症例写真のきれいな撮り方:第2回 撮影の実際―ヘルペスの撮影を中心に
- 監修:
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- 福岡大学医学部 皮膚科学 教授 今福 信一 先生
- 2014年2月作成
よい症例写真は、それ自体が鑑別診断の一助になりますし、症例検討に役立てることもできます。具体的な症例写真をご提示いただきながら、撮影のコツを今福先生に伺いました。
Q1. 帯状疱疹、単純ヘルペスの写真を撮る際に、おさえるべき皮疹の特徴を教えてください。
帯状疱疹、単純ヘルペスの水疱は、中心臍窩を有することが特徴で、これをおさえることで、後述するように、他疾患との鑑別ポイントになります。
特に帯状疱疹でおさえるべき特徴としては、皮疹の発現部位が多彩であることが挙げられます。帯状疱疹は一定の神経支配領域に帯状に出現し、体の左右どちらか片側性にあらわれるのが特徴ですが、神経支配領域に連続して皮疹が出現するとは限らない点に注意が必要です。たとえば、足底に皮疹を認めるときは臀部(L4)に、胸に皮疹を認めるときは指の先(Th1)に(写真1・2)、また、後頭部に皮疹を認めるときは頬(C2)になど、時に離れた部位に皮疹が出現している場合があるため、皮疹の出現部位は正確に把握しておく必要があります。
離れた部位に同時に出現した帯状疱疹(Th1領域)
同様に、顔面の帯状疱疹では、鼻背部や鼻尖部に皮疹が出現した場合、眼病変の合併頻度が高くなることも知っておく必要があります。したがって、皮疹のある鼻背部や鼻尖部だけでなく、眼部も撮影しておくと合併症の早期診断につながります。また、帯状疱疹ではまれに、複数の神経支配領域にまたがって散布疹を認めることがあります。問診をしながら全身を注意深く診ることが大切です。
Q2. よい症例写真を撮るコツを教えてください。
拡大写真(アップ)と全体写真(引き)をセットで撮影することをおすすめします。個々の皮疹については拡大写真で、分布の様子は全体写真で確認することができます。
具体的に写真をいくつかご紹介しましょう。写真3はもう一歩の例です。背中に発現した帯状疱疹ですが、個々の皮疹をみるにも、分布をみるにも中途半端な写真となっています。対して写真4は、皮疹の発現部位が特定でき、分布の様子も分かりやすい全体写真としてよい例です。写真5も、背中全体を撮影したことで散布疹があることが分かりました。
口唇を撮影する際は、引いた写真だと症状がよく確認できないので、口の横からアップで撮るとよいでしょう。
Q3. 鑑別診断の際に役立つ症例写真はどんな写真でしょうか。
カメラで撮ると肉眼より皮疹が大きく見えるので、あらためて写真を見ることで病気の要因がどこにあり、どういう性状かがよくわかります。したがって、よい症例写真を撮っておけば鑑別診断につながります。
帯状疱疹、単純ヘルペスの水疱では中心臍窩をとらえることで、膿痂疹、手足口病の水疱、虫さされなどとの鑑別ポイントとなります(写真6)。写真7は虫さされのように見えますが、帯状疱疹です。カメラで撮ると皮疹が肉眼より大きく見えるため、特徴が見分けやすくなります。
単純ヘルペスが顔面に発現した際、帯状疱疹との鑑別が難しい場合があります。見分け方として、帯状疱疹が神経に沿って発現するのに対し、単純ヘルペスはその限りではないため、皮疹の分布を写真で確認することが判断材料の一助となります。なお、病歴による鑑別として顔面に繰返して発現する、アトピー性皮膚炎を合併している場合も、単純ヘルペスである可能性が高くなります。
- 症例写真のきれいな撮り方
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- 第1回 症例写真の撮り方の基本
- 第2回 撮影の実際―ヘルペスの撮影を中心に
- 第3回 一眼レフカメラを使った撮影の実際―口腔内の撮り方