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HZ・Sフォーラム報告 第1回 帯状疱疹の新たな治療選択:痛みを残さない急性期治療 -皮膚科での初期治療の重要性-


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    渡辺 大輔先生

    渡辺 大輔 先生
    愛知医科大学医学部 皮膚科学講座 教授

    抗ヘルペスウイルス薬による初期治療の重要性

    帯状疱疹の痛みを残さないためにも、初期治療で適切に抗ヘルペスウイルス薬を使用することが重要である。初期治療では、患者の免疫力や重症度、合併症やPHN移行リスクの有無などから入院による点滴治療と外来での内服治療のどちらにするか、総合的に判断する。

    抗ヘルペスウイルス薬による初期治療の意義は、皮疹の拡大を阻止すること、重症化を阻止して急性痛を軽減し、できる限りPHNへ移行させないようにすることにある。抗ヘルペスウイルス薬の効果発現までには時間を要することから、増殖初期のウイルス量が少ない時期に投与を開始した方が効果を得られやすく、早期の投与開始が重要である(図1)。

    図1:抗ヘルペスウイルス薬による初期治療の意義
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    図1 抗ヘルペスウイルス薬による初期治療の意義

    また、適切な用量で治療すること、投与を中断せず7日間使用することが原則であり、改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、速やかに他の治療に切り替えることが望ましい。

    従来の抗ヘルペスウイルス薬の作用機序と特徴

    従来の抗ヘルペスウイルス薬はすべて核酸類似体のウイルスDNA複製阻害薬である。たとえばファムシクロビルの場合、腸管から吸収され、肝臓で代謝されてペンシクロビルに変換後、ウイルス感染細胞内に移行しペンシクロビル3リン酸になる。このペンシクロビル3リン酸がウイルスDNAのデオキシグアノシン3リン酸と競合拮抗してDNA鎖に取り込まれ、DNA複製を阻害する。

    抗ヘルペスウイルス薬はウイルスの増殖を抑制する薬剤であるため、投与前に体内で増殖していたウイルスを排除するわけではない。そのため、抗ヘルペスウイルス薬投与開始から3日程度は、既に増殖していたウイルスに対する宿主の免疫反応により、皮疹の拡大や新皮疹形成が進む可能性がある。また、皮疹出現から4日目以降といった早期投与が適わない場合であっても、皮疹の新生が認められる症例や皮膚以外の合併症のある症例、PHNへの移行リスクが高いとされる高齢者や急性痛の強い症例などでは抗ヘルペスウイルス薬の投与が必要となることがある。

    さらに従来の抗ヘルペスウイルス薬は腎排泄性のため、腎機能低下患者への投与にあたってはクレアチニンクリアランス値に応じた用量調節が必要である。

    ファムビル錠による帯状疱疹後神経痛の残存率

    ファムシクロビル(ファムビル錠)の特定使用成績調査(FAMILIAR study)1)では、疼痛消失までの日数の50%点が21日であり、90日後の疼痛残存率は12.4%、360日後は4.0%であった。また、初診時の皮膚症状や疼痛が重度であるほど疼痛が残存しやすいことが示された。このデータは帯状疱疹発症初期からの積極的な治療の重要性を裏付けていると考えられる。

    アメナリーフ錠の特徴と臨床効果

    従来の抗ヘルペスウイルス薬が核酸と競合拮抗でウイルスDNAの複製を阻害するのに対し、新しく開発されたアメナメビル(アメナリーフ錠)は、ウイルス増殖の初期段階で働くヘリカーゼ・プライマーゼ複合体という酵素を直接阻害することで抗ウイルス活性を示す。ヘリカーゼ・プライマーゼ複合体はウイルスの増殖過程でDNAの開裂とDNAの複製の起点となるRNAプライマーの合成を担う酵素である。

    また、アメナメビルの排泄経路は糞便中が74.6%、尿中が20.6%であり2)、腎機能による薬物動態への影響が比較的小さく3)、クレアチニンクリアランス値に基づく用量調節を必要としない。

    国内第Ⅲ相臨床試験4)において、投与開始4日目までの新皮疹形成停止率(主要評価項目)は、アメナリーフ錠400mg群が81.1%(197/243例)、バラシクロビル塩酸塩群が75.1%(184/245例)と群間差は7.1%であり、バラシクロビル塩酸塩群に対する非劣性が認められた(P<0.0001)(図2)。

    図2:主要評価項目 投与開始4日目までの新皮疹形成停止率
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    図2 主要評価項目 投与開始4日目までの新皮疹形成停止率

