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HZ・Sフォーラム報告 第1回 帯状疱疹の新たな治療選択:帯状疱疹治療における抗ヘルペスウイルス薬に残された課題:アメナメビルを用いるベネフィット


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    小野 文武 先生

    小野 文武 先生

    佐曽利ひふ科医院 院長

    急性期の帯状疱疹治療に求められること

    急性期の帯状疱疹治療では神経、眼部、皮膚、内臓領域などの合併症に注意すべきである(図11)
    図1:急性期から注意すべき4つの合併症(痛みを除く)
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    急性期から注意すべき4つの合併症(痛みを除く)

    皮膚では壊死性の潰瘍を伴うことがあり、特に免疫不全患者では多発性潰瘍を来す場合がある。三叉神経第二枝領域の粘膜の広範囲に病変が出現した場合は、嚥下、摂食障害が生じる可能性がある。また、三叉神経支配領域の瘙痒のため掻破し、広範囲に潰瘍性病変が続発する症候群(trigeminaltrophic syndrome)も稀に認められる。

    皮膚病変の治癒を促進するために最も重要なことは、抗ヘルペスウイルス薬を帯状疱疹の発症からできるだけ早期に投与することだと考える。加えて、我々医師は抗ヘルペスウイルス薬が、急性痛の軽減、知覚神経損傷の軽減、帯状疱疹後神経痛(post-herpetic neuralgia;PHN)などの合併症を二次的に予防することを期待している。一方、患者は抗ヘルペスウイルス薬に対し、服薬開始早期からの皮疹・疼痛の改善、副作用の少なさや服用性の向上などを期待しているように感じる(図2)。

    図2:帯状疱疹の治療において抗ヘルペスウイルス薬に期待されること
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    帯状疱疹の治療において抗ヘルペスウイルス薬に期待されること

    帯状疱疹関連治療薬の歴史

    本邦の帯状疱疹関連治療薬の歴史を振り返ると、1980年代にビダラビンの点滴製剤とアシクロビルの点滴製剤および錠剤が発売され、帯状疱疹の抗ヘルペスウイルス薬による治療が可能となった。2000年代にはバラシクロビル塩酸塩、ファムシクロビルといったプロドラッグが登場し、服用性の向上により外来での治療がよりスムーズに行えるようになった。2010年以降は神経障害性疼痛薬物療法ガイドラインの公開もあり、帯状疱疹関連痛(zoster-associated pain;ZAP)の治療に進展が認められ、2016年には50歳以上を対象に乾燥弱毒生水痘ワクチンの帯状疱疹予防への適応が追加された。そして、2017年9月に帯状疱疹の効能・効果でアメナメビル(アメナリーフ錠)が発売された。

    アメナメビルは核酸類似体である従来の抗ヘルペスウイルス薬と作用機序が異なる。具体的には、ウイルスDNA複製の初期段階で機能するヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の活性を阻害することでDNA複製を阻止し、ウイルスの増殖を抑制する。DNA複製という一連の流れの中で、従来の薬剤が核酸と競合拮抗して取り込まれるのに対し、それよりも早い段階で機能するヘリカーゼ・プライマーゼ複合体の活性を阻害することが特徴である。

    帯状疱疹治療に関する患者の認識

    2017年9月~12月に当院を受診し、アメナリーフ錠を1日1回2錠(400mg)7日間投与した帯状疱疹患者37例に対し、予備知識に関するアンケート調査を実施した(図3)。

    図3:アンケート調査(受診理由)
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    アンケート調査(受診理由)

    まず、帯状疱疹だと思って受診したかを尋ねたところ、帯状疱疹だと思って受診した患者が24例(家族・同僚などから指摘、インターネット等で調べた、家族の既往歴、再発など)で全体の2/3を占めた。これに対し、帯状疱疹だと思わずに受診した患者が13例(かぶれ、虫刺症、体部白癬、とびひなど)であり、想定以上に帯状疱疹の認知度があった。一方、帯状疱疹を予防するワクチンの認知度については、知っていた患者が2例(自身もしくは家族の既往歴による認知)、知らなかった患者が35例で、岐阜県内でも当院のある地域での啓発は十分ではないと考えられた。

