帯状疱疹と他疾患の併発における診断と治療 -自己免疫疾患編-<後編>

浦野 和子 先生

東京女子医科大学附属 膠原病リウマチ痛風センター
リウマチ膠原病内科 准講師
浦野 和子 先生

施設紹介
リウマチ性疾患全般に対応する中心的施設として1982年に設立されました。外来患者数は一日約500名、一月では約1万名で、5,000名以上の関節リウマチ患者、多くの膠原病患者、痛風患者の診療を行っています。現在の医局員は所長以下67名。全国からリウマチ医を志す医師が集まっており、内科医と整形外科医が互いに協力して治療に当たっています。

関節リウマチの治療と免疫低下

 関節リウマチの治療は20年前までは疼痛を抑制することを目標とし、NSAIDsやステロイド薬で痛みを抑えることが主でした。
 しかし、最近では、TNFαなどのサイトカインを標的にした生物学的製剤の登場以後は、関節破壊の進行を抑えて関節変形による機能障害を最小限にとどめることに新たな治療目標をおいています。
 我が国の生物学的製剤は現在、インフリキシマブ(2002年)、エタネルセプト(2005年)、トシリズマブ(2008年)、アダリムマブ(2008年)、アバタセプト(2010年)の5種類が関節リウマチに使用可能です。さらに、早期治療の観点から、メトトレキサートは2011年3月から抗リウマチ薬としての早期使用と、成人用量を必要に応じて週16㎎までの増量が認められるようになりました。
 このように、生物学的製剤の登場やメトトレキサートによる早期治療の承認、使用制限の解除により、関節リウマチは「徐々に悪化する疾患」から「治癒が可能な疾患」にパラダイムシフトしているのです。
 その一方、生物学的製剤やメトトレキサートの積極的な使用により免疫機能が低下し、帯状疱疹をはじめとする日和見感染症の発症リスクが高まる可能性があり、注意を要します。

帯状疱疹の治療

 現在、我が国では帯状疱疹の治療薬として、アシクロビル(点滴・内服・外用)、バラシクロビル塩酸塩(内服)、ビダラビン(点滴・外用)、そしてファムシクロビル(内服)が保険適応(表)になっています。これらの薬剤はいずれも抗ヘルペスウイルス薬で、ヘルペスウイルスのDNAに作用し、DNAの複製を阻害(DNA鎖伸長停止)することでヘルペスウイルスの増殖を抑制します。また抗ヘルペスウイルス薬は皮疹などの皮膚症状だけでなく、急性期疼痛の改善も認められます。

表 経口抗ヘルペスウイルス薬表 経口抗ヘルペスウイルス薬

 抗ヘルペスウイルス薬は皮疹発症後、速やかな投与開始(皮疹出現後72時間以内)が望ましく※1、7日間投与を原則としており、適切な治療がなされれば3週間ほどで治癒します。帯状疱疹の治療は内服薬が中心となります。ただし、抗ヘルペスウイルス薬は腎臓で排出される薬剤のため、腎機能の低下がみられる患者、または高齢者では、腎障害を発症する可能性や高い血中濃度が持続する可能性があるため、投薬間隔をあけて投与するなど調整する必要があります。
関節リウマチに対して生物学的製剤やメトトレキサートなどの治療をしている患者に対しては、それらの薬剤の免疫抑制作用によって帯状疱疹が遷延したり重症化してしまう可能性があるため、メソトレキサートは感染期間中、内服の一時中断を指導し、生物学的製剤も帯状疱疹が治癒するまで投与を延期します。グルココルチコイド投与については膠原病・関節リウマチ患者さん、いずれの場合も中断や減量はしません。
 帯状疱疹の対症療法としては、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)や抗生物質含有軟膏を使用します。また、重症患者さんや免疫機能が著しく低下している患者さんにはヒト免疫グロブリンを併用する場合もあります。(ナプロキセン〔NSAIDs〕以外はいずれも帯状疱疹に保険適応外)
 通常、皮膚症状が治まると痛みも消えますが、その後も痛みが継続することがあります。これが、帯状疱疹後神経痛(PHN)と言われるものです。
 抗ヘルペスウイルス薬の使用によりPHN発症リスクは減少しますが、皮疹出現後72時間以内に抗ヘルペスウイルス薬を使用したにもかかわらず、50歳以上の患者さんの約20%にPHNが発症するとの報告があります※2。このため、抗へルペスウイルス薬の内服で改善が認められない場合は、早い時点で点滴による抗ウイルス薬への変更を検討する必要があります。
このような悪化症例についてはPHNの他、脳炎、髄膜炎など帯状疱疹による神経障害を合併するリスクの可能性もあるため神経内科などの判断を仰ぐことも必要になります。痛みが非常に強く出現している場合や、皮疹が顔面に出現した場合は、皮膚科医のコンサルトを依頼する場合もあり、横断的な治療を心がけています。

最後に

 帯状疱疹は日和見感染症の中でも発症頻度の高い疾患です。膠原病は疾患活動性の影響以外にも、グルココルチコイドを中心とした治療によるコンプロマイズドホストが多く、更に関節リウマチでは今後、生物学的製剤による治療導入によるコンプロマイズドホストの増加が懸念されます。このため、今後ますます帯状疱疹に罹患する患者の増加が考えられます。
 また、遺伝的要因による帯状疱疹の発症のしやすさを知ることも今後の検討課題の1つです。当センターの調査では認められませんでしたが※3、韓国やオランダの調査ではIL-10型遺伝子多型を持つ人は体質的に帯状疱疹になりやすいとの報告がされています。帯状疱疹の発症リスクをあらかじめ知っておくことにより、オーダメード治療も可能になります。帯状疱疹は、早期治療によりPHNを予防することが可能だと言われています。患者のQOL(生活の質)を保つために、適切な治療を提供していきたいと思います。

【文献】
※1    Dworkin RH,et al. Recommendaitions for the management of herpes zoster. Clin Infect Dis 2007;44 Suppl 1:S1.
※2    Beutner KR,et al. Valaciclovir compared with acyclovir for improved therapy for herpes zoster in immunocompetent adults. Antimicrob Agents Chemother 1995; 39(7): 1546.
※3    浦野和子ら. 帯状疱疹. リウマチ科 2009; 42(1):39-44



帯状疱疹と他疾患の併発における診断と治療 -自己免疫疾患編-<前編>

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