N=1の先をみてきた歴史

創業者である木場栄熊の「くすりで社会に貢献したい」という志から始まったマルホの歴史。
いつの時代も見つめてきたのは、病気に悩む患者さんとその先にある可能性です。

N=1から⽣まれた製品

  • ベピオローション「治すだけのもの」という考えから
    抜け出すことで薬の価値は変わる。

    2015年にニキビ治療薬として発売した「ベピオゲル」。発売後に「もっとよくできないか」と研究を続けている中でヒントとなったのは、患者さんの想いでした。「しっとり」は欲しいけれど「ベタつき」は避けたい。これがまさに、ニキビ治療に悩む患者さんの声にならない理想でした。日常的に使う薬だからこそ、理想の使用感を叶えたい、もっと患者さんに寄り添えるものをつくりたい。そんな想いから乳剤性ローションの開発に着手しました。

    しかし、「油分」と保水力のある「グリセリン」の配合バランスに大苦戦。試作品の数は109にものぼりましたが、「しっとりしながらもベタつかない」という、ニキビ治療薬を使う多くの患者さんにとっての理想の使用感と品質・有効性・安全性といった医薬品としての機能を両立した製品を生み出すことができたのです。「薬は治すだけのもの」「症状を軽くするだけのもの」。世の中には、そのような認識を持った方もいます。しかし、私たちが患者さんの「生き方」や「毎日」に目を向けることで、薬は「治療だけでなく、笑顔をつくる」という価値に変わるのです。

  • リネイルゲル「巻き爪治療」という難問に
    風穴を通した一人の医師のアイデア。

    世界初の巻き爪治療用剤「リネイルゲル」は、たった一人の医師のアイデアから開発がスタートしました。軟化剤で爪を柔らかくしてから、矯正具で爪を矯正し、再び爪を硬化させることで巻き爪を短期間で治すという前例のないアイデア。その実現を目指すために、マルホに開発の相談が寄せられたのです。
    大学と協業のもと医療用医薬品の軟化剤(巻き爪治療用剤)をマルホが開発。医療機器の矯正具はグループ会社のマルホ発條工業が開発。また、酸化しやすい有効成分の安定性を保つ窒素を封入したアルミパウチ製品化は、医薬品の生産に精通するマルホ彦根工場が実現しました。

    一方で、巻き爪の重症度や矯正効果の判定に用いる客観的な指標がないことが課題となりました。大学の先生たちの協力により考案された「遠位爪幅狭小化率」が2017年の論文に掲載され、この指標を巻き爪治療用剤の有効性を判断するための評価基準法に使用。マルホは、爪の切片を利用した軟化作用の評価方法を構築し、巻き爪治療用剤の開発に活用しました。2019年10月、医療機器の矯正具「巻き爪マイスター」が全国販売を開始。追って2023年3月にさまざまな課題を乗り越え、巻き爪治療用剤の「リネイルゲル」が医療用医薬品の承認を取得。同年4月に販売を開始しました。
    「痛みを伴う」「治療に時間がかかる」「再発する」など、患者さんが十分に満足できなかったこれまでの巻き爪治療に対して、新たな希望をもたらしました。