以上で急激に増加し、発症数は60代、発症率は70代がピークになることが示されました(上図)。最初のピークがある10代は、40代に比べて発症数は少ないものの、発症率は高くなりました。この傾向は、18年間を通して同様でした。
しかし、近年この傾向が変化してきており、本調査の前半の9年間(1997~2005年)と後半の9年間(2006~2014年)を比較すると、前半に比べて後半は30代の発症率が上昇しており、その結果、10代のピークが顕著ではなくなってきています(下図)。
発症率は、年齢によって幅があり、50歳未満(2.15~2.90人/千人/年)に比べて50歳以上(5.31~8.41人/千人/年)で上昇しました。小児における帯状疱疹発症率は、9歳以下では2.66人/千人/年、10代では2.90人/千人/年であり、決して低くはありませんでした。

図 年齢別の帯状疱疹発症数及び発症率(1997~2014年)

年齢別の帯状疱疹発症数及び発症率(1997~2014年)

40~60代の女性は帯状疱疹リスクが高い3)

18年間に帯状疱疹を発症した患者を性別にみると、男性38,833人、女性54,255人でした。全体の発症率は、男性3.99人/千人/年、女性4.95人/千人/年であり、女性で高くなりました()。年齢別にみた男女間の発症率は、40~60代では女性のほうが高く、80代以上になると男性のほうが高くなりました。

図 性別・年齢別にみた帯状疱疹発症数及び発症率(1997~2014年)

性別・年齢別にみた帯状疱疹発症数及び発症率(1997~2014年)

水痘が冬に流行するのに対して、帯状疱疹患者は夏に増加する3)

1997年から2014年までの帯状疱疹発症数の月ごとの推移をみたところ、帯状疱疹患者は8月をピークに夏期に増加し、冬期は減少しました()。最も発症数が少なかったのは2月であり、ピーク時である8月の77.8%でした。また、春先(3月)にはやや増加しました。この傾向は、いずれの年でも同様であり、四季別(3ヵ月ごと)に18年分を累計したところ、夏期(6月~8月)の発症数は25,111人と、冬期(12月~2月)の21,039人の約1.19倍でした。

また、帯状疱疹の季節変動と水痘の流行時期の関連について検討するために、帯状疱疹の月別発症数と、同時期の宮崎県における水痘の発症率を比較したところ、帯状疱疹の発症数は水痘の発症率に比べて変化が少ないものの、帯状疱疹は夏に多く冬に少ない、水痘は夏に少なく冬に多い、というように鏡像関係があることが示唆されました()。

図 月別の累計帯状疱疹発症数及び水痘発症率(1997~2014年)

月別の累計帯状疱疹発症数及び水痘発症率(1997~2014年)

水痘が夏に減少するのは、夏は紫外線が強く温度が高いため、水痘・帯状疱疹ウイルスの感染性が低下するからだと考えられます。その結果、水痘流行によるブースター効果が期待できず、帯状疱疹が夏に増加すると推察されます。

宮崎スタディにおける帯状疱疹再発調査(2009~2015年)4)

帯状疱疹が再発することが、多くの調査で報告されているにもかかわらず、再発率や臨床的特徴は明らかにされていません。そこで、本調査に参加した患者の一部を追跡し、再発調査を行いました。調査期間は2009年6月から2015年11月までの6.5年間、対象は宮崎スタディに参加した43施設中10施設を受診した帯状疱疹患者(水痘ワクチン未接種)としました。

※本邦では、2016年3月に乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」(一般名:乾燥弱毒生水痘ワクチン)の効能・効果に「50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防」が追加された

2009年6月~2015年11月における宮崎スタディ対象患者の概要

2009年から2015年の宮崎県の平均人口は112万人であり、調査期間中(6.5年間)に43施設で帯状疱疹と診断された患者総数は34,877人でした。これより、平均年間発症数は5,365人、平均年間発症率は4.79人/千人/年と算出されました。

宮崎スタディ対象患者の概要

帯状疱疹の再発率は6.41%

宮崎スタディに参加した43施設のうち再発調査の対象となった10施設で、試験期間中に帯状疱疹と診断された患者総数は16,784人でした。このうち、1,076人(6.41%)で帯状疱疹の再発が認められました()。性別にみた再発率は、男性4.73%、女性7.63%であり、女性で高くなりました。

図 年齢別、性別にみた帯状疱疹再発数及び再発率(2009年6月~2015年11月)

年齢別、性別にみた再発数及び再発率(2009年6月~2015年11月)

まとめ3、4)

宮崎県は、都会とは異なり他県との患者の流入・流出が比較的少ない点が調査を行うのに適していると判断されました。また、宮崎県全域の疫学調査を行うにあたり、適当な数の皮膚科施設(合計42施設)があることも好条件と考えられました。

18年間の宮崎スタディにおいて帯状疱疹と診断された患者総数は93,088人でした。平均年間発症率は4.50人/千人/年であり、40~60代の女性で多くみられました。発症率は年齢によって幅があり、50歳以上で急激に上昇しました。季節変動をみると、水痘が冬期に流行するのに対して帯状疱疹は夏期に増加する傾向があったことから、帯状疱疹発症数と水痘の季節流行には関連があることが示唆されました。また、一部の帯状疱疹患者を追跡したところ、6.41%の患者に再発がみられました。

欧米では、50歳以上には帯状疱疹予防として水痘ワクチン接種が推奨されています。本調査において、帯状疱疹発症率が50歳以上で急激に上昇すること、一定の割合で再発の可能性があることが示唆されました。したがって、本邦でも、50歳以上では水痘ワクチンを接種することが望ましいと思われます。

  • Hope-Simpson, R.E.:Proc R Soc Med, 58, 9(1965)

  • Thomas, S.L., et al.:Lancet, 360(9334),678(2002)

  • 外山望先生 ご提供資料

  • Shiraki, K., et al.:Open Forum Infect Dis, 4(1), ofx007(2017)


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