褥瘡辞典 for MEDICAL PROFESSIONAL ~褥瘡(床ずれ)の正しいケアと治療のために~

用語集

褥瘡治療・ケアに関わる用語をご紹介しています。

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圧縮応力 外力によって圧縮される方向にはたらく抵抗力のこと。
陰圧閉鎖療法 細菌や細菌から放出される外毒素の排出、肉芽組織の血管新生、浮腫の除去などを目的に、創面全体を閉鎖性ドレッシング材で覆い、125~150mmHgの陰圧になるよう吸引し、創面を管理する療法。
栄養評価(栄養アセスメント) 評価法を用いて、主観的、客観的に栄養状態を判定すること。SGA(主観的包括的栄養評価)などの主観的評価法と、各種身体計測値や血液生化学的検査値などの栄養指標を用いる客観的評価法があり、指標のもつ特性から静的栄養指標、動的栄養指標、総合的栄養指標に分類される。
壊死組織 生体において局所的に死滅した組織のこと。褥瘡治療における壊死組織とは、高率に感染を引き起こし、正常な肉芽組織の成長の妨げとなるため、デブリドマンによる除去が重要となるもの。黒色期にみられる硬く黒い壊死組織(エスカー)と黄色期にみられる軟らかく黄色調の壊死組織(スラフ)に分類される。
壊死組織除去/デブリドマン 変性・壊死組織や異物、細菌感染巣を除去して創を清浄化する治療行為。自己融解方法、機械的方法(wet to dryドレッシング法、高圧洗浄、水治療法、超音波洗浄など)、蛋白分解酵素法、外科的方法、生物学的方法(マゴット療法)などがある。
栄養サポートチーム(NST) 各症例や疾患に応じて適切な栄養管理を実施(栄養サポート)するための、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師などの多職種で構成されたチームのこと。
応力 物体に外力がはたらいている場合に、内部に生じる力(単位はPa:パスカル)。発生する方向で、圧縮応力、引張応力、剪(せん)断応力の3種類に分類される。
温熱療法 生体の組織温を加温し、循環改善、疼痛緩和、痙縮筋の抑制、鎮静を図る療法。輻射熱(赤外線療法など)や伝導熱(水治療法、ホットパック療法、パラフィン療法など)、深達性の高い変換熱(極超短波療法、超音波療法など)を利用する。
痂皮 漿液、膿汁、壊死組織などが乾燥して形成される硬い構造物。創面が乾燥すると痂皮が形成されやすくなる。また、血液の乾固したものを血痂とよぶ。
関節拘縮 関節構成体軟部組織の損傷後の瘢痕癒着や不動によって、関節可動域が制限される状態。筋や皮膚などに原因がある短縮は伸張運動により改善するが、関節包内の骨・軟骨に原因があり、関節機能が消失している強直は、伸張運動は無効である。
急性期褥瘡/慢性期褥瘡 急性期褥瘡は褥瘡発生後1~2週間の発赤、紫斑、浮腫、水疱、びらん、浅い潰瘍などの多彩な急性炎症反応がみられる、病態が不安定な時期。慢性期褥瘡はそれ以降の急性期反応が消褪し組織障害の程度が定まった時期で、浅い褥瘡と深い褥瘡に分類される。
近赤外線 赤外線の中で可視光線に近い、波長が780~1500nmの電磁波。局所的な血流量の増加作用や皮膚温の上昇作用を褥瘡治療に利用できると考えられている。
外科的治療 褥瘡治療では手術療法、外科的デブリドマン、皮下ポケットに対する観血的処置のこと。
高圧酸素療法 密閉された高気圧室に患者または患部を収容して、高圧の酸素を吸入させる療法。血漿や虚血病変組織への直接作用により組織の酸素分圧を上昇させ、低酸素状態を改善させる。
光線療法 褥瘡部に紫外線、レーザー光、赤外線などの光線を照射し、これらの光線の光化学作用や温熱作用を利用して創傷治療の促進を図る療法。
サイト力イン 細胞で産生・放出され、標的細胞表面の受容体に結合し、細胞間の情報を伝達する蛋白質。免疫、炎症のほか、細胞の増殖、分化、細胞死、創傷治癒などに関与している。
湿潤環境 創傷治癒に適した、水分が多く湿った環境のこと。創傷の修復に関与する多核白血球、マクロファージ、成長因子などを含む滲出液を適量保持し、自己融解作用による壊死組織の除去機能を有し、細胞遊走を妨げない。
湿潤環境下療法(moist wound healing:MWH) 創面をドレッシング材を用いて閉鎖した湿潤環境に保持する療法。創を乾燥させず、適度な滲出液が含まれる湿潤環境下に維持することにより、良好な肉芽組織を形成し、創傷治療を促進させる。
上皮化/上皮形成 欠損した皮膚や粘膜が上皮(表皮や粘膜上皮)で再度被覆されること。浅い皮膚欠損では、表皮は欠損部周囲表皮や皮膚付属器から再生する(再生治癒)が、付属器の残存しない深い皮膚欠損では、肉芽組織で置換された後に周囲から表皮が伸張する(瘢痕治癒)。
褥瘡推定発生率 (調査日に褥瘡を保有する患者数-入院時既に褥瘡保有が記録されていた患者数)/調査日の施設入院患者数×100(%)

