症例写真のきれいな撮り方:第3回 一眼レフカメラを使った撮影の実際―口腔内の撮り方
- 監修:
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- 福岡大学医学部 皮膚科学 教授 今福 信一 先生
- 2014年2月作成
影ができやすく難度が高い口腔内の撮影は、一眼レフカメラでなければ写しにくい場所の一つです。
今回は写真の整理術や学会発表などに用いる際の注意点も、併せてご紹介します。
(編集部注:今回掲載している写真のモデルは編集部の一般男性で、患者さんではありません。)
Q1. どのような場合に一眼レフカメラでの撮影が好ましいでしょうか。
症例写真は影が写ると正しい診断が難しくなります。口腔内のように影ができやすい部位を撮影する場合は、レンズの先端付近から発光する特殊なストロボ(リングストロボなど)が必要で、そのようなアクセサリーが使える一眼レフカメラを使います。
Q2. 一眼レフカメラやレンズはどのようなものを選べばよいのでしょうか。
最近、ミラーレス一眼カメラの人気が高まっていますが、リングストロボを付けられる機種が限られますし、作業効率を考慮すると、一眼レフカメラを使用することをおすすめします。
一眼レフカメラにおいて、エントリーモデルと中級以上のモデルとの一番の違いは、耐久性です。忙しい診療の現場で持ち歩いて使ったり、1日に数十枚撮るなど、業務用途で使う場合、エントリーモデルは耐久性に難がありますので、中級以上で金属ボディの一眼レフカメラが望ましいでしょう。
レンズは、28~70mm程度の標準ズームレンズが使いやすいと思います。これをAPS-Cサイズのカメラに付けると、およそ35mm版で言う40~120mmの焦点距離となり、周辺のゆがみも生じにくくなります。掌一枚分くらいまではこのレンズで問題ないでしょう。しかし、指先のような小さな部位をアップで撮る場合はやはり接写専用のマクロレンズが必要になります。
なお接写の場合はストロボを使い、絞って撮影しないと、鼻を撮ったら頬がピンボケ、頬を撮ったら鼻がピンボケというようなことが起こるので注意が必要です。撮影範囲が顔全体なら絞り値(F値)の目安は8、手掌大なら11~16、爪一枚程度なら22程度まで絞った方がよく写ります。通常、光はストロボが自動発光で補います。
フラッシュランプは1万分の1秒の閃光なので、接写でおきやすい手ぶれが無いのもフラッシュを使うメリットです。
Q3. 一眼レフカメラで口腔内写真を撮る方法を教えてください。
それでは、実際に口腔内を撮影した写真をご覧ください(写真1・2)。
写真1はカメラの内蔵ストロボで口腔内を撮影したものです。口腔内には光が行き渡らず影も写っています。この影が写らないよう口腔内写真を撮る際は、ツインストロボ(写真3)もしくはリングストロボ(写真4)を用います。写真2は、ツインストロボで撮影したものです。口腔内まで光が回って咽頭、扁桃が観察できます。
当科ではツインストロボやマクロリングストロボを使っていますが、高額なものが多いので、これから購入を検討するのであれば1万円程度で購入できる簡易式のLEDリングストロボがよいかもしれません。また、口腔内は奥行きがあるので皮疹や咽頭壁など写したい対象をよく見てピントを合わせます。絞り値は22程度を目安に絞るとよいでしょう。
Q4. 撮った写真の管理方法を教えてください。
当科では、専用に設計したソフト(データベース)を使用しています。個人的にはアップル社が提供している写真管理ソフトウェアiPhoto(アイフォト)を使っています。接続するだけで画像を全部読み取ってくれます。写真データの整理・管理ソフトはいろいろあるので、うまく活用するとよいと思います。
写真は、日付(時系列)で整理しています。また、誰の写真かわかるように、写真撮影の前または後のどちらかで患者さんの名前・IDを撮っています。
Q5. 学会発表や論文投稿する際の注意点を教えてください。
何よりも、患者さん個人が特定できないよう配慮することが大事です。できれば通常よりも大き目の画素数(600~1200万画素)で撮影しておくと、後日余分なスペースをトリミングする際に余裕が生まれます。
発表に使いそうな症例写真は念入りに撮っておくことが大事です。撮れていたつもりでも、後日確認するとしばしば失敗しており、後悔することがあります。
- 症例写真のきれいな撮り方
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- 第1回 症例写真の撮り方の基本
- 第2回 撮影の実際―ヘルペスの撮影を中心に
- 第3回 一眼レフカメラを使った撮影の実際―口腔内の撮り方