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第3回:皮膚科遠隔診療の多様性や可能性について

(2024年5月7日掲載)

かかりつけ医との連携

皮膚科遠隔診療と聞くと、皆さんは医師‐患者間でのテレビ電話を使ったオンライン診療を想像するのではないでしょうか? 実際、このシステムを導入しているクリニックもコロナ禍をきっかけに増えてきており、一般的に広く認知されてきています。

この方法ですと通常の対面診療と同じように、医師‐患者間で診療が完結でき、処方箋もその場で出せますので、システムとして完成されており、遠隔診療としては理想的な形なのだと思います。

しかし、私のような重度の障害を持つ医師(ほとんどいないと思いますが)や、このような電子システムを上手く使いこなせない高齢者、自分の症状を上手く伝えられない患者さん(私のように在宅療養している方、精神疾患や認知症をお持ちの方など)は利用できません。

そこで、皮膚病変の写真と臨床経過や検査結果などの情報を元に、医師‐患者間ではなく医師‐医師間での診療コンサルトの形態で仕事をできないか考えてたどり着いたのが、私の行っている「皮膚科遠隔診療」です。

皮膚科領域の疾患はかなり専門性が高く、皮膚科医でないと診断や治療ができないことも多いです。しかし、地域によっては皮膚科医がいないところも多く、在宅医療現場では往診に来てくれる皮膚科医はほとんどいないのが現状です(私も臨床医だった頃、皮膚科クリニックにアルバイトに行っていましたが、一日に何十人も診察しており、とても往診に行く時間はなかったので、往診に行くハードルが高いのは理解しております)。

そこで、このような皮膚科にかかりたくてもかかれない患者さんたちの、かかりつけ医と連携して診療しています。

実際の皮膚科遠隔診療

具体的にはまず、患者さんの年齢や性別、皮膚症状の写真(引きの写真と、寄りの写真)と、皮疹の経過、痒みや痛みなどの自覚症状の有無、患部の熱感や硬さなどの触診所見、既往歴、薬剤歴などの診察に必要な情報を送ってもらいます。

専門用語を使いながら、必要な情報を選択してやり取りできることで、効率よく診療できる点も、医師-医師間での診療のメリットになります。

それらの情報を元に緊急性の有無(すぐに総合病院を受診したほうがよいレベルなのか、私のアドバイスのもと、かかりつけ医が治療できるレベルなのか、それともこのまま経過観察してよいのか、など)を記載し、考えられる鑑別疾患をあげていきます。その後、対処方法を具体的に書いていきます。

例)皮脂欠乏性湿疹が疑われる患者さんの場合

# 皮脂欠乏性湿疹

皮膚が乾燥しバリア機能が弱くなったことで湿疹が生じます。ヒルドイド®ソフト軟膏とアンテベート®軟膏の1:1mixの外用を1日2回行ってください。また、皮膚の乾燥を助長するような、長風呂、患部の洗いすぎ、ナイロンタオルの使用などは避けてください。生活環境などを問診し、環境や湿度についてアドバイスしてください。改善してきたらステロイドのランクダウンを行いつつ、保湿のクリームを1日2回塗り続けることで、皮膚の乾燥を和らげ、湿疹の再発を予防できます。1~2週間後にまた写真を見せて、経過を教えてください。よろしくお願い致します。

このようなアドバイスをすることで、皮膚科が専門外のかかりつけ医でも治療ができます。

下記に私が非常勤医師として働いている、さくらクリニック練馬と中野の患者さんを実際に診療しているカルテの一部も載せておきます。ちなみにここでやり取りしているかかりつけ医は、さくらクリニック練馬の院長であり、私の在宅療養の主治医です。

症例1

症例2

必要な医療を必要な人たちに届ける方法は一つではない

私はこの仕事をALSと診断された早期より、将来的な自分の状態を見越してやってきました。年間約2,000人、累計10,000人以上の患者さんたちを診察してきて強く実感したのが、皮膚科医の診療を必要としているのに診療を受けられていない患者さんが非常に多いということです。特に在宅療養されている患者さんは、皮膚トラブルを抱えていない方のほうが少ない印象です。

そんななかで皮膚科医に相談できない、現場のかかりつけ医の先生たちは、皆さん手探りで一所懸命治療をされています。自分たちが専門ではない疾患の診断や治療をしていくのはとても難しいし、不安が伴います。それを皮膚科医の視点でサポートすることは、患者さんだけでなくかかりつけ医の先生たちからも喜ばれるので、とてもやりがいがあります。

また、皮膚科医は女性医師の割合も多く、皮膚科専門医まで取ったのに、結婚・出産を機に現場から離れてしまう医師も少なからずいらっしゃいます。そのような方たちが臨床現場に復帰するまでの「仕事感」を忘れないためにも、在宅で隙間時間でできる仕事の形としても、よいのではないかと思います。

このような働き方ができるのも、「皮膚」という目に見える臓器の疾患を扱う皮膚科医の特権ではないでしょうか。医師‐患者が対面しないと診療してはいけないという固定観念に囚われず、1人でも多くの患者さんに必要な医療が届けられるような、柔軟なシステムが普及していってほしいと切に願います。

梶浦先生‐かかりつけ医‐患者さんと、3者がつながって診療ができている様子

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