    当院におけるアメナリーフ錠処方患者の概況

    アメナリーフ錠を投与した帯状疱疹患者37例のうち、最終時点までフォローできた患者は32例であった。患者背景は男性10例、女性22例、平均年齢56.8±17歳(24~88歳)、皮疹出現から受診までの平均日数は2.7±1.2日、皮疹の重症度は重度1例、中等度10例、軽度21例であり、再発例は5例であった。13例が高血圧症もしくは糖尿病などの基礎疾患を有し、帯状疱疹発症のリスク因子と考えられているスタチン製剤2)を服用していた患者は5例であった。年齢については60歳代が9例と最も多く、次いで50歳代が6例、30歳代および70歳代が5例であった。皮疹出現部位としては上部胸神経領域の頻度が12例と最も高く、頸神経領域が7例、下部胸神経領域が5例と続き、三叉神経領域での出現が2例に認められた。

    アメナリーフ錠投与7日後の痛みについて評価したところ、全くないが8例、ほとんど痛みはないが7例、時々痛いが13例、いつも痛いが4例であった。なお、希望者には原則としてアセトアミノフェンもしくはロキソプロフェンナトリウム水和物を頓服処方した。抗ヘルペスウイルス薬による治療を終えても痛みが継続する場合には、より痛みに対する適切な治療が必要となる。また、初診時に22例からアロディニアの訴えがあり、その後の経過をみてPHNへの移行が疑わしい場合には神経障害性疼痛の治療を開始した。なお、32例中4例は2週間以上、うち2例は4週間以上痛みが持続した。4週間以上痛みが持続した2例はともに高齢で、前駆痛が認められており、皮疹の重症度は中等度、皮疹出現後2日目にアメナリーフ錠の投与を開始していた。これらは少数例での検討であるため、今後のエビデンス取得が望まれる。なお、治療経過中に1例で悪心が認められたが、比較的軽度であったため中断せずに投与を継続した。

    アメナリーフ錠の特徴と注意点

    従来の薬剤では高齢者や腎機能低下例に対して、クレアチニンクリアランス値に従って減量投与を考慮していたが、血液検査ができない場合や小柄な患者の場合に適正な使用量で投与できているのか不安な部分があった。なお、アメナリーフ錠はクレアチニンクリアランス値に基づく用量調節が不要である。新薬であることに留意の上、適切に処方していければと考える。

    また、抗ヘルペスウイルス薬はヘルペスウイルス感染後早期の確実な服薬が求められるが、アメナリーフ錠の服薬回数は1日1回であり、服薬アドヒアランスの向上に寄与すると考えられる。

    但し、今回アメナリーフ錠を投与した37例のうち数例は受診後最初の食後でなく翌朝から服用を開始していた。アメナリーフ錠の添付文書にも記載されているとおり、抗ヘルペスウイルス薬は投与開始が早いほど効果が期待できるため、受診後最初の食後の服用が望ましく、指導を徹底する必要があると改めて感じた。

    今後、アメナリーフ錠の使用経験が積み重ねられ、エビデンスが蓄積されていくことで、帯状疱疹に苦しむ患者が1人でも少なくなることを願う。

    Discussion

    ■今福 今回の報告では、帯状疱疹発症早期に受診できている患者が多い印象を得ましたが、地域や院内で啓発活動を行っていらっしゃるのでしょうか。また、再発例は初発時の診療録があったということでしょうか。

    ■小野 院内での啓発活動は行っていますが、元々、患者本人やその家族が当院に通院していて、帯状疱疹について認知していた可能性があります。また、今回再発が認められた患者5例のうち数例は初発時に当院で診療した患者でしたが、いずれの患者も初発時と同様の症状があるという印象を患者自身が持ち、受診していました。

    1. Johnson RW et al. BMC Med. 8 37(2010)
    2. Antoniou T et al. Clin Infect Dis. 58(3)350(2014)

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