HZ・Sフォーラム報告 第2回 帯状疱疹の疫学・検査:Discussion 総合討論
■川村本日ご講演いただきました内容につきまして、フロアの先生方にもアナライザーでご意見を伺いながら討論をすすめていきたいと思います。
Q1 小児の帯状疱疹患者は増えている印象でしょうか?

■フロア15歳以下のどの年齢で区切っても増加している印象はありません。母親が帯状疱疹を発症したことをきっかけに、水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-zoster virus;VZV)未感染の子供が水痘を発症して母子で来院するというケースはあります。
■渡辺米国では1996年に水痘ワクチンが定期接種化され、小児の帯状疱疹発症率の低下が疫学研究1)により示されていますが、本邦では水痘ワクチンの定期接種化からまだ5年も経過していませんし、疫学的な変化が明確に現れるまでにあと10年くらいは必要ではないかと思います。
Q2 帯状疱疹を2回以上発症する患者は増えている印象でしょうか?

Q3 帯状疱疹を2回以上発症されている患者の割合は、およそ何%でしょうか?
■川村8割が10%未満という回答結果ですが、ご意見をお願いします。
■浅田小豆島の約400例の帯状疱疹患者を対象に行ったShozu Herpes Zoster Study(SHEZスタディ)2)では15%程度に2回の帯状疱疹発症が認められました。以前に比べて多い印象ですが、軽症例が多いのも事実です。
■フロア帯状疱疹を繰り返し発症した患者に対し、発症後に水痘抗原による皮内反応を行ったところ陰性を示しました。なお、このような患者には予防のため帯状疱疹ワクチンを使用しています※。
乾燥弱毒生ワクチンは帯状疱疹予防の場合、50歳以上の者を接種対象者とする。ただし、明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する者及び免疫抑制をきたす治療を受けている者に接種してはならない。
Q4 帯状疱疹との鑑別が最も難しいと思われる疾患はどれですか?

■渡辺やはり、単純ヘルペスとの鑑別が最も多く、次いで虫刺症、接触皮膚炎、丹毒と続いています。
Q5 前述の疾患との鑑別でよく実施されている検査法はどれですか?(複数回答可)
■渡辺全体では、イムノクロマト法が最も多く、Tzanck test、酵素免疫測定法、PCR法が続くという結果になりました。また、病院に勤務される先生方はPCR法、Tzanck test、イムノクロマト法の順に多く、クリニックに勤務される先生方はイムノクロマト法、酵素免疫測定法の順に多い結果となりました。
■フロアイムノクロマト法でHSV(性器ヘルペスのみ保険適用)やVZVを検出することが簡便で正確かと思います。
■渡辺将来的にはイムノクロマト法で性器ヘルペス以外のHSVも保険適用されることが望ましいですね。
Q6 どのような疾患を最も疑われますか?

■渡辺帯状疱疹という意見が多く、性器ヘルペスと回答した先生もいらっしゃいました。皮疹の出現が大腿部であることから臀部へルペスである可能性がありましたが、検査により帯状疱疹であることが明らかになりました。
Q7 どのような疾患を最も疑われますか?

■渡辺帯状疱疹、その他と回答した先生が多くなっています。写真をご提供頂いた浅田先生にご解説いただきます。
■浅田こちらは他院の患者ですが、「痛痒い」という主訴をあげており、画像から鑑別を行いました。初期の帯状疱疹を疑いましたが、写真を拡大して見るとマダニがついていることがわかりました。
■渡辺帯状疱疹でも単純ヘルペスでもないこういう症例が隠れているということですね。
Q8 帯状疱疹ではない症例はどれでしょうか?




■渡辺③と④に回答が集中しました。こちらも写真をご提供頂いた浅田先生にご解説をお願いします。
■浅田④が単純ヘルペス、①~③が帯状疱疹でした。①②は皮疹が大きく、痛みも強かったことから帯状疱疹であることが容易に判断できました。③は両側に紅斑があり、元々痒みがあったとのことでしたが、左側にある潰瘍が新規に出現した皮疹であり、VZV陽性でした。④は帯状疱疹を疑いましたが、HSV陽性という結果でした。
■渡辺片側性だからといって、安易に帯状疱疹と考えてはいけないということですね。
- Civen R et al. Pediatr Infect Dis J. 28(11)954(2009)
- Takao Y et al. J Epidemiol. 25(10)617(2015)