注1:調査日の施設入院患者数:調査日の入退院または入退院予定者は含めない。

注2:1名の患者が複数の褥瘡を有していても、患者数は1名として数える。

注3:入院時既に褥瘡を有していた患者であっても、入院中に新たに褥瘡が発生した場合は、院内褥瘡発生者として取り扱う。

褥瘡有病率 ある集団における、ある一時点での褥瘡を有する人の割合(時点有病率)。
調査日に褥瘡を保有する患者数/調査日の施設入院患者数×100(%)

注1:調査日の施設入院患者数:調査日の入退院または入退院予定者を含めない。

注2:1名の患者が複数の褥瘡を有していても、患者数は1名として数える。

滲出液 上皮が欠損した創から滲み出す組織間液。蛋白に富み、炎症細胞やサイトカイン、成長因子、壊死組織を融解する蛋白分解酵素などを含有する。
浸軟 組織、特に角層が水分を大量に吸収して白色に膨潤した状態。褥瘡潰瘍の辺縁でしばしばみられ、皮膚バリア機能が低下し、びらんや感染を起こしやすい。
水治療法 物理的な作用(静水圧、浮力、水中抵抗、温熱、洗浄など)と含有成分による化学的な作用を利用した療法。全身浴のハバート浴とプール、局所の水治療法の渦流浴、気泡浴、交代浴があり、温熱または寒冷効果、創傷治癒の促進、マッサージ効果や運動効果がある。
スキンケア 皮膚の生理機能を良好に維持、あるいは向上させる目的で、洗浄(刺激物、異物、感染源などを取り除く)、被覆(刺激物、異物、感染源などを遮断、あるいは光熱、物理的刺激を減らす)、保湿(角層の水分を保持)、水分除去(皮膚の浸軟を防ぐ)などを行うこと。
ずれ 対象とする物体(皮膚表面)の移動した長さのずれ量(単位はm)、または加わる力のずれ力(単位はN)という2つの概念がある。
生食ガーゼドレッシング法(wet to wet) 創に生理食塩水で湿らせたガーゼを当て、湿潤環境を維持するドレッシング法。
成長因子 体内の細胞(血小板、好中球、マクロファージ、線維芽細胞、血管内皮細胞など)から分泌され、細胞や組織の増殖や分化を促進する蛋白質あるいはホルモン様物質。
背抜き 背中をベッドなどの寝具や車いすなどから一時的に離すことによって、ずれから解放する手技のこと。
洗浄 液体の水圧や溶解作用を利用して、洗浄液(生理食塩水、水道水、石鹸水など)で皮膚表面や創傷表面に付着した化学的刺激物、感染源、異物などを取り除くこと。水量による効果を期待する方法と水圧による効果を期待する方法がある。
洗浄圧 創傷表面の滲出液や残留物を除去するための圧力(単位はpsi:皮膚または創表面1インチ四方に水流を与えた際に生じる圧力)のこと。
剪(せん)断応力 外力によって、任意の断面方向にはたらく抵抗力のこと。
創縁 創を取り囲む表皮の最も内側。表皮化が盛んな状態では、その境界は不鮮明になりやすい。
創傷治癒過程 創が形成された直後からの、炎症反応を含め、広義にはすべて治癒に向けた反応である。炎症により皮膚が発赤し、損傷皮膚の中央部が退色するとともに、硬く黒い壊死組織(エスカー)が形成される。エスカーが除去されると軟らかく黄色調の壊死組織(スラフ)が出現する。このスラフの融解排除と入れ替わりに赤い肉芽組織が増生し、やがて表皮化が完成すると脱色した白色の皮膚に被われ、治癒が完了する。この過程は凝固期、炎症期、増殖期、再構成期などと称している。また褥瘡の創面では黒色期、黄色期、赤色期、白色期などと表現する。
