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HZ・Sフォーラム報告 第1回 帯状疱疹の新たな治療選択:Discussion 総合討論


    Theme1 帯状疱疹関連痛治療の実際

    ■ 川村 最初に、帯状疱疹の急性痛に対する治療について討議します。現在は侵害受容性疼痛に対する治療薬としてアセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が一般的に使用されていますが、主にどちらを使用するのか。今回ご参加の先生方にお願いした事前アンケートでは、アセトアミノフェンを主に用いられる先生の方が多いという結果でした。ただし、安全性に対する満足度ほど、有効性に対する満足度は高くないという結果でした。アセトアミノフェンは2011年から1日4,000mg(1回1,000mg)まで処方できるようになりましたが、その投与量については意見が分かれるところだと思います。

    ■ フロア アセトアミノフェンを処方する際、私は1日1,500mg(1回500mg)を基本的な用量としています。1例のみですが、以前、基礎疾患として肝疾患がない悪性リンパ腫の患者さんで肝機能の低下が認められたことがあり、肝疾患のない患者さんであっても肝臓への負担に注意して投与量を決定しています。

    ■ フロア 私は過去にアセトアミノフェンを1日2,400mg以上投与していたこともあるのですが、麻酔科領域において肝機能障害がいくつか報告されており、安全性について引き続き検討していく必要があると思います。

    ■ フロア 私もアセトアミノフェン1日1,500mgを基本としていますが、夜間に痛みを伴う場合には1日2,000mgまで増量しています。肝機能障害のリスクは長期使用により高まると思いますが、急性痛に対する使用は短期間なので、安全性をモニタリングしながら投与すればリスクを減らすことができると思います。

    ■ フロア 当施設ではアセトアミノフェンを1日2,700mg(1回900mg)投与しています。数年間で1例のみ肝機能の低下が認められましたが、安全性はNSAIDsに比べても低くない印象です。

    ■ 川村 他の経口鎮痛薬と比べるというのも1つの尺度ですね。次に、神経障害性疼痛について討議します。神経障害性疼痛治療薬の投与開始時期についてご意見をお願いします。

    ■ フロア 65歳以上の外来患者50例を対象に帯状疱疹にバラシクロビル塩酸塩(治療開始7日目まで投与)、帯状疱疹の急性痛にアセトアミノフェン(治療開始28日目まで投与)を用いて治療開始し、プレガバリン(治療開始16週目まで投与)の投与開始時期を治療開始8日目と29日目で比較した多施設共同無作為化オープン試験で、8日目から投与した症例では急性期における睡眠障害が少なく、神経障害性疼痛の回復が早いという結果でした1)。睡眠障害など、神経障害性疼痛が重症の場合は抗ヘルぺスウイルス薬を1週間投与した後に、神経障害性疼痛治療薬の投与開始を考えるのも1つの手ではないかと思っています。

    ■ 川村 帯状疱疹後神経痛(post-herpetic neuralgia;PHN)はおおよその定義で帯状疱疹発症後3ヵ月以上持続する痛みと考える先生が多いですが、もっと早期から神経障害性疼痛治療薬を投与開始すべきかどうか、エビデンスの構築も含め、今後の検討が必要な課題であると思います。

    Theme2 zoster sine herpeteの診断と治療方針

    ■ 今福 皮疹の出現がなく帯状疱疹が疑われた場合、実際には無疱疹性帯状疱疹(zoster sine herpete;ZSH)であったというケースがあると思います。ZSHが疑われた際には抗ヘルペスウイルス薬を処方するべきでしょうか。なお、処方する場合の判断材料としては痛みの発生部位や程度、片側性などの分布状況、アロディニアなどの感覚障害、免疫状態などの患者背景など、さまざまな考え方があると思います。

    ■ 川村 好発部位に痛みを生じたとしても、皮疹が出現しなければ実際に帯状疱疹かどうかわからないと思いますが、患者さんへの問診や訴えに応じて抗ヘルペスウイルス薬を処方することはあると思います。

    ■ フロア 私は必ず皮膚の知覚を確認するようにしています。冷覚または痛覚の左右差やアロディニアの有無を酒精綿やクリップ、筆などを用いて確認し、異常が認められれば後に皮疹が出現する可能性が高いと考え、抗ヘルペスウイルス薬を処方しています。

    ■ 今福 抗体価については、ZSHが疑われた患者さんに対して抗ヘルペスウイルス薬の処方の有無にかかわらず診察から2週間後に測定していますが、実際に抗体価の上昇が認められることはあまり多くないようです。

    ■ フロア 私は、帯状疱疹発症初期であってもVZV-IgG(EIA法)が50以上あることは少ないと考え、50以上かどうかを確認しています。ただし、精度を高めるにはペア血清を見る必要があるとも考えています。さらに、抗ヘルペスウイルス薬の投与により症状が改善するかどうかも見て、複合的に判断しています。

    ■ フロア おそらく、ZSHが疑われるような症例で水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-zoster virus;VZV)が関わっているものは、実際にZSHであるか、またはごく初期で皮疹出現前の帯状疱疹であると思います。抗体価は帯状疱疹発症3日後あたりから上がり始めるため、ごく初期の場合はEIA法では検出できない可能性があります。一方で実際にZSHである場合はすでに抗体価が上がっている可能性がありますので、抗体価の大幅な上昇を目安に抗ヘルペスウイルス薬を投与するのは1つの方法かもしれません。

    ■ 今福 現在、帯状疱疹患者の抗体価について疫学研究をしており、初診のタイミングにもよりますが、軽症の場合はすでに抗体価が上がっていることが多く、これは免疫力が高いためゆっくりと皮疹が出現しているということを反映しているのだと考えます。一方、重症の場合は抗体価が低いことが多く、免疫力が低いため皮疹の出現が早期に最大に達していると考えられます。

    ■ 川村 Shozu Herpes Zoster(SHEZ) Studyでは、抗体価と重症度に相関が認められませんでした2)。ZSHは軽症であることが多いため、抗体価だけでZSHを判断するのは難しいかもしれません。

    ■ フロア 顔面神経麻痺を生じてしまうようなケースについては引き続き検討が必要ですが、抗体価を見るにしても、痛みの発生部位などを見るにしても、ZSHの診断はなかなか難しいのではないかと思います。あとは皮疹よりも問題となるのは痛みではないかと思います。神経障害性疼痛に対してどの鎮痛薬を選択するか検討することも、今後の課題の1つと考えます。

    ■ 今福 ZSHが疑われた際には、通常の帯状疱疹で皮疹が出現する前である可能性もあることを念頭に置き、所見だけでなく総合的な判断が求められます。そして、帯状疱疹治療の課題として、抗ヘルペスウイルス薬だけでなく、侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛に対する鎮痛薬の選択基準も検討していく必要がありそうです。

    アメナリーフ錠の効能・効果は帯状疱疹である

    1. Tanaka R et al. J Dermatol Sci. 84(1)e34(2016)
    2. Asada H et al. J Dermatol Sci. 69(3)243(2013)

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