    なお、アメナリーフ錠は長時間有効血中濃度を維持できる薬剤であり、アメナメビル300mg、600mgを投与した反復投与試験※1の結果、1日1回の投与で推定有効血中濃度の0.2μg/mL以上を21~26時間維持することが確認されている5)

    ※1 アメナリーフ錠の承認された用法・用量と異なる。

    アメナリーフ錠の早期投与による治療効果

    自然治癒の場合、帯状疱疹の皮膚症状は2~3週間で治まる。体内の免疫状態の推移をみると、皮疹出現から3日目あたりで抗体価の上昇がみられる6)。つまり、皮疹出現から免疫が十分に立ち上がるまでに約72時間のタイムラグがある。この間、ウイルスは指数関数的に増殖し、特に免疫抑制状態の患者では重症化、遷延化を来してしまうと考えられる。

    免疫が立ち上がっている約72時間後に抗ヘルペスウイルス薬の投与を開始すると、薬剤の効果と免疫反応の両方により、重症化を阻止して治癒までの期間を短縮できると考えられる。一方、皮疹出現から24時間以内に抗ヘルペスウイルス薬を投与した場合、まだ免疫が十分に立ち上がっていないため、薬剤の効果が直接的に反映されると考えられる。先述の第Ⅲ相臨床試験で初回投与までの時間別に主要評価項目を層別解析した結果、投与開始4日目までの新皮疹形成停止率(初回投与までの時間が24時間以内)はアメナリーフ錠400mg群が75.0%(42/56例)、バラシクロビル塩酸塩群が53.3%(24/45例)で、群間差の推定値は21.7(95%信頼区間[3.0~40.3])であった4)

    アメナリーフ錠への期待

    アメナリーフ錠は外来で治療する多くの帯状疱疹患者に投与を検討してみる価値があると考える。特に、腎機能低下患者や高齢者に加えて、免疫力低下が懸念される患者(糖尿病やがん、血液疾患を有する患者や免疫抑制剤の投与患者)に対する治療にも期待がかかる※2。ただし、アメナリーフ錠の代謝には、主にCYP3Aが関与していることから、CYP3Aを誘導するリファンピシンとは併用禁忌であり、その他CYP3Aおよび2B6が関与する薬剤との併用には注意が必要である。また、妊婦または妊娠している可能性がある患者、授乳中の患者への投与に関する安全性は確立していない。なお、透析患者への投与については今後のエビデンスの集積が待たれる。

    ※2 アメナリーフ錠〔添付文書〕使用上の注意1)重要な基本的注意(3):本剤は、悪性腫瘍や自己免疫性疾患など免疫機能の低下を伴う患者に対する有効性及び安全性は確立していない。

    Discussion

    ■ フロア免疫抑制剤を使用している患者では、核酸類似体である従来の抗ヘルペスウイルス薬の長期投与により薬剤耐性ウイルスが出現する懸念もあるかと思います。そのようなケースでも、アメナリーフ錠は有用であると考えてもよいでしょうか。

    ■ 渡辺私自身も現在、免疫不全患者の帯状疱疹を治療しており、既存治療では皮疹を抑制できずアメナリーフ錠に変更して経過を観察しているところです※2。このようなケースでは、薬剤自体の効果の違いをみることもできるかと思っています。

    ■ フロア以前に比べて急性痛が軽度である患者が全体的に増えてきている印象があります。高齢化に伴って免疫力が低下し、急性痛が軽くなるようなことはあるのでしょうか。このような患者は受診の遅れにつながるほか、後々の治療に難渋することがあります。

    ■ 渡辺免疫力が低下している患者では、急性期での皮疹や痛みが少なくてもヘルペスウイルスは増殖していると思いますので、PHNへの移行を考慮して早期からの積極的な治療介入が必要だと思います。

    1. Imafuku S et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. 28(12)1716(2014)
    2. マルホ株式会社社内資料:ヒトマスバランス試験(15L-CL-007試験)
    3. マルホ株式会社社内資料:腎機能障害患者を対象とした薬物動態試験(15L-CL-014試験)
    4. マルホ株式会社社内資料:帯状疱疹患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験(M522101-J01試験)(承認時評価資料)
    5. マルホ株式会社社内資料:健康成人を対象とした第Ⅰ相臨床試験(15L-CL-003試験)(承認時評価資料)
    6. 菅井順一.新薬と臨床.62(5)89(2013)

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