創面環境調整(wound bed preparation:WBP) 創傷の治癒を促進するため、創面の環境を整えること。具体的には壊死組織の除去、細菌負荷の軽減、創部の乾燥防止、過剰な滲出液の制御、ポケットや創縁の処理が行われる。
底突き 体圧分散用具を用いていても、身体表面が下の固い支持面に接し、体圧分散が効果的に行われていない状態。体圧分散用具の下に手の平を上にして腕を差し入れようとしたときに、体圧分散用具上にある身体に触れたり、重みが感じられること。
体圧、接触圧 接触圧とは皮膚表面と接触面との間に生じる垂直に作用する力のこと。その中でも重力によって生じるものを体圧とよぶ。
体圧分散用具 ベッドなどの寝具、いすなどの支持体と接触している部位の体圧を、接触面積を広くする、もしくは荷重部位を移動させることにより減少させるための、特殊ベッド、マットレス、クッション、パッドなどの用具。
体位変換 ベッドなどの寝具、いすなどの支持体と接触しているために体重がかかって圧迫されている身体の部位を、身体が向いている方向、頭部挙上の角度、身体の格好、姿勢などを変えることによって移動させること。
TIME 創面環境調整(wound bed preparation)の実践的指針として、創傷治癒阻害要因をT(組織)、I(感染または炎症)、M(湿潤)、E(創縁)の側面から検証し、治療・ケア介入に活用しようとするコンセプトのこと。
超音波療法 創面に超音波を照射し、その連続波による温熱作用とパルス波による機械的振動作用を利用した療法。連続波は循環の改善、疼痛の緩和、筋スパズムの抑制、鎮静作用など、パルス波は浮腫の軽減、創傷治癒の促進などの効果がある。
低栄養 生体の生命活動に必要なエネルギーや各種栄養素が欠乏した状態。褥瘡患者は低栄養リスクを有しており、必要量に見合ったエネルギーと蛋白質の補給が推奨されている。また、特定の栄養素として亜鉛、アルギニン、アスコルビン酸などの補給を行ってもよいとされている。
DESIGN 褥瘡状態を判定するスケールの1つ。褥瘡の重症度の分類と治癒過程の数量化が可能で、深さ(D)、滲出液(E)、大きさ(S)、炎症・感染(I)、肉芽組織(G)、壊死組織(N)の6項目で構成されている。なお、ポケットを認めるときには、-Pを追加した7項目で構成される。
電気刺激療法 創部とその周辺部分に貼付した電極の間に電流を流す療法。交流電流刺激は神経の興奮、筋の収縮による運動機能の改善、運動機能の代行・再建、疼痛緩和などの効果があり、直流微弱電流刺激では線維芽細胞の活性化による創傷治癒促進効果、イオン導入法による外用薬の浸透などの効果がある。
ドレッシング材 創における湿潤環境形成を目的とした、従来の滅菌ガーゼ以外の近代的な創傷被覆材。
肉芽組織 組織欠損部の充填のために形成される新生組織。新生血管、線維芽細胞などの各種の細胞、コラーゲンなどの細胞外マトリックスが混合し構成される軟らかい結合組織である。
バイオフィルム 異物表面や壊死組織などに生着した細菌が産生した多糖体が融合して形成された膜状構造物。この中に包み込まれた細菌は、一般の抗生物質や白血球などの攻撃から護られて滞留するため、感染が持続しやすい。
非接触性・常温療法 創部を湿潤環境に保ちながら、38℃・1時間の加温を1日2~3回行う褥瘡の療法。
引張応力 外力によって引っ張られる方向にはたらく抵抗力のこと。
皮膚・排泄ケア認定看護師 創傷・オストミー・失禁ケアの分野において、習熟した看護技術と知識を用い、実践・指導・相談の3つの役割をはたすことにより水準の高い看護実践および看護ケアの広がりと質の向上に寄与する、日本看護協会認定審査に合格した看護師。
