Aさん
(30代・女性)
13歳で尋常性乾癬を発症し、医師である祖父に乾癬と診断される。社会人になって症状が悪化し、皮膚科で治療に取り組むとともに、患者会のイベントを通じて患者同士の交流を深める。患者会ではボランティアでSNS更新などを担当し、情報を発信している。
発症は13歳の頃でした。頭部におできのようなものができ、ニキビができたのかなと思い自然に治るのを待ちましたが、一向に良くならず、症状のある範囲が広がっていきました。
家族には黙っていたのですが、発症から約半年後に母が鱗屑に気付きました。母方の祖父が医師だったため、何か気になる症状が出ると祖父に相談するという習慣があり、そのときも母は祖父に私の肌の写真を送って相談しました。その後、祖父に電話で乾癬だと告げられました。「長い付き合いになるだろうね」と言われましたが、明るい口調で言われたため、深刻に受け止めることはなく、「薬を塗れば良くなるだろう」と考えていました。祖父の家へ遊びに行った際に、祖父から軟膏を処方してもらっていました。
私が症状について話さなかったためか、両親から症状について触れたり、サポートしたりということはありませんでした。祖父がクリニックを閉院してからは、自宅近くの皮膚科を受診しましたが、すでに大学生だったこともあり、両親の付き添いはありませんでした。今思えば、一緒に医師の話を聞いて、状況を把握してほしかったと思います。
乾癬に限らず、性格的にもともと自分のことを家族に話すことはあまりありませんでした。それに加えて、学校で友達に乾癬であることに気が付かれないようにと気を遣っていたので、その延長線上で家族にも悟られないようにふるまっていたのだと思います。乾癬を話題にすることで、乾癬のことを考えすぎてしまうので、あえて話題にしなかったのだと思います。乾癬に意識を向けないほうがストレスが溜まらないと思っていました。
発症したのが中学生の頃だったので制服を着なければならず、着る服を選べないことがつらかったです。症状そのものがつらいというより、周りの目が気になっていました。通っていたのが中高一貫校だったため、同級生とは6年間一緒です。鱗屑があることでいじめのターゲットになってしまうのではないか、いじめが始まれば高校卒業まで続いてしまうのではないかと恐れていました。冬期に着る紺色のセーターは特に鱗屑が目立ちやすかったため、休み時間のたびにトイレの鏡で鱗屑が付いていないかを確認し、払い落とすようにしていました。
同じ部活動に入っている親しい友人にだけは「アトピー性皮膚炎のような皮膚の病気を持っている」と打ち明けました。その友人はアトピー性皮膚炎だったこともあり、打ち明けやすかったです。友人はその後も態度を変えることなく仲良くしてくれ、乾癬のことで何か言うこともありませんでした。中高生にとって、学校の友達は家族よりも長い時間を一緒に過ごす存在ですから、その友人との関係は当時の私の心の支えだったと思います。
社会人になってからストレスで乾癬が悪化し、頭部だけでなく肩や胸部あたりにも症状があらわれるようになりました。きちんと治療をしようと考え、インターネットで情報収集を行うようになりました。ある病院で光線治療を受け始めましたが、通院を続けるのが難しく断念しました。
その後皮膚科を転々としましたが、数年前に、近所で乾癬治療を行っている皮膚科をインターネットで見つけ、現在もその皮膚科で治療を受けています。初診時に、治療の選択肢について説明してもらい、「いつまでにどうなりたいか」という治療目標についてお話ししました。それらの対応から医師を信頼することができ、治療のモチベーションが高まり、症状も改善しました。
そんななか、1年半前に別の病気を発症して入院することになりました。現在も療養中で、たびたび入院を繰り返しています。その病気の療養で入院し、生活習慣などが変わることで副次的に乾癬の症状も軽快していきました。ただ最近は少し乾癬の症状があらわれてきたため、再び外用薬を塗るようになりました。
社会人になって症状が悪化し、きちんと治療をしなければならないと覚悟したときに、それまでと同じ環境では治療の継続が難しいと感じました。一緒に治療を頑張る仲間が欲しくなり、インターネットでたまたま見つけた患者会に興味を持ちました。患者会の若年層限定のイベントに参加してみると、家族に話せなかった症状のことや気持ちを話すことができ、楽しく過ごせたので、継続して参加するようになりました。それからは、患者会に参加している間は乾癬について集中して考え、それ以外の時間は考えないようにしてうまくメリハリを付けています。現在はボランティアとして患者会のSNS更新を担当しているので、これからも若い世代に向けて乾癬や患者会に関する情報を発信していきたいと思います。
基本的なことになりますが、食事面では、暴飲暴食をせず、脂質や刺激物の取り過ぎに注意しています。適度な紫外線は皮膚症状によい影響もあるとされているため、紫外線量が減る冬はなるべく外に出るようにしています。ストレスを溜めないことも大切ですね。
乾癬は長く付き合っていく病気なので、乾癬のことばかりを考えず、深刻にならないことが精神の健康を保つ秘訣だと思っています。乾癬になってよかったことのひとつは、見た目で人を判断しないという価値観が得られたことです。乾癬になっても悪いことばかり起こるのではなく、プラス思考で得られたものに目を向けることも大切ではないでしょうか。
若年層の患者さんは、かつての私のように、病気について周りに話せない環境の方もいるかもしれません。誰にも話せずひとりで抱え込むことで、モチベーションが維持できず治療を中断してしまう可能性があると思います。一人で抱え込まず、家族でも主治医の先生でもいいので、病気について話すことができる相手を見つけることをおすすめします。
お子さんの年齢によっては、反発したり心を閉ざしたりして、関わりを拒否することもあるかもしれません。そんなときは、そのまま何もせず見守るのではなく、保護者の方から積極的にアプローチしてお子さんの治療に関わってあげてほしいと思います。お子さんがある程度成長していれば、皮膚科の受診に付き添うだけでも心強く感じると思います。治療をするお子さんに寄り添ってあげることが最も大切なのではないでしょうか。
監修?東京慈恵会医科大学皮膚科学講座 梅澤 慶紀 先生