Mさん
(40代・女性・会社員/ブロガー)
幼少期に発症したが、当時はアトピー性皮膚炎と診断される。社会人になって受診した皮膚科で尋常性乾癬と診断され、それ以来、外用剤や紫外線療法で治療している。
若い患者さんや乾癬のお子さんを持つ保護者の方に向け、ご自身の乾癬の経験をブログで発信中。
保育園の年少から年中の頃に発症しました。双子の妹と同時にとびひのような湿疹が手足にでき、妹はすぐに治りましたが、私には残ったようです。その頃から今に至るまでずっと同じ症状なので、当時から乾癬だったのだと思います。皮膚科を受診したのは小学生になってからで、当時はアトピー性皮膚炎と診断されました。親が仕事で忙しかったので継続して通院することはなく、普段は母から渡された保湿剤を塗り、症状が悪化すれば受診して外用剤を処方してもらっていました。大人になれば軽快する可能性が高いと考え、中学・高校時代も部活やバイトを優先させて治療には熱心ではありませんでした。
社会人になり、保育士として園児と写真を撮ったときに自分の肌を客観的に見て、きちんと治療をしようと思いました。地元を離れていたので、それまでとは違う皮膚科を受診したところ、乾癬と診断されたのです。心のどこかでアトピー性皮膚炎ではないのではないかと感じていましたが、乾癬という診断には驚きました。大人になれば良くなると思っていたので、完治が難しい病気だと告げられショックを受けたものの、正しく診断された安心感もありました。やっと病気に合った治療が始められ、症状を改善できるという期待もあり、治療について前向きに考えることができました。
小学生から高校生の頃は、肌に乾癬の症状があることで友達やクラスメートにいやなことを言われたりからかわれたりすることはほとんどありませんでした。小学校高学年の頃、頭皮に症状が出ていて髪に鱗屑がついていたのでしょう。親友と階段を上っていたら、上から下りてきた男子に「2人の髪を黒い下敷きの上で振ったら、どちらのほうが白くなるかな?」と言われたことがあります。それでも外見に関して素直な思いが口から出ただけで、悪意はなかったようです。私は双子の妹とうり二つで、肌の状態だけが違っていましたが、顔を見分けるために肌を確認するようなクラスメートもいませんでした。親や姉妹にも一度も「肌が汚い」と言われたことはありません。周りの人たちに恵まれていたと思います。
小学生の頃、毎年プール開きの日に、担任の先生に「プールに入ってよいか皮膚科の許可を取ってくるように」と言われ、私だけプールに入れず、つらい思いをしました。事前に指示があるわけではなく、当日に言われてショックだったことを覚えています。何年も同じことが繰り返されたので、前年度の担任から次の担任への情報共有をしっかりしていただいたり、個人面談や家庭訪問などの機会に既往歴を確認したりして欲しいと思います。また、中学生になると、思春期ということもあって肌を出すのに抵抗感を持つようになり、衣替えで半袖の夏服になる時期や体育着で露出が多くなるときが憂うつでした。自分だけ長袖を着てよいなどと特別扱いにするのではなく、誰もが夏でも長袖を選べる、女子でもスラックスを選べるなど、制服に選択の自由があるのが望ましいと思います。
自分のことは自分でするという方針の家庭だったため、子供の頃から自分で薬を塗っていました。薬を塗るだけでなく、ガーゼを貼って包帯を巻くところまで、朝晩、両手両足に行うのは本当に大変でした。特に右手に巻いた包帯がうまく結べず、口を使って結んでいた記憶があります。また、包帯を両手両足に巻いていることで目立ってしまうこともつらかったです。塗った薬を一度ティッシュペーパーで落として、包帯を巻かずに登校することもありました。落としきれなかった薬が肌に残っていると、体育でグラウンドに座ったときに砂や石灰が付くのも嫌で、座り方をいろいろ工夫していました。
インターネットが普及してからはパソコンで皮膚科などの情報を調べるようになりました。患者会のオープンチャットも利用して情報を交換したり、不安な気持ちやただ聞いてほしいことを話したりしています。女性乾癬患者を対象としたセミナーにも参加しました。セミナーでは、女性の皮膚科医から顔や体の洗い方、スキンケアの仕方、脱毛やネイルについてなど、男性の医師には聞きづらかった内容のレクチャーを受けることができ有意義でした。レクチャー後には、患者がいくつかのグループに分かれ、女性同士で自身の経験や悩みなどさまざまな話題で盛り上がりました。同じ病気を持つ人たちと話をして笑い合ったことで、心が軽くなりましたし、一人ではないのだと思えました。また機会があればぜひ参加したいと考えています。
年齢を重ねるにつれ、体調の良し悪しが乾癬の症状にも影響すると感じるようになりました。毎日元気で過ごせるように、しっかり睡眠を取り、食事面でも揚げ物を減らし栄養バランスにも配慮しています。ストレスをためないことも大切です。私は月末に仕事が忙しく、それが負担となるのか皮膚を掻いてしまうことも増えるため、月末には休暇を取ってストレスをためない工夫をしています。また、入浴するときは湯船につかったり、4月頃から12月頃まではなるべく半袖で過ごして日光を浴びたりするなど、長年の経験から「自分はこうすると肌の調子がよい」と感じたことを実行しています。掻き癖がある足首周辺は少し長い靴下で覆うなど、皮膚を掻かないよう工夫もしています。
私のように幼少期に発症する人は多くはないこともあり、現在の症状のみをつづるのではなく、子供の頃の体験を書くことで、若い患者さんや乾癬のお子さんを持つ保護者の方に情報が届くのではないかと思いブログを始めました。すると、ブログを読んだ女性から連絡があり、乾癬のお子さんが薬を塗りたがらないという悩みを相談されました。私にはお子さんの気持ちが痛いほど理解できたので、「お母さんが薬を塗ってあげるのはどうでしょうか」とアドバイスしました。保護者のなかには、自分自身が患者ではないため患者会に参加できないと思っている方もいます。ご家族でも参加できることを伝えて、交流や情報収集することをおすすめしています。
乾癬に限らず、見た目がほかの人と違う人に偏見を持ったり排除したりしない社会になることを望んでいます。そのためには、大人が多様な見た目を受け入れ、差別せず、偏見も持たない姿勢を見せて、子供の手本となることが大切ではないかと思っています。
私は患者会という場でようやく乾癬患者さんと気持ちを共有できました。同じ立場でないと理解し合えない気持ちがあるので、乾癬のお子さんを持つ保護者の方には、乾癬患者のお子さん同士が交流できる機会を作ってあげてほしいと思います。患者会のオープンチャットでは年齢層がさまざまで、お子さんには参考にならない話もあるかもしれません。ネット上でもいいので、乾癬のお子さんとその保護者が集う場所を作れば、情報交換や交流がしやすくなるのではないでしょうか。
また、お子さんが自分で薬を塗りたがらない場合は、代わりに保護者が塗ってあげるのがよいと思います。乾癬では、薬を決められたとおりに塗って治療を続けることがとても大切です。「きちんと塗らないと悪くなるよ」というようなネガティブな声がけではなく、「こうしたらよくなるよ」「薬が減ったらラクになるね」というようなポジティブな言葉をかけて、前向きに治療に取り組めるよう支えてあげてほしいと思います。
監修?東京慈恵会医科大学皮膚科学講座 梅澤 慶紀 先生