びらん 皮膚または粘膜の欠損が上皮層内に限られた状態で、通常は瘢痕を残さずに治癒する浅い傷。
浮腫 皮膚、粘膜、皮下組織、内臓などの間質に組織間液が過剰に貯留した状態で、褥瘡発生危険因子の1つ。炎症、低蛋白血症やリンパ管の閉塞、心不全をはじめとした循環不全などにより発症する。皮膚を圧迫すると指圧痕が残る。
物理療法 創面に物理的刺激を与え、疼痛の緩和、創傷の治癒促進、筋・靭帯などの組織の弾性促進などを目的に行う療法。温熱療法、寒冷療法、水治療法、光線療法、極超短波療法、電気刺激療法、超音波療法、陰圧閉鎖療法、高圧酸素療法、牽引療法などがある。
閉塞性ドレッシング/滲出液保持性ドレッシング 創を乾燥させないで、閉鎖した湿潤環境下で管理するための被覆法のことで、従来のガーゼドレッシング以外の近代的な創傷被覆材(ドレッシング材)を用いたドレッシングの総称。
ポケット 皮膚欠損部より広いポケット状の創腔。ポケットを覆う体壁を被壁または被蓋とよぶ。
発赤 紅斑あるいは初期の紫斑によって生じる表皮の赤みの総称。
紅斑は、真皮の毛細血管拡張または充血によって起こる表皮の赤みを指す発疹。紫斑は真皮内の出血(赤血球の血管外漏出)により起こる表皮の色調変化であり、出血直後には赤く見えるがガラス圧では消褪しない。褥瘡では、急性期の褥瘡や慢性期の浅い褥瘡でみられる症状である。
慢性皮膚潰瘍 褥瘡、下腿静脈瘤、糖尿病など、血流障害、感染、低栄養などの創傷治癒を遅延させる因子を持った人に生じる、治療に抵抗する難治性皮膚潰瘍。
良性肉芽 表面が細顆粒状で、かつ適度な湿潤が保たれている鮮紅色の肉芽組織。良性肉芽の量が多いほど創傷治癒が進んでいることを意味する。
レーザー光 単一波長で位相が一致しているため、非常に強力なエネルギーを発生する光。殺菌・細胞破壊、免疫促進、循環の改善、鎮静作用、疼痛の緩和、創傷治癒促進などを目的に生体に照射する。
DESIGN 褥瘡状態を判定するスケールの1つ。褥瘡の重症度の分類と治癒過程の数量化が可能で、深さ(D)、滲出液(E)、大きさ(S)、炎症・感染(I)、肉芽組織(G)、壊死組織(N)の6項目で構成されている。なお、ポケットを認めるときには、-Pを追加した7項目で構成される。
moist wound healing (MWH:湿潤環境下療法) 創面をドレッシング材を用いて閉鎖した湿潤環境に保持する療法。創を乾燥させず、適度な滲出液が含まれる湿潤環境下に維持することにより、良好な肉芽組織を形成し、創傷治療を促進させる。
TIME 創面環境調整(wound bed preparation)の実践的指針として、創傷治癒阻害要因をT(組織)、I(感染または炎症)、M(湿潤)、E(創縁)の側面から検証し、治療・ケア介入に活用しようとするコンセプトのこと。
wet to dryドレッシング法 生理食塩水で湿らせたガーゼを創に当て、乾燥したガーゼに固着する異物や壊死組織をガーゼ交換とともに非選択的に除去する、デブリドマンを目的にしたドレッシング法。
wound bed preparation (WBP:創面環境調整) 創傷の治癒を促進するため、創面の環境を整えること。具体的には壊死組織の除去、細菌負荷の軽減、創部の乾燥防止、過剰な滲出液の制御、ポケットや創縁の処理が行われる。

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